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ひとの家見て、わが家を直せ。

がんばって家を建てた人の裏話ほど素敵な話はない!
片づけ・収納設計で人気の建築家と建築専門誌元編集長の聞きたくても聞けない家づくり事情。
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【第5回】家づくり、うまくいく人 いかない人(1)

藤山:突然ですが、鈴木さんご自身が「ああ、いい家ができたなぁ」って満足する瞬間ってありますよね?

鈴木:もちろんあります。

藤山:そういうときは、クライアントも同じくらい満足しているものですか?

鈴木:おそらく。顔を見ればだいたい分かる。「満足してますか?」なんて、聞いたことはないけど。

藤山:きょうはそのあたりを掘り下げてみたいと思います。設計する側もされる側も、双方が満足する家づくり。家づくりに成功する人とはどういう人か。そう言われて、何か思い当たることあります?


鈴木:そのものズバリってわけじゃないけど、こちらがアレコレ提案したことを積極的に受け入れてくれるクライアントは、いい家ができているような気がする。

藤山:設計者の提案を受け入れる人?

鈴木:そう。設計側の提案に乗っちゃいましょうという人。たとえば、住宅密集地にある敷地なら、日当たりを考慮してリビングは敷地なら、日当たりを考慮してリビングはとか、そういう提案。一般的な感覚とは違う提案もあるけど、それを思い切って受け入れる人は、新しい世界が開けていく。


藤山:なるほど。

鈴木:コストを調整するときも同じ。実施図面が出来上がって、工務店に見積りを取ったら予算を300万円とか500万円とかオーバーしているときってあるじゃない?

藤山:ありますね。

鈴木:そうなるとこちらは、なんとか予算内に収まるような努力をしていくけど、どうしても予算内に収まらないときがある。

藤山:あるでしょうね。

鈴木:そんなとき、そこからさらに施工面積を削ったり、サッシのグレードを下げたり、床暖房をやめてみたり……、そういう強引なコストダウンをしていくと、竣工後にたいてい後悔をする。そうではなく、「ここまで検討してくれたのだから、お金のほうはなんとかします」っていう人。そういう人は、結果的に得をする。予算を多少オーバーしていても、最終的な満足度は確実に上がるからね。


藤山:要するに、「余裕がある人」でしょうか。心にもお金にも余裕がある人は、いい家を建てられる?

鈴木:予算は少なめでもいいの、気持ちのほうに余裕があれば。相手の話を聞く耳をちゃんと持っていて、無茶な要望をたくさん出さなければ、たいていはうまくいくはず。


藤山:「予算に余裕がない人に限って要望が多い」って、どの設計者も言いますよね。

鈴木:お金は出さないけど口は出すタイプね。ま、口を出すのはいいんだよ、自分の家なんだから。ただ、口を出すなら現状を客観視して出しましょうね、ということ。

藤山:鈴木さんの設計史に残る、「予算がないのに無茶な要望が来た!」って、何かあります?

鈴木:うーん……。最初から「スキップフロアの家にしてくれ」という人がいたね。

藤山:スキップフロアって、お金かかりますよね。

鈴木:かかる、かかる。だから、「どうしてスキップフロアの家なんですか?」って聞いたら、「スキップフロアの家にして、1階と2階の中間にトイレを置けば、トイレが1つで済むはずだ」だって。最初から図面ができあがっていた(笑)。

藤山:いっそ、トイレを2つつくったほうが安いんじゃないですか?

鈴木:はるかに安い。思うに、この手の無茶な要望を出す人って、最初から結論ありきの話をしてくる傾向にあるかもしれないね。敷地面積が30坪もないのに、「リビングは最低でも20畳!」みたいな要望を平気で出してくる人もいた。


藤山:それはまた強気ですねぇ。

鈴木:敷地が30坪なければ、リビングにはどうあがいても12畳くらいしか割けないじゃない? それでもこちらは、「窓の位置を工夫してリビングに広がりが感じられるようにしました」とか、12畳なりに広く見える努力をして提案したわけ。でも、返ってきた答えは、「20畳ないですよね」だ(笑)。

藤山:あくまで数字にこだわる。



(つづく)
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ひとの家見て、わが家を直せ。

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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