玄関前に手洗いスペースがあれば、感染予防だけでなく、汚れ物をざっと洗うのにも便利。
子供の手洗い習慣が
身につく玄関前洗面
家に入る前に手洗いやうがいをすれば、感染症のリスクを減らせることはいうまでもありません。
「リフォームや新築で、玄関前に手洗いスペースを設けるという方は少なくありません。小さなお子さんにとっては、家に入る前に手をキレイにするという習慣づけにもなりますし、犬の散歩から戻って足を洗うのにも便利ですから」
ワイズデザイン一級建築士事務所代表の池田佳人さんは、室外の洗面スペースのメリットは大いにあると言います。
もちろん、室内用の洗面を屋外に設置するのではなく、室外専用の洗面を使用します。こうした室外の洗面は、ちょうず(手水)やつくばい(蹲)にルーツをたどることができます。
特に最近は、道路に玄関が接していると落ち着かないので、あえて建物を敷地の奥に建てるケースが増えていますが、「道路から玄関へのアプローチの途中に、実用とデザイン性を兼ねた手洗いスペースを設けるという方もいらっしゃいます」と、池田さん。
日本における室外洗面のルーツともいえるつくばい。和風の庭にこだわる方には根強い人気がある。
「和風の庭にこだわり、ちょうずの排水を空洞に落としてその音が地上に聞こえる水琴窟(すいきんくつ)まで配したお客さまもいらっしゃいます」
趣味性の強い手洗いではありますが、手洗いの習慣化が強く求められているいま、歴史に学んで、和風の庭にマッチさせたセカンド洗面を設けるのも素敵なアイデアではないでしょうか。
ベランダ洗面で気分爽快に!?
ベランダに洗面を設置すれば、朝の歯磨きも爽快に!? 写真◎ワイズデザイン
屋外で洗面を入れられるのは、玄関先ばかりではありません。
「ベランダに水道の蛇口はないでしょうか。もしベランダに水道が通っているなら、ここを有効利用しない手はありません」
池田さんは、実用的な洗面台の設置場所として、「ベランダ」の可能性もあると語ります。
「少し古いお宅や集合住宅のベランダは、洗濯機置き場を兼ねて設計されていることがありました。もしも水道栓が残っているなら、ステンレス製の簡易な流しを置くだけでも『セカンド洗面』にできます。排水設備も整っているはずですから、本格的な洗面台の設置も可能です」
ベランダに洗濯機を置くと、洗濯後すぐに干せて合理的ではあったのですが、今では少なくなりました。ここを見直して「セカンド洗面」にしてしまうのです。
冬場はちょっと厳しいかもしれませんが、外の新鮮な空気を吸いながら洗面というのも気持ちがよく、眠気が一気に覚めることでしょう。
雨や風が嫌だというのであれば、サンルームを設けたり、オーニング(日よけ)を付け加えたりすることで、雨や風をしのげるばかりか、ちょっとしたもう一つの「部屋」にすることもできます。
庭カフェも楽しめる
ウッドデッキ洗面
バーベキューや庭カフェを楽しむことができるウッドデッキに洗面があると便利。ちょっとした調理に使える台を設置しておくと使い勝手はさらにアップ。写真◎ワイズデザイン
ベランダ以外で、池田さんがセカンド洗面の設置場所としておすすめするのが、ウッドデッキや屋上です。
「リフォームや新築では、多くのお客様が給水設備を新設しています。洗面というより、掃除やひどい汚れものの下洗いに便利だからです。駐車スペースを近くに置けば、洗車にも使えます」
お孫さんが訪ねてくる際に、ビニールプールに水を張って遊ばせたり、ウッドデッキで庭カフェ的に利用する際、水道を引いておくと、何かと使い勝手がいいものです。
「ウッドデッキでバーベキューをするなど、料理を前提にしたキッチン兼用の流しを設置したいという依頼も少なくありません」
コロナ禍のなか、アウトドアでの飲食なら換気も十分なので安心と思われていましたが、キャンプ場でクラスターが発生したケースもあり、やはり不特定多数の人が集う場所ではリスクがあるようです。
その点、自宅なら感染リスクは低減します。屋上やウッドデッキにセカンド洗面を置くことで、自宅で気軽にアウトドアが楽しめるというわけです。
ただしこの場合、排水について注意が必要です。
「掃除や簡単な洗い物程度なら、雨水と大差がないので問題ありませんが、調理用キッチンを兼ねた大規模な流しを入れると、雑排水の工事を求められることがあります。また寒冷地であれば、冬期の凍結対策も必要になってきます」
フレキシブル水道管の普及もあり、排水さえできれば、屋内・屋外のどこにでもセカンド洗面を設置できるようになりました。
「あれば便利な水まわりですが、それなりに費用がかかります。もしもコロナ対策でセカンド洗面を入れるなら、家族の動線や目的を明確にして、合理的な決断をしたほうがいいでしょう」と、池田さんはアドバイスします。
家との付き合いは、この先何十年も続きます。
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