猛暑に負けない家づくり 第1回

室内でできる簡単な暑さ対策

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暑さ対策には「遮熱」と「断熱」が必要

 清水さんは、夏の暑さ対策には「遮熱」と「断熱」が必要だといいます。とはいえ、この2つの違いがハッキリとご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「遮熱」と「断熱」の違いに触れる前に、まずは前提知識として「熱」がどのように移動するのかご説明させてください。

 熱の伝わり方には以下の3つがあります。

●伝導

物体のなかで、または物体と物体が接した時に熱が移動すること。熱は、温度の高いほうから低いほうへ移動する性質があります。そのため、夏は暑い屋外から涼しい室内へ、外壁や屋根などを通して熱が移動して入ってきます。

●対流

空気などの移動によって熱が移動すること。少しでも風があると周囲より冷たい空気なら物体から熱を奪っていきます。温かい空気は質量が軽いため、上にあがります。足元が冷たく頭の方が温かくなるのは、空気の対流によって熱が上にあがっているからです。

●輻射

物体が発している熱線、主に赤外線によって熱が移動すること。太陽が暑いのは、太陽が強烈な輻射熱を発していて、物体に当たると熱を発するからです。屋根、外壁はもちろん、窓ガラスから室内に入ってきて物体に当たると発熱します。

 本当の断熱とは、「伝導」「対流」「輻射」による3つの熱移動を抑えることです。

「住まいの断熱化とは、夏は熱を室内にできるだけ入れないように、冬は室内の温かい熱を外に逃さないようにすることを指します。そのためには、窓枠やガラスに断熱性の高い素材を使用したり、外壁や屋根、天井などに断熱材を施工したりする必要があります」

 住宅の断熱性を高めることは、夏の暑さ対策だけでなく、冬の寒さ対策にもつながります。しかし、近年の日射しの強さを考えると、清水さんは「一般的な断熱だけでは夏の暑さ対策として不十分」だといいます。

「夏の日射し、とくに南や西を向いた部屋に入る強烈な日射しは、室内の温度を上げる大きな要因です。そこで、太陽の輻射熱を遮る『遮熱対策』が特に必要です。日射しの大半は窓から入ってくるため、暑さ対策においては『窓の遮熱対策』を優先すべきです」

暑さを窓の遮熱対策で防ぐ!

 夏の暑さ対策として、まずは室内からできる簡単な窓の遮熱対策をご紹介します。

(1)遮光カーテンを取り付ける

 家のカーテンを遮光カーテンに変えるのは、もっとも簡単にできる暑さ対策のひとつ。ある程度、室内の明るさを保ちたいのなら、レースの遮光カーテンを取り付けるのがおすすめです。

(2)「ハニカムスクリーン」を取り付ける

 ハニカムスクリーンとは、ハニカム(鉢の巣)構造がつくる空気の層によって断熱性を高めたブラインドのことです。日射もある程度防げ、冬の寒さ対策でも効果を発揮します。

LIXIL「ハニカムスクリーン


スクリーンの開閉は把手でラクに上げ下げできる“コードレス式”を採用。手を離した位置で止まります。コードが邪魔になったり、絡まって操作しづらくなったりする煩わしさもありません。

(3)窓に遮熱フィルムを貼る

 カーテンやブラインドなどで部屋を暗くしたくない場合は、窓に遮熱フィルムを貼ってはいかがでしょうか。遮熱だけでなく、断熱性能もあるフィルムを貼れば、冬の逃避熱にも有効です。

 ただし遮熱フィルムには注意事項があり、窓ガラスの種類によっては貼ると窓が割れてしまう可能性があるといいます。

「防火戸などに多い網入りガラスに遮熱フィルムを貼ると、網の鉄線とガラスの膨張率の違いから、熱割れする恐れがあります。網入りガラス以外でも、窓ガラスの種類によっては高温になると割れてしまう場合があるので、注意が必要です」

(4)窓ガラスを「遮熱タイプのLow-Eガラス(ペア又はトリプルガラス)」に変える

(1)〜(3)に比べると費用がかかりますが、そのぶん遮熱対策として有効なのが、窓ガラスを「遮熱タイプのLow-E複層ガラス」に変えることです。遮熱タイプのLow-複層ガラスとは、室外側にLow-E膜といわれる特殊な金属膜をコーティングした複層ガラスのことで、製品によっては窓から入る日射熱を5割~6割カットしてくれます。トリプルガラスのダブルLow-Eだとさらに効果があがります。

 なお、サッシが古い場合、ペアガラスを入れると網戸が使えなくなる場合もあるので確認が必要です。築年数が古い場合は、ペアガラスの取り付けが可能かどうかを業者さんに見ていただくことをおすすめします。

LIXIL「Low-E複層ガラス グリーン(高遮熱仕様)


室外側のガラス内側に無色透明の特殊金属膜をコーティングすることで、優れた断熱性能と日射熱取得率の両立を実現。透明度が高いので採光性にも優れています。

LIXIL「トリプルガラス(ダブルLow-Eガラス)


LIXILのトリプルガラスは、高断熱を基本としながらも、住まいの地域や部屋のプランなどニーズに合わせたガラス選択が可能です。

空気の流れを理解して、風通しをよくする

 家のなかに熱がこもりやすい夏は、風通しをよくすることも大切です。清水さんに、室内で風を通す簡単な方法についても教えていただきました。

「南から北へは風が流れやすいので、南北の窓を同時に開けるのがおすすめです。ただし南北に隣の家が立っている場合などは、道路面とその反対側の窓を開けて、風が通るようにするとよいでしょう。
 また、家の中の高低差を利用すると、通気性がよくなります。周囲より温かい空気は上にあがるという対流の性質からも、家の低い場所と高い場所の窓を同時に開けると、温まった空気が高い場所の窓から出ていきやすいのです。戸建ての場合、家の中で一番低い1階の玄関から、2階の窓や屋根裏の窓など一番高い場所へと風が抜けるようにすると、風が吹いていないときでも、下から上まで風がそよそよと通り、熱がこもりにくくなります」

LIXIL「リシェント玄関ドア3


通気性のよい窓付きの玄関ドア。空気がこもりがちな玄関も、網戸付だから安心して換気ができます。

 次回は、屋外の遮熱対策について解説します。

→ 第2回に続く

〈お話を伺った方〉

清水煬二さん

ミタス一級建築士事務所 代表。一級建築士。神戸大学工学部建築学科を卒業後、2000年に現事務所を開設。住宅の設計と監理、住宅コンサルティング、住宅の耐久性や断熱、防湿、構造に対する工事指導、セミナーや講演でも活躍中。『TV劇的!大改造 ビフォー&アフター』にも匠として出演したほか、NHKテレビなどでもミタス一級建築士事務所のリフォーム実例が紹介された。

文◎八木麻里恵
人物写真◎神出 暁
画像提供◎ミタス一級建築士事務所・清水煬二/Shutterstock

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