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初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

何気なく訪れる建築物も、歴史的な背景やストーリーを知れば、その場所をぐっと身近に感じられるようになります。ヨーロッパの建築を通して、街歩きがさらに楽しくなる建築の見どころをご紹介します。

泊まらなくても見てみたい!ホテルリノベーション建築のデザイン

旅行での楽しみのひとつであるホテル。

最近では、滞在中の快適さだけでなく、「どんな体験ができるか」も選ばれる重要なポイントになっていますよね。

 

世界各地には、かつて別の用途で使われていた建物をホテルへとリノベーションした建築が数多くあります。

そうしたリノベーションホテルは、重厚で気品のある雰囲気のものから若者向けのカジュアルなものまでさまざま。新旧の建築デザインが融合した姿は、いずれも唯一無二で、見る人をあっと驚かせます。

 

海外のホテルには、宿泊をしない場合でも入館できるオープンな場所が多くあります。

そうしたホテルは、ときには美術館や博物館以上に歴史を体感でき、建物の新旧両方の姿を味わえる魅力的なスポットと言えるかもしれません。

さらに、一般のショップや公共施設と違い、時間や曜日を気にせず楽しめるのも魅力です。

 

今回は、泊まらなくてもぜひ訪れてみたくなるような、世界のユニークなリノベーションホテルの事例と特徴をご紹介しましょう。

■深い歴史とモダンなデザインが融合したホテル建築

海外では、古くから受け継がれる街並みの景観が重視されているため、街中にあるホテルの多くは規制の影響を受け、昔ながらの外観を保っています。

 

そのため、一見ホテルとは思えないような荘厳な外見のものや、エントランスが控えめで、住宅街の中で見逃してしまうこともあるようなものもあります。 ところが、一歩足を踏み入れるとモダンでスタイリッシュな素材が大胆に使われている例も多数。 外観とはまったく別の世界観が生まれており、そのギャップに驚かされることもあるでしょう。

 

ここでは、歴史的な建築物をホテルとして利用している3つの例をご紹介します。

歴史的背景を思い浮かべながら館内を歩くと、思いがけずその面影に触れることができますよ。

1つ目はこちら。

かつて銀行から音楽院へ利用されていた建物が、都市再生プロジェクトによって5つ星ホテルへリノベーションされたものです。場所はオランダのアムステルダム。

国立美術館やゴッホ美術館など、主要な美術館やコンセルトヘボウ(コンサートホール)が集まる「Museumplein(ミュージアム広場)」の一角にあり、周囲の壮大な建築物にも負けない存在感を放ちます。

 

1901年に銀行の本部として建設されたものが、移転ののち、1985年に音楽院として引き継がれました。

かつて周辺は控えめな街角でしたが、この建物をホテルへと生まれ変わらせるプロジェクトの際に、旧建物の素材や味わいを生かしながら斬新なデザインへとリノベーション。 その結果、周辺の街並みににぎわいを取り戻すことに成功しています。

重厚な石造りの建物に、ガラスやアイアン(鉄)といったモダンな素材が組み合わされています。

ガラス天井のアトリウムによる開放感が爽快な仕上がりですよね。

中庭をガラスで覆うことで館内の面積的な広さを確保しつつも、元の建物の全貌を感じられるようデザインされた、ラグジュアリーで優雅な雰囲気。 歴史を感じる佇まいとスタイリッシュさの見事なコラボレーションは、息を飲んでしまう美しさです。

Conservatorium Hotel(コンサバトリアムホテル) Van Baerlestraat 27, 1071 AN Amsterdam URL: https://www.conservatoriumhotel.com/

次は、16世紀(1520年)に建てられた教会をリノベーションした5つ星のホテルです。

オランダ南部、ベルギーとの国境にほど近いマーストリヒトという街に建ちます。マーストリヒトは、オランダ最古の街として知られ、ベルギーやフランス語圏の街並み・文化が融合した独自の美しい街並みが魅力となっています。

一見、教会にしか見えない厳かな外観。

エントランスはくちばしのようにデザインされ、メタリックなコッパー(銅)とガラスが使用されたドアから、導かれるように館内へ入る仕組みです。ワクワクしながら足を踏み入れると、オブジェのようなインテリアのレイアウトに目を奪われてしまうでしょう。

