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ひとの家見て、わが家を直せ。

がんばって家を建てた人の裏話ほど素敵な話はない!
片づけ・収納設計で人気の建築家と建築専門誌元編集長の聞きたくても聞けない家づくり事情。
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【第75回】セカンドオピニオン、始めました!?(3)

鈴木:いま話した2つは工事前の話だけど、実際に工事が始まると、今度は現場のあれこれについていろいろな質問がやってくる。

藤山:鈴木さんのお客さんから直接質問されるということですか。

鈴木:そう。思いもよらないようなことを聞かれる。基礎コンクリートの上の土台はあんな載せ方でも大丈夫なんですかとか、接合金物がちょっと斜めに取り付けてあったのですが地震がきたら外れませんかとか、鉄筋のピッチ(間隔)があそこだけ広かったのですが職人さんの手抜きではないですかとか。

藤山:現場監督顔負け。

鈴木:どうしてそういう疑問が湧いてくるかというと、最近はほとんどの人が住宅を工業製品と勘違いしているからだと、私はにらんでいる。ちょっとしたズレがあるだけで、ものすごく精度が低い「製品」のように感じられる。特に、木造住宅の場合は。

藤山:ああ、木造はそうかもしれません。

鈴木:お客さんによっては、仕事でナノミクロンの世界を研究しているような人もいらっしゃるけど、そういう人から見ると建築の世界のあまりのアバウトさに唖然とされるわけよ。「あんないい加減な仕事を許していいんですか?」って(笑)。でも、そもそも建築って手仕事が基本じゃない?手づくり。ハンドメイド。


藤山:パンを焼くようなもの。

鈴木:まあ、どちらかというとそちらに近いよね。だけど、普段、建築の現場を見る機会がないから、初めて見る人はびっくりするみたい。特に基礎コンクリートの配筋についての質問が多いね。

藤山:基礎の配筋は工程の最初のほうだから、お客さんも気合いを入れてチェックしている。


鈴木:建築の人間が見ると、「鉄筋のピッチ(間隔)は均等だし、必要な空き寸法もきちんと確保できているし、作業された職人さんは良い仕事をする人だな」と感心するような現場でも、何も知らない素人の目には、「鉄筋が曲がっている」と見える部分がある。

藤山:そりゃ、ちょっとくらいは曲がるでしょうに。

鈴木:でも、ミリ単位でぴしーっと真っ直ぐ、ゆがみのない状態になっていないと、手抜き工事なのではないかと。

藤山:怖いなぁ。


鈴木:でも、何が正解かを知らないのだから仕方がない。梁の仕口(接合部)の木がちょっと欠けていただけでも、「先生、欠陥ではないですか?」って。

藤山:じゃあ、柱の背割りなんか見せたら発狂しますね。

鈴木:110番に通報される(笑)。「うちの家に割れた木が使われてます。急いで来てください!」って。


藤山:それを見たお巡りさんも、「うーん、これは悪質ですね」。

鈴木:だって、いまの人の感覚からすると、建築現場の仕事って、すごく原始的なやり方がいまだに多いじゃない?墨坪から糸をひっぱり出して線を引くなんて、「それ、何時代の話?」だよ。

藤山:逆にそういう光景を見ると、私なんかは感動しますけど。


鈴木:そういう人は少数派。普通の人はちょっと驚く。でもね、最初はそんなことにいちいち驚いていたお客さんも、大工さんが働く現場に何度も足を運んでいるうちに、まったく逆の感想をもつようになるの。大工さんが朝から一人で作業して、掃除して、作業して、昼寝して、また作業してという姿を見ていると、建築現場に対する認識ががらっと変わるんだよ。ほら、職人ってちょっと怖いイメージがあるじゃない。

藤山:ありますね。本当はあんなに良い人たちはいませんけど。

鈴木:だから、最初のうちは何か悪いことをしているんじゃないか、手抜き工事をしているんじゃないかと思い込んでいるらしいのだけど、現場も終わりに近づいてくると、「大工さんって大変なお仕事なんですね」と敬意を払うようになって、さらに子供がいるお宅などは、子供が大工さんの真似をし始めたりして、家中で大工さんのファンになっちゃう。「将来は大工さんになりたい」と子供が言い出すわけ。

藤山:いい話。

鈴木:手仕事の現場を見るって、そういうこと。その住宅が出来ていく過程を見れば、出来たものの価値がどれくらいか、説明されなくても分かる。逆に、見ていなければ何も分からない。そういう人は、ちょっとした傷やゆがみを見て大騒ぎをする。でも、現場を見ている人なら、それくらいの傷やゆがみが出来るのは当たり前。むしろ、よくこんなにきれいに仕上げられるものだと感心する。

藤山: まったく、そのとおりです。



(つづく)

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ひとの家見て、わが家を直せ。

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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