初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

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ライティングで変化する建築の美_前編

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建築インテリアデザイン

建築とは切り離せない関係にある照明。

建物や街並みがライトアップされると、その造形やたたずまいの魅力がいっそう引き立てられます。特に近年は、LEDの登場など、照明に関する技術が進歩し、これまでとは違った演出を楽しむこともできるようになりました。今回から2回にわたり、ライティングよって別の表情を見せる建築や街並みをご紹介しましょう。

ライトの種類の違いによる街並みの見え方

1つ目にご紹介するのは、バルト三国の一番北にある国エストニアの首都「タリン」の街並みです。

中世の建物がほぼそのままの状態で残った旧市街は、世界遺産にも指定されています。街灯は、趣のある建物に直接取り付けられている形です。ローカルな路地や、伝統的な姿を残す街並みがよく引き立ち、ノスタルジックな気分を味わえます。

タリン旧市街 Old Town of Tallinn, Estonia 

次にご紹介するのは、ベルギーの北西にある街ブルージュの、夜の風景。

歴史地区は世界遺産に指定されており、「屋根のない美術館」と呼ばれるほど美しい街並みが人気です。 照明の存在を主張させず、広い面を照らすスポットライトによって建物をライトアップしています。素材の持つ深みやたたずまいそのものがよく引き立ち、迫り来るようなダイナミックさを感じさせるライトアップです。

ブルージュ旧市街 Brugge, Belgium 

また、近年よく見られるのが、LEDライトによるシャープな印象のライトアップ方法です。直線を照らす特徴のあるLEDライトは、従来のふわりとした印象の光よりも、モダンなライトアップを演出できます。縦長の窓が多いヨーロッパの建物では、窓の間に照明を連続的に配置することで、街並みに整然とした印象を与えているケースが多く見られます。

タリン旧市街 Old Town of Tallinn, Estonia 

このように意識してライティングの方法を見比べてみると、異なる照明によって際立つ建物ごとの特徴を、より実感できるようになりますよね。また、LEDのパターンのように、将来、また新しい光源が登場し、現在の手法と取って代わる可能性もあります。時間を経て同じ街を再び訪れると、昔にはなかった違う街の雰囲気も楽しめるかもしれません。

昼と夜で印象の違う街並みを感じられる醍醐味

建物だけでなく、街そのものが世界遺産として残されているエリアが多いヨーロッパ。昼間に歩いているだけでもさまざまな景色を眺められますが、夜になるとまったく印象の違う街の美しさを発見できることがあります。

こちらは2015年に世界遺産として登録された、ドイツのハンブルクという街にある赤レンガ倉庫街。装飾的なデザインが施された美しい建物がエルベ川に沿って並ぶ、見応えのあるエリアとなっています。ブロックごとに異なるデザインの建物が見られるのが特徴的です。水面から街並みを眺められるリバーツアーも行われています。

暗くなると、バルコニーを部分的に照らすようなライトアップが施されます。赤レンガの外壁は見えなくなりますが、連続する建物の存在感と、この倉庫群の特徴である建物の高さがより強調されていると言えるでしょう。水面に照明が反射し、運河に浮かぶ街の美しさがくっきりと表現されています。

ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館街 Speicherstadt Wandrahmsfleet-Brücke, 20457 Hamburg 

ライトアップが造形を引き立たせ、迫力が増す有名建築

続いては、ライトアップによって一段と迫力を増す、有名建築の夜の姿を見ていきましょう。こちらは、スペインのバルセロナにある、かの有名なサグラダ・ファミリア大聖堂です。着工から130年が経ち、かなり昔に手がけられた部分と、現在も建築中の部分が共存しています。ライトアップされると、よりダイナミックな印象に。また、眺める角度や方角で、手掛けられた時代の違いをよりよく見比べられるようになるのも、ライトアップの効果です。

サグラダ ファミリア大聖堂 Sagrada Familia Carrer de Mallorca, 401, 08013 Barcelona 

こちらは、同じガウディによる建築である、カサ・バトリョ。カラフルな装飾と、マスクのようなバルコニーの造形的な意匠が特徴的です。

夜の姿がこちらです。建物のチャームポイントでもある、バルコニーのデザインを浮かび上がらせるようにライトアップされています。

カサ・バトリョ Casa Batlló Passeig de Gràcia, 43, 08007 Barcelona 

予想外な色のライトアップに思わずワクワク

昼間はごく普通の建物でも、夜になると予想外のライトアップにより、まるで違った趣きになる建物も。 遊び心を感じるサプライズのような演出に、はっとさせられます。ライトアップは季節や時期によって変化することもあり、特別感たっぷりです。その建物を訪れたときの思い出が、より印象深いものになるでしょう。

こちらは、ポーランドのワルシャワにあるランドマークの高層ビル。

この特徴的な「スターリン様式」の建物は、市内のどこからでも眺められるほど存在感のあるものです。 夜になるとさまざまな色で鮮やかにライトアップされ、現代的な美しい姿を見ることができます。

Palace of Culture and Science plac Defilad 1, 00-901 Warszawa, Poland 

続いてこちらは、エストニアのタリンにあるショッピングモールです。モダンな造形性が特徴のこの建物。夜はさらにその特徴的な躯体が光り、幻想的な姿に変身します。

 

7色に変化する照明が内側のガラス面に反射し、立体的なアート作品のように目を楽しませてくれます。

Tallink Duty Free AS Sadama 5/7, 10111 Tallinn, Estonia 

夜遅くまで明るかったヨーロッパの夏が過ぎ、これから日照時間が短くなります。

街並みがライトアップされる時間の早まる秋冬。温かな光があふれる夜の街並みを歩くと、昼間とは一味違った風景を楽しめます。春や夏の心地よい季節もよいものですが、昼・夜で2倍楽しめる秋冬のヨーロッパ旅行もおすすめです。後編でも、ライトアップでさらに魅力的になった街並みをご紹介していきたいと思います。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

松永香織さん

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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