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ひとの家見て、わが家を直せ。

がんばって家を建てた人の裏話ほど素敵な話はない!
片づけ・収納設計で人気の建築家と建築専門誌元編集長の聞きたくても聞けない家づくり事情。
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【第23回】あなたの知らない洗面・脱衣室(3)

藤山:もう10年くらい前の話ですけど、「最近のお施主さんはみんな、洗面室をホテルみたいにしてほしいって言うんです」って、いろいろな設計者から聞きましたけど、そういう要望っていまも多いのでしょうか?

鈴木:「ホテルみたいに」というのは、端的に言い換えれば「横幅」と「明るさ」に尽きると思う。私が設計する洗面室は、そもそもホテルみたいに大きな鏡をつけているし、明るさもばっちりだし、モノがたくさん置けるカウンターもつくるから、いってみれば最初からホテルみたいな洗面台になっている。だからというわけでもないのだろうけど、「ホテルみたいに」と言われたことは一度もないね。


藤山:そうですか。

鈴木:結局、モノが置ける洗面台というのが、いちばん使い勝手がいい。

藤山:モノが置けるというのは、幅にしてどれくらいですか?

鈴木:80cm取れればいいほうかなぁ。

藤山:洗面ボウルの幅は?

鈴木:40~50cmくらいかな。

藤山:洗面ボウルの幅よりカウンターの幅のほうが大事?

鈴木:やっぱり、空いているところの広さが重要だよね。

藤山:洗面ボウル自体のこだわりってあります?

鈴木:スロップシンクみたいな深さのあるタイプにすると、つけ置き洗いの洗濯にも使えるので便利。靴などもそこで洗いやすい。ボウルの底が斜めじゃなくてフラットなタイプなら、ボウルの中にモノを立てたまま置けるというメリットもある。ただ、底がフラットな洗面ボウルを嫌がる人もいる。ボウルの角が曲面じゃないから掃除がしにくいというんだね。ここは本当に好みが分かれるところ。

藤山:洗面ボウルというと、大きな信楽焼きみたいなやつをカウンターの上に置きたがる人もいるじゃないですか。鈴木さんのお客さんはどうですか?

鈴木:木のカウンターの上に洗面ボウルや手洗鉢を置くのは、たいてい予算がギリギリでコスト削減のために行う提案かな。お客さんも「それでガマンします」という感じ。そういえば思い出したんだけど、女の子供が2人いる4人家族、要するにお父さん以外は全員女性という家庭は、洗面台に洗面ボウルを2つつけてほしいというリクエストがけっこう多いね。


藤山:へえ。

鈴木:娘が2人いると、朝の洗面室がラッシュで取り合いになるから絶対2つつけてくれって。

藤山:ああ、そういえば女性用の化粧室って、いつも行列ができていますよね。家の中でも同じ状態になるのでしょうか。

鈴木:「えー、こんなに狭い家なのに2つもいるんですかぁ」ってつい本音が出ちゃうんだけど(笑)、どうしてもという家は少なくない。

藤山:実際、2つとも使われてます?

鈴木:うん、竣工後に2つとも使っているか尋ねてみたら、「鈴木さん、便利よ~便利よ~」って、みんな満足度が異常に高い(笑)。ただ、不思議なもので、1つの洗面台に2つの洗面ボウルではなく、1階に洗面台を1つ、それとは別に2階の階段を上がったあたりに洗面台をもう1つって感じで2つつくると、2階のほうは、どの家も、誰も使ってくれない。


藤山:へえ。

鈴木:不思議だよね。同じ場所に洗面ボウルが2つあると超便利で、違う場所に洗面台が一つずつあると誰も使わないんだから。

藤山:たしかに。

鈴木:この謎における鈴木仮説は、「人は歯ブラシを置く場所を1カ所に固定しておきたい願望がある」だ。

藤山:そうかな(笑)。私のリサーチでは、新築後の後悔として、「2階にも水が出る場所をつくっておけばよかった」と言っている人はかなり多いですよ。

鈴木:そうそう。だから、こっちもそう思って先回りしてつくるんだけど、実際には誰も使っていないの。もはや、「ないと欲しがる、あっても使わない」というお客さんの要望七不思議の1つだな、これは。

藤山:残りの6つは、この連載が終わるまでにじっくり考えましょう。



(つづく)
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ひとの家見て、わが家を直せ。

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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