内部は大胆な赤いアクセントカラーの色使いと、高さを生かした空間デザインによって構成されています。

建築されてから約500年も経っているにも関わらず、非常によい状態で残されている点には驚いてしまいますね。教会というと神秘的で静謐なイメージがありますが、こうした遊び心たっぷりの空間づくりの発想を取り入れ、さらにベースである教会自体の魅力も生かしているアート作品のようなおもしろさは、一見の価値があります。

Kruisherenhotel Maastricht (クルシューレンホテル マーストリヒト) Kruisherengang 19-23, 6211 NW Maastricht URL: https://www.oostwegelcollection.nl/kruisherenhotel-maastricht/

3つ目は、かつてアメリカのニューヨークとオランダを結ぶフェリー航路の本部だった建物。

オランダ第二の都市、港のあるロッテルダムに位置しています。

「オランド・アメリカライン」の豪華客船の世界観が再現されており、館内にはまるで映画の中に入り込んだような世界が広がります。

扉や金庫など、船内を再現したディテールや、クラシックな内装にこだわりが見られます。 かつて船内で使われていた小物や制服、写真などがギャラリーのように展示されており、館内を歩くだけでも見応え抜群です。

併設された理容店やレストラン、客室への廊下も、コンセプトと雰囲気にぴったりとマッチしたタイルや照明、色使いはどれも洗練されています。

レストランでは、新鮮な魚介や現地のトラディショナルな食事を楽しめます。

窓から海を眺めると、本当に客船で航海しているかのよう。 美味しい食事とワインを楽しむために地元の人々も訪れるほど、人気のスポットです。

Hotel New York (ホテルニューヨーク) Koninginnenhoofd 1, 3072 AD Rotterdam URL: https://hotelnewyork.nl/

■真似してみたい!インテリアにこだわったデザインホテル

次に、住宅のインテリアに生かせるような空間を持つデザインホテルを2つご紹介しましょう。

比較的新しいデザインホテルや、インテリアデザイナーが手がけたホテルでは、建築空間とともに、魅力的な家具や小物、雑貨、照明などにも触れられる楽しみがあります。 旅は「非日常」を味わう時間ですが、デザインホテルの素敵なインテリアには、「日常生活にもぜひ取り入れたい」と思うものもたくさん。

また、商品が展示販売されているインテリアショップとは違い、ホテルでは実際に使い心地を体感しながら商品の魅力を味わえるのも魅力だと言えるでしょう。

1つ目にご紹介するのは、元々の建物にレンガの壁や年月を経て味わいの深まった木の躯体などを使用したホテル「The Hoxton(ホクストン)」です。

 

同ホテルは、発祥のロンドンのほか、オランダのアムステルダム、フランスのパリと各都市のトレンドエリアにあるデザインホテル。どの建築も旧建物の趣や素材感を生かし、館内は落ち着きのある心地よさが醸し出されています。

 

また、ウッド調の家具やレトロな小物、革やコーデュロイなどの温かみのある素材が取り入れられ、ヴィンテージ感のある雰囲気が作り出されているのも特徴です。家具の存在感を引き立たせるほどよい照明の明るさも、演出のポイントになっています。

 

美味しいコーヒーを味わいながら、アットホームでゆったりとした時間を過ごせば、 あまりの心地よさにきっと真似したくなってしまうでしょう。現在、ニューヨークにも建設中であり、今後さらに世界へと進出していく勢いを持ったホテルです。

the Hoxton (ザ・ホクストン) Herengracht 255, 1016 BJ Amsterdam (写真はアムステルダムです) URL: https://thehoxton.com/

2つ目にご紹介するこちらは、アメリカ・ニューヨークのブルックリン地区に建つホテルです。

 

1901年に木樽工場として建設されたこのホテルでは、インダストリアルな工場の味わいをそのまま生かしたブリックウォールをアクセントに、北欧テイストのヴィンテージ家具を組み合わせています。

お互いの存在感を引き立て合って、とても絵になる空間になっていますよね。 さりげない壁のタペストリーもアクセントになっています。

2012年にリノベーションされた比較的新しいものでありながら、今ではすっかりブルックリンのシンボル的な存在として、街に活気を生み出しています。

 

