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がんばって家を建てた人の裏話ほど素敵な話はない!
片づけ・収納設計で人気の建築家と建築専門誌元編集長の聞きたくても聞けない家づくり事情。
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【第80回】読者のお悩み相談 リフォーム編(4)

藤山:では、リフォームに関する最後のご相談。


ちく○さん

「2階の部屋を減室して、1階のリビングから吹抜け構造にリフォームした場合、耐震設計(構造)の考え方について教えてください。現状は在来工法です」建築の構造に関するご相談です。まずは、一般の人たちにも分かるように、木造住宅における耐震設計の概要をレクチャーしていただけますか?


鈴木:木造住宅の在来工法における耐震性能は、基本的には1階と2階に設けるx方向とy方向の壁の強度と量で決まる。

藤山:壁といっても単なる壁ではなくて、構造的に「効く」壁のことですね。専門用語で「耐力壁」といいます。さっき、みみなさんの相談のなかにも出てきました。

鈴木:極端にいえば、耐力壁があればあるほどその家は地震に強い。ただ、その強さを成立させるためには、床にも強さ(剛性)が求められる。


藤山:剛性の高い床があることで、耐力壁の強さも正常に発揮されるわけですね。

鈴木:吹抜けというのは床がない状態のことだから、耐震上はそこが大きな弱点になる。1階と2階の間に部分的にでも床がなくなれば、力のスムーズな伝達は難しい。特にリフォームで吹抜けをつくる場合は、もとあった床を部分的に抜くわけだから、新築で吹抜けをつくるよりも難しくなる。

藤山:われわれの説明、うまく伝わっていますかね?


鈴木:まあ、いま説明したようなことは素人ではとても調べられないから、各自治体が行っている耐震診断に申し込んで、専門の建築士に相談するのがいちばんだろう。

藤山:結論をいえば、専門家に相談してくださいと。

鈴木:いまは無料相談の窓口も多いから。


藤山:鈴木さんご自身は、こういうリフォームの経験はありますか?

鈴木:吹抜けをつくりたいと要望されたことはあるけど、実際にやったのは2階の屋根架構を見せるようなリフォームくらいで、厳密には吹抜けというより天井板をなくしただけ。1−2階を抜くようなリフォームはやったことがない。なぜかというと、いま説明したとおり、リフォームの段階で吹抜けをつくるのは耐震上のリスクが大きいから。おそらく、リフォームで吹抜けをつくるのが許される唯一の条件は、建物の真ん中に吹抜けを設けるときだけだろう。


藤山:建物のコーナーに吹抜けを設けるのはNG。

鈴木:ほとんどの場合はそうだね。床面の真ん中に孔をあけるのであれば、周りに残っている床ががんばってくれるから、地震力や風圧力になんとか耐えられるかもしれない。床が首の皮一枚つながっている状態。だけど、建物のコーナーに吹抜けを設けると、構造計算した結果たいていの場合アウトと出る。

藤山:ちく○さんの家がどういう間取りか分かりませんが、「1階のリビングから吹抜け構造に」とあるので、条件的には厳しいかもしれません。


鈴木:もし、コーナーに吹抜けを設けるのなら、吹抜けの周りに改めて耐震上「効く」柱を建てて、外からの力をスムーズに流せるような補強が必要になる。あるいは、吹抜けの中に金属製のブレースなどを入れて補強するとか。

藤山:可能性としては、リフォームで吹抜けの新設はかなり厳しそうですね。そうなると、鈴木さんだったら吹抜けの代わりにどういう工夫で開放感みたいなものを演出されます?

鈴木:もっと外からの光を取り込みたいのであれば、窓の位置やサイズを調整するのも一つの手段。だけどその代わり、断熱・気密の工事がしっかりできていない家だと、新しくつくった窓のせいで、冬は窓側から冷気が降りてきて部屋が寒くなるとか、夏は直射日光が入りすぎて暑くなるとか、それまで起こらなかった新たな問題が発生するおそれもある。そういうことも踏まえて、総合的に判断しないとダメですよと伝えておきたい。

藤山:ちく○さん、ぜひそのあたりも含めて、専門の建築士に総合的に判断してもらえればと思います。



(おわり)

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(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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