住まいのメンテナンススケジュール 10年目の屋根 第2回

決して屋根に上らない! 修理はプロに任せる

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修理はもちろん、点検・調査も
自分でやるのは極めて危険!

 当然ながら、屋根は人間の背丈よりも高い場所に位置しています。目視によって点検・調査を行うためには、ハシゴをかけて登ったり、足場を組んだりする必要があります。後者はおのずと専門業者に依頼することになる一方、前者は自分自身でも可能であるように思われますが、非常に危険な行為です。

 新聞報道によれば、2019年9月に発生した台風15号で被災した千葉県では、修理や点検などで屋根に登って転落する事故が相次ぎ、死亡事故も発生したそうです。
 プロであっても危険と隣り合わせで、極めて慎重な作業が求められてくるだけに、素人が自力で取り組むことは絶対に避けるべきです。

千葉の台風被害後、修理や点検などで屋根に登って転落する事故が相次いだ。屋根はプロに診てもらうのが大前提。

「屋根の点検・調査は住まいの中でも特にハードルが高く、プロに診てもらうのが大前提となります。自分自身では確認できないことに不安を感じるのは無理もないことでしょうし、不正な業者が横行していることも確かですが、最近はドローンを用いた点検・調査も導入されており、必要ならその場でいっしょに施主自身も画像で確認できます」

 こう語るのは、「屋根システム総合研究所」専務理事の江原正也さんです。信頼できる業者を探す際の判断基準については第3回で触れることにして、ここではドローンによる屋根の点検・調査に関する話を続けましょう。

 ドローンとは、ラジコンで操作する飛行体のこと。屋根の点検・調査を行う機体にはカメラやサーモグラフィー機能(温度感知装置)などが取り付けられており、遠隔操作によって屋根全体の細部をつぶさにチェックできます。

 プロであっても実際に登っての点検・調査では、劣化していた屋根材を踏み割ってしまう恐れが生じます。ドローンを用いればそれを防げますし、足場を組むケースに比べ、費用が安くなります。

 しかも、悪質な業者による詐欺行為に引っかかるリスクも軽減できるでしょう。虚偽の不具合を指摘して多額の修理費用を請求するのが、そうした業者の手口ですが、ドローンが撮影した画像に基づいた点検・調査なら、施主自身も確認できるからです。

屋根のふき替えに備え、
自助努力で修繕費用の積立を!

 このシリーズの第1回でも触れたように、屋根の不具合には施工不良が原因と思われるケースもありますが、何年も経過した後にその因果関係を立証するのが困難な場合も少なくないでしょう。
 だとすれば、修繕が必要となると費用は自分自身で負担する可能性が高まってきますが、その予算はどの程度になると見繕っておけばいいのでしょうか?

江原さんは、マンションの組合のように一戸建てのオーナーも自前の修繕積立をすべきとアドバイスする。

「耐久性が優れた最新の建材にふき替えるには、平均で約170万円かかります。マンションのような集合住宅の場合は、入居当初からそういった事態に備えて修繕積立金を蓄えているものですが、戸建ての場合は自助努力がすべてとなります。将来的に発生する屋根の修理を見据えて、時前の修繕積立を進めておくのが肝要でしょう」

 また、太陽光発電システムを自宅に採用している人も、屋根の耐久性については注意を払ったほうがよさそうです。

「太陽光発電システムのパネルは、屋根に穴を開けて、クギやボルトなどで固定しています。その箇所から雨水などが浸入して腐食が進んでいる恐れがあります」

 普及を促進するために、太陽光のような再生可能エネルギーで発電した電力を買い取ってもらえる制度が設けられてきました。しかしながら、発電システムを設置したことが起因して屋根の修理に多額の出費が発生してしまうと、本末転倒ともなりかねないわけです。

アスベストを含む屋根材は
過度の心配無用!

 一方、現状の屋根にアスベスト(石綿)が使用されているかどうかを危惧する人もいることでしょう。アスベストは岩石の一種で、綿のように軽い素材でありながら丈夫で燃えないことから、耐火建築物や耐火構造物によく用いられてきました。

 しかし、発がん性があり、健康被害をもたらすことが明らかになり、大変な問題に発展しました。加工・解体時に空気中に飛散したアスベストを吸い込むと肺の奥深くにとどまり、何十年も経てから中皮腫などの症状が起きるのです。

2006年以前の瓦やスレート、防水シートの一部にはアスベストが含まれている可能性があるが、住んでいるうえでは健康被害を心配する必要はないそうだ。

 そこで、日本においては2004年の10月に法規制が行われ、代替が困難なものを除くすべての石綿製品の製造・輸入・使用が禁止されました。
 とはいえ、これ以降に建てられた住宅ではアスベストが使われていないと判断してしまうのは早計です。規制後も重量の1%以下を含有する白石綿は認可されており、全面禁止に至ったのは2006年です。

 屋根材においては、セメントに補強材としてアスベストを混入して成形した石綿スレートと呼ばれるものが用いられていました。また、屋根をふく際の下地材として、防水機能の向上を目的に使用された石綿含有ルーフィングもアスベストを含んでいます。

 もっとも、仮にこれらを使用した屋根であったとしても、過度の心配は無用のようです。
 江原さんはこう説明します。

「アスベストを用いた建材などの危険性はレベル1~3の3段階で評価されており、該当する屋根材はどちらも最もリスクが低いもの(レベル3)です。しかも、普通に暮らしている限り、飛散する恐れはなく、注意すべき場面は解体・改修工事などに限られています」

 それでも気になる人は、建材メーカーがアスベストを使用している自社製品をホームページで公表しているので、確認してみるといいでしょう。また、国土交通省および経済産業省が運営しているデータベースにおいても、アスベスト入りスレート屋根のメーカー名や商品名をチェックできます。

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お話を伺った方

江原正也さん

LLP(有限責任事業組合)屋根システム総合研究所専務理事
日本屋根外装工事協会工法・仕様検討部会部会長、長期優良住宅に資する屋根工法・仕様検討委員会副座長など、屋根のエキスパートであり、過去8000棟以上の屋根を手掛けてきたエバー株式会社の代表取締役社長を務める。

文◎大西洋平 人物写真◎村越将浩
屋根写真提供◎エバー株式会社

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