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ひとの家見て、わが家を直せ。

がんばって家を建てた人の裏話ほど素敵な話はない!
片づけ・収納設計で人気の建築家と建築専門誌元編集長の聞きたくても聞けない家づくり事情。
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【第79回】読者のお悩み相談 リフォーム編(3)

藤山:では、次のお悩みにいきます。


みゃ~さん

「マンションを購入して29年になります。リフォームを考えているのですが、チラシなどに掲載されているようなリフォームではなく、ドアは全部引戸にしたい。ベランダの窓ガラスの内側はカーテンでなく雪見障子のようなものを取り付けたい。間取り自体を大きく変更して暮らしやすくしたいです。大枠は業者に頼みたいのですが、収納内部の細かい棚などは自分たち夫婦で設置してみたい。流し台などをつくってもらうとしたらメーカーの既製品と比較して価格にどれだけ差があるのでしょうか。メーカーの高価なキッチンにはあまり魅力を感じません……などというワガママな要望は無理なのでしょうか? 既製品と造り付けを選択するときの基準のようなものは? 出来るだけ低予算でという気持ちを、リフォーム業者にうまく伝える手練手管があればぜひ教えていただきたい」


鈴木:これぞまさに、一般の人のリフォームに対する悩みの典型だよ。

藤山:低予算でうまいことやりたい。


鈴木:でも、そううまくはいかない(笑)。まず、「流し台などをつくると価格的にどうか」という件だけど、これはインターネットで「オーダーキッチン」と検索すれば、そういう会社がたくさん出てくるから、そこで聞いてもらえれば全部教えてくれます。

藤山:そういう会社のキッチンは高額なイメージがありますが……。

鈴木:私が設計する住宅は、たいていキッチンを一から造作しているけど、お客さんには「造作でも既製品でも価格的には同じですよ」と伝えている。なぜかというと、キッチンには金額を調整できる方法がいくらもあるから。たとえば、引出しの数を少なくすればそれだけ安く出来る。逆に材料に高価なものを用いれば当然そのぶん高くなる。これはオーダーも既製品も同じ。オーダーが必ずしも高価なわけではない。あと、建具を引戸に変更したいとか、サッシの内側に雪見障子を取り付けたいとか、この方法は簡単。そういう工事は建具屋さんと大工さんを呼べばすぐにできる。リフォーム会社に丸ごと頼まなくても、その手の相談に乗ってくれる建具屋さんなり大工さんなりを自分で探せばよい。

藤山:建具屋さんだけではダメなんですね。

鈴木:建具屋さんだけだと建具を入れる「建具枠」がつくれないから、そこは大工さんにやってもらう必要がある。建具は、建具協同組合みたいな団体が各地域にあるから、そこに連絡すれば、一緒にやってくれる大工さんを紹介してくれるかもしれない。

藤山:リフォーム会社に丸投げしないで、自分で職人さんを手配すればずいぶん安くできるわけですね。


鈴木:昔、うちの事務所でも、予算が少ないのでできるだけ自分でやりたいというお客さんがいらっしゃって、そのお手伝いをしたことがあるけど、少しずつ材料を買ってきて自分の手でリフォームするというのは、それはそれで格別の楽しさがある。まあ、面倒といえば面倒なんだけど。

藤山:ただ、みゃ~さんの相談内容を拝見すると、「収納内部の細かい棚などは自分たち夫婦で設置してみたい」とありますから、基本的にはリフォーム会社などにほぼお願いするかたちでしょうね。

鈴木:「間取り自体を大きく変更して暮らしやすくしたい」とも書いてある。だったら設計事務所や工務店、もちろんリフォーム会社でもいいんだけど、いずれかに依頼して一気にリフォームするしかないだろうね。


藤山:ちなみに、築29年のマンションのリフォームは、コストとしてどれくらい見ておけばよいですか?

鈴木:60~70㎡くらいのマンションを丸ごとやり直すスケルトンリフォームでいくなら、1,500万円以上はかかるかな。

藤山:やっぱり、それくらいしますか。

鈴木:現状の下地をうまく使いながら、水廻りやその他の部屋を部分的にリフォームしていくだけなら1,000万円くらい。間取りはそのままで内装だけしか変えないなら500万円くらい。

藤山:みゃーさんは間取りを大きく変えたいということですから、最低でも1,000万円以上は見ておいたほうがよさそうですね。

鈴木:うちの事務所でも、金額の話をするとたいていのお客さんがびっくりされる。「1,500万円もかかるのなら、もう少しがんばれば一軒家が買えるじゃないですか~」って。ただ、戸建ての場合、実際にはさらに1,000万円以上必要になるから、もう少しがんばっても一軒家が難しい。だけど、折込広告などに書いてある建売の価格を見ると2,000万円以下という数字も珍しくないから、なんとなく1,000万円台でまともな戸建てが買えると錯覚してしまうんだね。

藤山:私の感覚だと、一般の人が想定している戸建ての価格って、なぜかほとんどの人が1,000万円くらい安く見積もっているような気がします。3,500万円くらいの住宅をイメージしながら、2,500万円で建てられそうと考えている人が多い。東京の場合ですけど。


鈴木:雑誌に載っている「素敵なリフォーム」の事例を見ても、そこに書いてあるリフォーム費用はだいたいウソだからね。そんなにお金をかけていないように書いてあるけど、実際はもっとかかっていることが多い。純粋な工事費用しか書いていないことも多いし。

藤山:ちょっと話がそれましたが、みゃ~さんのお悩みに対する答えはどうなります?

鈴木:まずリフォームの重心を、住環境の満足度アップに置くのか、ローコストのほうに置くのか、どちらでいくかを事前に決めておいたほうがいいね。


藤山:普通はどちらも両立させたいですけど(笑)。

鈴木:でも、リフォームに関しては両方の良いとこ取りはなかなか難しい。専門の業者としっかり打ち合わせをして一気に工事するか、自分の手を動かしながらじっくり時間をかけてやるか、そのどちらかしかない。

藤山:間を取るとしたら、業者に依頼はするけど、なるべく安い材料を使ってコストを下げるとか。


鈴木:まあ、それも一つの手かな。もし、一気にリフォームするなら仮住まいの費用もかかってくるから、なるべく短時間で工事が終わるよう、事前の入念な打ち合わせが超大事になる。少しずつリフォームする場合は、住みながらのリフォームができるぶん、そういう生活が長期にわたると精神的に苦痛を覚える人もいるから、本当にそれでいいのかしっかり確認しておく必要がある。そのあたりをどう考えるかだね。

藤山:それでも悩んでしまうという場合は、鈴木さんまでご連絡くださいということで(笑)。



(つづく)

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ひとの家見て、わが家を直せ。

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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