「プチ採光リフォーム」で冬もあったか [第3回]

窓の採光&断熱で、エコで省エネルギーな快適生活を実現

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健康季節リフォーム

主流はアルミから樹脂サッシに

 窓は採光や熱を取り込むことに加えて、外と中をつなぐインターフェースでもあります。徐さんは、窓というものを、家という「箱」の中で、どう位置づけているのでしょう。

「外と中をつなげるということでは、窓をつくるときに、どんな風景が切り取れるかと考えますね。古い家だと、庭があることが多いので、それをうまく取り込むとか、近所の樹木が見えるようにするとか」

 もちろん、遠くに見える風景を取り入れることもできます。公園に隣接していたり、道路側の部屋であれば、プライバシーをうまく守りながら、外観のアクセントになるような窓をデザインすることも重要です。

 現在は、やはりアルミ製のサッシが主流なのでしょうか。モダンなスタイルの家ならばアルミサッシが似合うでしょう。逆に、古い日本家屋に入れられるような木製の窓がモダンスタイルの家に使われると、雰囲気も変わりそうです。

「最新のサッシは、実は樹脂製のものが増えています。窓枠は外気にさらされる部分で、ガラスと同様、熱を逃がしやすい部材です。PVCという樹脂を使った製品は、熱伝導性がアルミの1000分の1以下なので、性能的にも優れているうえに、成形性や着彩性もいいので、木製のようなフレームをつくることができます」

 それなら古い日本家屋にマッチしたフレームを選ぶこともできそうです。断熱性の高い低放射(Low-E)ガラスなどを用いたサッシならば、断熱性能もかなり向上しそうです。

窓のリフォームはエコで省エネルギー

 日射取得効率を上げ、気密性が高く断熱効果の高い窓に変えるリフォームをするだけで、夏場の冷暖房の使い方も大きく変化するといわれています。

内窓リフォームは保温だけでなく排熱にも効果が期待できる。

「外気の熱が中に入ってこないことで、冷房効率も上がります。前回お話ししたように、夏の間、すだれやグリーンカーテンを設けたりすることで、直射日光を遮ることでも、その効果をさらに発揮します」

 冬の場合はどうでしょうか。

「暖房の使い方が大きく変わります。まず、気密性が高くなるので、石油やガスなどを燃料とする燃焼系器具は、換気の問題で使わないほうが安全です。しかし、煙突で排気経路が確保されているペレットストーブは使用可能。ただ、断熱性が高いので、ペレットストーブだと暑くなりすぎる傾向があります」

 実際、冬の室温はどのくらい変わるのでしょうか。

「床下などもきちんと断熱した家の場合ですが、窓を変えて昼間の光を入れることで、外気温が10度以下でも、暖気が上がる2階の部屋では20度くらいになります。壁などの断熱をきちんとすれば、暖房を付けなくても、朝の室温が15度くらいというケースもあります」

 こうした数字を聞くと、窓のリフォームがいかにエコであるか、実感できるのではないでしょうか。

1階の窓で陽の光を取り入れる

 リフォーム時、窓を新設するとしたら、おすすめなのはどの部分でしょう。
「一番効率がいいのは、1階の南側の窓です。暖かい空気は上昇するので、2階で光を取り込むより、1階で取り込んで暖かい空気をつくるほうが合理的です」

家の中が寒いと思ったら窓リフォームから計画を立ててみては。

 都市部の住宅では現実的にプライバシーの問題もあり、開口部を大きく取れませんが、そのような環境でも開口部を大きく取ることは可能でしょうか。

「実際にこんな窓をつくっています。外側は、光を入れる角度が調整できる通風ガラリを入れた窓にします。そして、数センチの空気層をつくり、その内側に空気循環ができる断熱の内戸を設けました。内戸があるおかげで、外からの視線は気にせず、外光を取り込むことができます。そして外窓と内戸の間の空気層が温まり、その暖気を室内に取り入れることができます。夜や夏は、内戸の通気口を閉めることで空気層が密閉され、これが断熱層として機能するので、家の中の暖気や夏の冷房の冷気を外に逃がさずに済みます」

 こういう発想をもとにすれば、さまざまな工夫でプライバシーを守りながら、冬の陽の光を有効に取り入れられそうです。

設備より快適な暮らしのために

窓のリフォームを最優先に考えてみてはいかがでしょうか。

 省エネにもつながる窓のリフォームですが、本格的に行うとなると、かなり費用がかかりそうです。いったいどのくらいの心づもりをしておけばいいでしょう。

「ケースによってさまざまで、一口に言うのは難しいですが、小規模な窓のリフォームなら数十万円ほど。1階の床の気流止めと断熱から内窓まで本格的やっても、300万くらいあればできるでしょう」

 リフォーム、リノベーションというと、ついついキッチンなどの設備面に気がいきがちですが、窓のリフォームを行う方がはるかに「快適な暮らし」を送れるかもしれません。
 その後の光熱費は、相当抑えられますし、エコな生活を目指している方ならなおさらです。

 リフォームをお考えの方、キッチンやリビングが寒いと思っている方は、「窓」を最優先にしてみてはいかがでしょうか。

お話を伺った方

徐裕晃さん

一級建築士、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)戸建評価員。平成9年、杉坂建築事務所に入社。建った後やリフォームした後に、街並みに溶け込み、調和するような住宅を目指している。自然のエネルギーを利用したパッシブ設計に基づき、しっかりした住宅性能を確保しつつ、職人さんの手仕事による素材感が伝わるような仕上げで、飽きのこない家づくりを信条にしている。

文◎坂井淳一 撮影◎平野晋子 写真提供◎杉坂建築事務所

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