「プチ採光リフォーム」で冬もあったか [第2回]

家全体の採光は天窓が効果的。夏場には別の快適機能も

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窓を小さくしたい?

窓リフォームのビフォア・アフター。外観を大きく変えることなく住宅性能を高めることができる。

 前回は、古い家の場合、窓の面積は広いことが多く、採光のために窓を広げたいという注文は少ないというお話を伺いました。
では、築浅の物件の場合いかがでしょう。

「築浅の物件の場合、あまりリフォームのオーダーがないんですね。その最大の理由は、築浅物件だとそれなりに壁に断熱材が入っていたりして、築30年、40年といった物件のように、寒い、暑いという住み心地に直結する不満が表面化しにくいからだと思います」

 築浅の物件でリフォームを考える方は、数年住んでみたところでキッチンの使い勝手が悪いとか、家族構成が変化したため……ということで踏み切るケースが多いようです。そこでは、どんな要望が出てくるのでしょうか。

「中古物件を買われたり、建て売りを買われたりした場合に、実際に住んでみて変えたいところが出てきた、といったご相談が中心です。窓に関していえば、小さくしたいという要望があります」

 最近の戸建て住宅は、特に都市部では建築面積や敷地面積が小さくなり、隣家との距離も近いという傾向も。そういった方の場合、プライバシーの問題で窓を小さくしたいと思うのかもしれません。

吹き抜けで家全体に光を取り込む

 窓を減らす、小さくする、というリフォームのメリットが「プライバシーの確保」だとすれば、デメリットはあるのでしょうか。

「採光という面では不利になります。特に冬、陽の光を取り込んで部屋を暖かくするのは難しくなります。そこでこちらから提案するのですが、例えば吹き抜けをつくって、上のほうから光を入れて家全体を明るくし、かつ暖気を循環させる方法で、好評をいただいています」

築古住宅では、耐震のため窓を小さくすることも。採光に関しては、吹き抜けをつくることで家全体を明るくすることもできる。

 古い家の場合はどうでしょう。
「南側がほとんど窓という家では、デメリットはさほどないかもしれません。耐震のために窓を減らして壁を増やして、耐震強度を増すということをすることもあります」

 昔の建築物だと耐震壁量が少なく、またバランスも悪いため、それだけでは、どうしても強度的に不安が出てきてしまいます。

「家を強くするためなら、窓を減らすことに対して、施主様もあまり抵抗はないようです。部屋の暖かさの問題でいうと、光を入れることと、熱が逃げることのバランスの問題なので、例えば北側に大開きがある場合は、窓は小さくしてしまってもいいといし、逆に南側に窓を設けられるならば、それは広げた方がいいということになりますが、風通しは確保する必要があります。

グリーンカーテンやオーニングで遮光

 断熱性が十分に確保されていない場合、日光が豊富に入ってくる家は、夏場はとくに遮光を考えなくてはなりません。

「外側で日光を遮蔽して、暑さ対策とするのが一番です。例えば、よしずのようなもので夏の間は差し込む光を抑えるとか、雨戸で日光を遮蔽する手もあります。最近流行のグリーンカーテンなど、葉の蒸散効果により、空気を冷やしてくれるので、さらに効果的なので、おすすめしています。みなさん、楽しんでゴーヤなんかを育てていらっしゃいますよ」

 お子さんがいる家庭などは、家族で楽しめていいかもしれませんね。では、オーニングやひさしなどはどうでしょう。

「オーニングは、出分が自由にできるので、季節によって採光遮光を調整できます。伝統的な日本家屋においては、深いひさしというのは、とりわけ暑い夏を過ごすうえでとても優れたものです。加えて、縁側があったりすると、冬はそこが熱的緩衝空間になって寒さを和らげてもくれます」

天窓は明かり取りと廃熱にも効果

 天窓は、日光を取り入れるという点で、日当たりがよくない家でも有効なのでしょうか。

「私の中では、天窓は明かり取りというよりは、排熱の機能を重視しています。もちろん光も入りますが、夏の家にこもった熱気は上るので、天窓を開けることによって、そこから熱を逃がせるのです」

 そうなると開閉も重要なポイントになるでしょう。

「電動で開閉できるタイプをおすすめしています。そして、今の製品は遮光・断熱スクリーンを取り付けることもできるので、夏はスクリーンで光を遮断して熱だけを逃がし、冬はスクリーンを開けて、陽光を取り入れることができます。実に機能的です」

 ところで、天窓を設置すると「雨漏りしないか」といった心配も出てきますが、その点は大丈夫でしょうか。

「リスクはゼロとは言えませんが、天窓は、屋根を全部葺き替えるときに設置することがあります。防水的には、トップライトだけを交換するより安全です」

 天窓は、最近では古い日本家屋でも見かけることが多くなりました。伝統的ながらモダンな感じもして素敵ではないでしょうか。
 ぜひ検討してみたいところです。

(第3回に続く)

お話を伺った方

徐裕晃さん

一級建築士、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)戸建評価員。平成9年、杉坂建築事務所に入社。建った後やリフォームした後に、街並みに溶け込み、調和するような住宅を目指している。自然のエネルギーを利用したパッシブ設計に基づき、しっかりした住宅性能を確保しつつ、職人さんの手仕事による素材感が伝わるような仕上げで、飽きのこない家づくりを信条にしている。

文◎坂井淳一 撮影◎平野晋子 写真提供◎杉坂建築事務所

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