ラウンジでは、入れ替わりでセレクトショップが出店したり、イベントが開催されたりしているのも魅力。 住宅インテリアに取り入れられるようなインテリアアイテムも販売されています。

Wythe Hotel(ワイスホテル) 80 Wythe Ave, Brooklyn, NY 11249 USA URL: https://wythehotel.com/ja/

まるで現地で暮らすような雰囲気を味わいたい方は、リビングやアパートメントをイメージした空間にぐっと心をつかまれると思います。

心地よさやリラックスできる雰囲気づくりからは、日常で住まう家にも共通して取り入れたくなるポイントがいくつも見つけられるでしょう。

 

■アートやアクティビティなど、複合的な体験ができるホテル

宿泊以外の複合的な体験ができるのも、新しいホテル建築の魅力です。

特に、アート文化を大切にしているヨーロッパでは、ギャラリーを設けて一般開放しているホテルもありますのでいくつかご紹介します。

 

下の写真は、その例のひとつ、アムステルダムにある「Hotel Droog」。客室がたった一つだけという特別なホテルです。

 

ギャラリーやセレクトショップが併設され、個性的なインテリア、ライフスタイル雑貨やファッションアイテムが展示販売されています。オランダ独自の「ダッチデザイン」の先駆けとも知られ、ホテルとしてはもちろん、ショップとしても多くの人々が訪れます。

世界遺産であるアムステルダム市街の中心部にあり、一見伝統的な街並みに溶け込んでいます。

内部のモダンでアーティスティックな空間とのギャップが楽しいホテルと言えるでしょう。 レンタルスペースで絵画やオブジェ、フォトグラフィーなどの作品が入れ替わりで展示されています。

 

また別のホテルでは、クリエイティブスペースでジャズやクラシックなどの音楽が生演奏されることも。

著名なアーティストから若手のクリエイターまで、さまざまな芸術家のコラボレーションが生まれることよって、訪れる人が楽しめるだけでなく、国を超えた新たな交流やビジネスが創出されるケースも多くあります。

Hôtel Droog (ホテル ドローク) Staalstraat 7B, 1011 JJ Amsterdam URL: http://www.droog.com/

アートだけではありません。

たとえば、若者が多く訪れるゲストハウス(ホステル)では、リビングやロビーなどの共有ペースが、さまざまなアクティビティの拠点となっています。ヨガ教室が開かれたり、街のガイドツアーなどのイベントが企画されているほか、仕事場として利用している人もいます。

 

このように多くの出会いや新たな未来が生まれるきっかけを提供している空間にもデザインのアイデアが満載です。

 

次にご紹介するのは、大学の講堂がリノベーションされたゲストハウス。この写真は、昼は共有スペース、夜はバーとして使われている部屋を撮ったものです。遊び心のある斬新なデザインですよね。

もともとの建物は、アムステルダム大学の獣医学部として使われていたものです。

写真にある“元講堂”の共有スペース・バーだけでなく、図書室を利用したプライベートラウンジがあったり、ボイラー室がシークレットバーに転用されていたりもします。隅々まで楽しめる共用空間の使い方のアイデアは、とても刺激的で魅力が詰まっています。

Generator Hostels(ジェネレーターホステルズ) Mauritskade 57, 1092 AD Amsterdam URL: https://generatorhostels.com/

いくつかご紹介してきたように、 新しいリノベーションホテルは歴史ある建物を今もなお受け継ぎながら、次世代へと新しいカルチャーを生み出す貴重なきっかけを生み出しています。

 

最後にご紹介するのは、新しいリノベーションホテルでも代表的な、アメリカ発祥の「エースホテル」。

宿泊施設というだけでなく、ファッション、音楽、アートなど、さまざまな要素を持ち合わせた存在として、オープン以降、街を変えてしまうほどの影響力をもたらしました。日本においても、閉館した複合商業施設を利用した建設のプロジェクトが京都で進んでおり、今後、日本にどのような風を吹かせるか注目したいところです。

Ace Hotel Portland (エースホテル ポートランド) 1022 SW Stark St, Portland, OR 97205 USA URL: https://ja.acehotel.com/

いかがでしたか?

宿泊するだけでは満喫しきれないほど、魅力的な面をたくさん持っているホテル建築。 旅行の際には、歴史的でユニークなホテル建築やインテリアの魅力にも、ぜひ注目してみてくださいね。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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