初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

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アートや文化に触れる公共建築の使われ方_前編

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建築インテリアデザイン

駅、役所、図書館そして美術館など、どの国でも各都市にある公共建築。

一般的には観光スポットではないため、ツアーなどで参加した旅行ではなかなか訪れる機会がないかもしれません。国外の公共建築は、人々が集う場としてさまざまな工夫が凝らされています。アート性が盛り込まれていたり、地域の文化をより深く知れるような仕掛けがなされたりと、どれもとてもユニークです。今回は、その都市に住んでいなくても、誰もが訪れることができる公共建築をご紹介していきましょう。

旅の拠点、駅の建築

こちらは、先進的な造形が特徴的な、オランダのロッテルダムにある中央駅。

ヨーロッパに多い、歴史的な建物を使った駅とは、趣が違いますよね。左右非対称な外観は、ダイナミックで迫力があり、ステンレス鋼でシルバーにきらめく姿が未来を感じさせるモダンなデザインです。 駅前空間は市民の憩いの場としても開放されています。近年は、建築家集団MVRDVがエキシビジョンを開催するなど、駅を巻き込んだイベントも開催されました。

一方、内部は外観と実に対照的。

ウッドの天井材で仕上げられ、温かさのある空間に仕上げられています。また、全面にガラスを使うことによって、開放的な印象になってるのが特徴です。

構内には、待ち時間を持て余さない工夫が満載

入れ替わりでギャラリーとして使われるスペースのほか、ミーティングや仕事、勉強ができるワーキングスペースとしても使えるカフェが併設されています。

Rotterdam Centraal Station(ロッテルダム中央駅) 
Stationsplein 2, 3013 AJ Rotterdam 

子どもから大人まで、エンターテインメントを楽しめる図書館

図書館は、世界的に見ても独創的な建築が多い公共建築のひとつです。

ただ単に読書を楽しむだけでなく、静かに考えごとをするなど、人によっては何時間も滞在できる場所なのではないでしょうか。

こちらは、オランダのスパイケニッセという地域にある図書館で、通称「Book Mountain(ブックマウンテン)」と呼ばれています。ピラミッド型のガラスに覆われた姿はインパクト抜群。

名前の通り、まるで本の山を登るように陳列された本棚で構成されています。全面ガラス張りなので、光がめいっぱい入るスペースで読書や勉強をすることが可能です。また、カフェも併設されており、コーヒーを楽しみながらゆったりと過ごせる空間となっています。

Stichting Openbare Bibliotheek Spijkenisse(スパイケニッセ図書館:ブックマウンテン) 
Markt 40, 3201 CZ Spijkenisse
https://www.deboekenberg.nl/ 

次にご紹介するのは、アムステルダムにある公共図書館

斜めの壁で構成されている外観が特徴です。対岸から見ると、どの角度から眺めても美しいバランスでデザインされているのがわかります。ガラスや石を使い、直線的な造形を組み合わせて、近代的な印象を持たせている建築です。

館内では、本を読むだけでなく、特定のスペースでオーディオを聞いたり、シネマを見たりすることも可能です。また、展示会や楽器の演奏、ミーティングに使えるレンタルルームもあり、多目的に使える施設となっています。

Openbare Bibliotheek Amsterdam(アムステルダム公共図書館) 
Oosterdokskade 143, 1011 DL Amsterdam 
https://www.oba.nl/
 

館内では、本を読むだけでなく、特定のスペースでオーディオを聞いたり、シネマを見たりすることも可能です。また、展示会や楽器の演奏、ミーティングに使えるレンタルルームもあり、多目的に使える施設となっています。

最下階は、円形に組まれたデザイン性のある書棚が特徴です。

館内には、ワークショップやイベントが行われたり、ギャラリーとして使われたりするスペースが設けられています。子どもから大人まで、思い思いにリラックスしながら過ごせる憩いの場として、地域の人々に愛されています。

最上階にはレストランのほか、アムステルダム市街を一望できる展望スペースがありますよ。住民でなくても気軽に入れる雰囲気が魅力で、雨の日や旅の疲れで少し休みたいときにもおすすめの場所です。

Openbare Bibliotheek Amsterdam(アムステルダム公共図書館) 
Oosterdokskade 143, 1011 DL Amsterdam 
https://www.oba.nl/

遊び心とカラフルな色があふれる庁舎

「役所」というと、機能的でベーシックな空間がイメージされがちですよね。これに対してオランダでは、公共建築の建築費のうち5%は、アートの分野へ予算配分をするというルールがあります。そのため、役所や警察署などあらゆる庁舎で、自由なデザイン性を持つ空間を体感できます。日本における「役所」のイメージが覆される空間に、驚く方も多いかもしれませんね。こちらはユトレヒトにある市役所です。館内へ入ると、何層にもなっている大きな吹き抜けのホールが、ゆったりとした開放感を演出しているのがわかります。手すりや間仕切りにガラスを使うことで、透明感と明るさのある空間に仕上がっているのが特徴です。また、緑や植物を積極的に取り入れたやさしい雰囲気も魅力的。赤や黄色など、心が明るくなるカラフルで鮮やかな色彩が使われている点にも新鮮さを感じます。

ホールにはこのような大きなチェスなど、訪れた方が実際に遊んで待ち時間を過ごせるスペースも設けられています。視覚的にもアート性や遊び心を感じられますよね。また、街の歴史を学べるミニギャラリーも併設されています。

Burgerzaken Utrecht 
Stadsplateau 1, 3500 CE Utrecht

創造性を育む博物館や科学未来館

美術館や博物館は、観光スポットとして人気を集めることも多い場所です。

これに対して、科学博物館などは子ども向けのイメージがあるからか、あまり注目されていないところもあるでしょう。ここでご紹介する2つの科学博物館は、建築的な魅力も持つ大人でも楽しめる施設となっています。

ドイツのウォルフスブルクにある「フェーノ科学センター」は、建築家ザハ・ハディドの作品のひとつ。コンクリートの見事な造形性が魅せる建築デザインと、体感的に楽しめる展示の数々は見所たっぷりです。 大人向けのアトラクションもそろっているため、思わず童心にかえって時間を忘れてしまいます。

フェーノ科学センター 
Willy-Brandt-Platz 1, 38440 Wolfsburg
https://www.phaeno.de/ 

こちらの「サイエンスセンターNEMO」は、オランダのアムステルダムにある科学博物館です。

イタリア人建築家レンゾ・ピアノ氏の作品で、斜めの屋根と遠くから見ても目立つグリーンの外観が特徴です。屋根部分はデッキになっており、地域に開かれているため、晴れた日にデッキを目指し、美しい景色を求める人も多くいます。

なお、同センターには、アムステルダムの北と南をつなぐ地下トンネルも組み込まれています。科学センターとしてだけでなく、街の重要な機能を担う建造物、そして市民の憩いの場としても愛されている施設です。

サイエンス・センター NEMO 
Oosterdok 2, 1011 VX Amsterdam
https://www.nemosciencemuseum.nl/nl/ 
 

ただ施設としての機能や役割を全うすることだけが目的ではなく、人々がより豊かで前向きな気持ちを持てるようデザインされた公共建築。

年齢、性別、国籍を問わず、どんな人々も心地よく利用できるアイデアや工夫にあふれた空間になっています。いつも国内で利用する身近な公共施設と比較して見ると、また違った発見が生まれるかもしれませんね。

次回は後編として、イベントなど公共建築の興味深い活用の仕方や、形を変えて建物が受け継がれた事例などをご紹介します。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

松永香織さん

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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