「プチ採光リフォーム」で冬もあったか [第1回]

大きな窓を生かし、明かりと熱を逃がさない内窓を上手に使う

空間
窓まわり
関心
健康季節リフォーム

寒い原因は窓にある

 家をリフォーム、リノベーションをするときには、いくつかのポイントがありますが、意外と見落としがちなのが「窓」。

採光と断熱を最もリーズナブルに両立させる内窓リフォーム。

 杉坂建築事務所の徐裕晃さんによると、施主様から窓に関する要望が寄せられることは少なく、打合せを進めていく過程で、設計士から提案するケースがほとんどだと言います。

「窓は家の中を明るくしたり、風を通したりと、重要な役目を担っています。けれど、施主様から窓について具体的にああしたい、こう変えたいというオーダーは、あまり出てきません」

 設計士は家全体のことを考え、そこに住まう人たちの希望をヒアリングしながらリフォームのプランを考えていきます。その過程で、どんな提案をするのでしょう。

「築年数が経っている家に住んでいる施主様がよく言われるのは、家の中が暗いというよりも、寒いということ。実際、古い家は、最新の建物に比べ、壁などの断熱性能が圧倒的に劣っています。そもそも古い家は、窓の面積も比較的大きく取られています。このため、外光はそれなりに入ってくるのですが、窓はガラス1枚で外とつながっているだけなので、日射を取り入れてくれる反面、熱は逃げていってしまいます」

費用も安く短時間で設置できる内窓

 たしかに、昔ながらの6畳間には、床から鴨居まで立ち上がる一間(180cm)の掃き出し窓が入れられています。

 部屋の明るさには文句がなくても、窓からは、夏には熱気が、冬には冷気が入ってきますし、エアコンの冷気や暖房の熱が逃げていってしまいます。

「採光と断熱を最もリーズナブルに両立させるのは内窓リフォーム」と徐さん。

「窓の面積が広いというのは決して悪いことではありません。昼間は明るいですし、日射を入れることで家の中が温まりますから、冬には陽光を取り込んで、部屋を暖かくしてくれる効果もあります。しかし日が落ちると、その暖かい熱が真っ先に逃げていくのもまた、窓というわけです」

 それでは、「冬に家の中が寒い」という問題を窓のリフォームによって、どうやって解決していくのでしょう。徐さんは、断熱性能向上がポイントだとアドバイスします。

「1階床の断熱や気流止め、外壁、屋根の断熱改修とともに、熱的にウイークポイントになっている窓の断熱性能を上げることが最も大切です。
そのために、ペアガラスのサッシに交換するなどの作業を行います。または、内窓を入れるという提案ですね。内窓を外窓との間に空気の層ができて、断熱効果が非常に高いのです」

 内窓は、遮熱性に加え、外の音かが聞こえにくく、家の中の音が漏れにくいという防音性や、二重窓になっていることで防犯性が高くなるというメリットもあります。数時間で取り付けできる作業時間の短さも特徴の1つだそうです。

「気密性が高くなるので、結露がしにくくなったり、いいことずくめです。もちろん、費用的にも、構造物をいじることがないのでリーズナブルです」

新旧の部材の組み合わせで最大効果を狙う

 内窓をつける以外に、手軽で効率的な窓のリフォームはあるのでしょうか。

「見落としがちなのは雨戸です。雨戸も断熱性に優れた製品があります。そういうものに交換することで、夜、雨戸を閉めれば熱が逃げることを防げます」

 徐さんはまた、こんな話も聞かせてくれました。

「かつて建具メーカーにお勤めの施主様と、住宅評論家の南雄三さんと我が社で“KIP”(Kato Innovation Project)というパッシブリフォームのプロジェクトをやったことがあります。これは40年以上経った既存のシングルガラスのサッシの内側に、雰囲気を壊さない木製の内窓を付け、外の雨戸をポリカーボネート製の断熱効果の高いものに交換する、というものでした」

大型化する台風の対策でも見直される雨戸。遮熱性も注目されている。

 あえて古いシングルガラスのサッシを残した理由は何かあったのでしょうか。

「そうした窓は、それ単体で、冬の日差しをかなり効率よく取り入れてくれます。熱が逃げることよりも、光と熱を取り入れることを優先して、日が陰る夕方になったら内窓を閉め、夜には雨戸を閉めるということで、取り込んだ熱を逃がさないようにしました」

 そこで、新旧の部材のメリットを組み合わせた方法が採用されたそうです。

「この組み合わせは、新築や比較的新しい家のリフォームでも使える手じゃないかと思いました。ただし、内窓の気密性能をきちんとしておかないと、結露などの心配があります」

 古い部材を生かしつつ、最新の、気密性の高い内窓や断熱性の高い雨戸を取り入れることで、より効率がいい窓になるというのは目から鱗が落ちるようなアイデアです。
 部屋が寒いと思っている方の参考になるのではないでしょうか。

※パッシブリフォーム 窓を含め、建物の断熱性能を高めた上で、冬の日射を取り入れたり、冬でも暖房器具の利用を抑えて自然のエネルギーを利用して過ごせるようにするリフォームのこと。

(第2回に続く)

お話を伺った方

徐裕晃さん

一級建築士、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)戸建評価員。平成9年、杉坂建築事務所に入社。建った後やリフォームした後に、街並みに溶け込み、調和するような住宅を目指している。自然のエネルギーを利用したパッシブ設計に基づき、しっかりした住宅性能を確保しつつ、職人さんの手仕事による素材感が伝わるような仕上げで、飽きのこない家づくりを信条にしている。

文◎坂井淳一 撮影◎平野晋子 写真提供◎杉坂建築事務所

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)