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初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

何気なく訪れる建築物も、歴史的な背景やストーリーを知れば、その場所をぐっと身近に感じられるようになります。ヨーロッパの建築を通して、街歩きがさらに楽しくなる建築の見どころをご紹介します。

次世代へつなぐ都市のデザインを知る - 人々がより居心地よく感じる街へ (後編)

前編では、自然を建築や街並みへ取り入れ、心身ともに豊かな環境を生み出す都市のデザインについてご紹介しました。後編となる今回は、街の魅力を維持しながら利便性を高め、その魅力を未来へと受け継いでいくために、建築デザインを工夫している事例をご紹介します。


都市部では、居住者の人口や交流人口(その街を訪れる人の数)が増加するにつれ、街としてより便利に過ごせることも重要視されます。とはいえ、求められるまま無計画に新しい建築物を建て続けていると、無秩序な街並みが生まれてしまうでしょう。そうした問題を防ぎ、親しみある街並みを守るために、ヨーロッパではどのような取り組みが行われているか、建築の観点から見ていきたいと思います。



カジュアルな施設も歴史的景観に溶け込む、あっと驚く建築デザイン

伝統的な建築物が立ち並ぶ街では、スーパーマーケットやファストフード店などカジュアルな店舗を建てる際にも、風格のある街並みを維持する工夫がよくなされています。日本でも、例えば京都では、条例で屋外広告物(店の看板など)の色が規制されていますよね。ヨーロッパでは、そのさらに先を行くような建築デザインが見られます。

こちらは、オランダ・アムステルダムにある「ミュージアム広場」の一角で撮影した、ある大手スーパーマーケットの写真です。広場は芝生になっており、それを囲むようにして、国立美術館など9つの美術館や著名なコンサートホールが集まっています。いずれも伝統的な建築で、一帯は深い歴史を感じさせるエリアです。そうした風格のある街並みと、ごく一般的なスーパーマーケットを調和させるために、ここではあっと驚くような工夫がなされています。

このスーパーマーケットは、大部分が地下に建築されており、エントランスのみが地上につながるような設計となっているのです。地面がめくれあがるように三角形の屋根がデザインされており、その屋根を緑化することで広場と一体化させています。エントランスの反対側から見ると、スーパーマーケットの存在をまったく感じさせません。まるで丘のような屋根の上で、人々がゆったりとくつろいでいるのが印象的です。

Albert Heijn Van Baerlestraat 33A, 1071 AP Amsterdam

利便性を高めながらも街の風景を壊さない「見えない建築物」

こちらは、現在アムステルダムに建設中の駐車場のイメージ看板です。観光客の増加が著しいアムステルダムでは、混雑を防ぐための都市の整備が急務となっています。特に人気のある市内中心部では慢性的な駐車場不足のうえ、細い道路や運河が張り巡らされているためほとんどの場所で自動車の乗り入れができません。新しく駐車場のビルを建設するには土地が不足していますし、仮に建設できたとしても、街並みを壊してしまう可能性があります。

そこで計画されたのは、すでにある運河の地下に駐車場を建設してしまうというものです。こうして水をせき止めながら、大規模に建設が進められる工事風景は迫力がありますよね。世界遺産でもある運河と美しい街並みを残すために、大きなコストをもいとわない姿勢には、思わず感心してしまいます。

Hobbemakade周辺 1071 XK Amsterdam

工事現場を演出し、未来の街並みを感じさせる場へ

都市が魅力を維持するためには、街並みの整備や、老朽化した建築物の修復・建て替えは避けて通れません。しかし、工事現場は危険を感じさせたり、騒音の原因になったりするほか、街並みを一時的に阻害してしまうことも多いでしょう。 ヨーロッパでは、そうしたネガティブな印象を持たれがちな工事現場に対して、イメージアップを図るためのさまざまな工夫がなされています。

こちらは、フランスのパリで大規模に行われている工事現場を、2015年に撮影したものです。2013年に訪れた際にも工事はすでにはじまっており、数年にわたる長いプロジェクトとして工事が進められています。「工事中」と聞くと、暗く殺風景な風景を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、こちらの工事現場は、明るい黄色や緑といった色合いや、デザイン的な書体が取り入れられているのが特徴です。工事現場のイメージを覆すようなおしゃれな外観ですよね。遠くからでもすぐに認識できる色合いで、興味を引くような演出がなされています。

ここには工事区画を示す囲いのほかに、実際に建築物ができあがっていく様子を見学できるステージも設けられています。

ステージは誰でも上がることができ、子どもから年配の方まで気軽に立ち寄っています。完成イメージや工事全体の計画のほか、この場所の歴史と今後の展開をストーリー仕立てで解説したものが展示されています。着工から完成までの長い期間も、建築物がだんだんとできあがっていく様子を見守り、街の未来に思いをはせながら、わくわくと過ごせそうです。工事そのものも住民や観光客に受け入れられるための配慮や、「せっかく来たのに街並みが台無し」というマイナスイメージを持たれないような工夫には、目を見張るものがありました。

Halles de Paris 75001 Paris, France http://www.parisleshalles.fr/

何百年も変わらない風景を維持しているイメージのあるヨーロッパ。その姿は、時代の変化に伴って求められる利便性に適応しながらも、常に伝統との融合を考え、建築の工夫を含めた街づくりを実践し続けてきた結果だといえます。


私たちを楽しませてくれる美しい街並みの裏側には、長年にわたって積み重ねられてきた工夫や努力があるのですね。全11回を通して、ヨーロッパにおける建築の見どころや都市のあり方をご紹介してきました。海外の国を訪れると、日本の日常の中で目にする景色とはまったく異なる街の風景が広がり、とても新鮮に感じられるでしょう。もし、ご紹介した場所を訪れる機会がありましたら、ぜひ生で見られる建築の魅力を楽しみ、旅をより思い出深いものにしていただければ幸いです。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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