藤山:移動が不便という理由で、だんだん使われなくなるんですか?
鈴木:そういうこと。人間って、ちょっと不便を感じるだけで、すぐに足が遠のいてしまう生き物なんだよ。いま話しながら思い出したけど、もう一つスゴイ話があった。せっかくがんばってつくったのに、寝室と子供部屋を両方とも使わなかった家がある。もちろん、打ち合わせのときは寝室も子供部屋も要望に入っていて、それ相応の予算をかけてきちんとつくった家だったんだけど……。
藤山:どういう家ですか?
鈴木:二世帯住宅なんだけど、1階が親世帯、2階が子世帯で、地下階に子世帯の寝室と子供部屋を置いたプラン。
藤山:ちょっとイレギュラーですね。
鈴木:まあね。で、敷地が狭かったので、空間を有効活用するために、子世帯が生活する2階のリビングダイニングに2畳程度のロフトをつくったの。そしたら、子世帯の夫婦と一人娘がそのロフトで寝起きを始めてしまった。
藤山:地下の寝室には行かずに?
鈴木:そう、ロフトのほうが近くて便利なものだから、そこに居付いちゃった。
藤山:お子さんはおいくつですか?
鈴木:いま、小学3年生。当時はまだ幼稚園だったから、ロフトで一緒に寝起きするのはよく分かる。でも、小学生になったし自分の部屋もほしいだろうから、そろそろ地下の部屋を使うのかなぁと思っていた頃、ちょうどそこのご主人から電話がかかってきた。「鈴木先生、子供部屋をつくりたいのですが、2階の隣に一部屋増築できませんか?」って。
藤山:地下の子供部屋は?
鈴木:そう思うじゃない?だから言ったの、地下に広い部屋があるでしょって。そしたら、「2階から地下まで降りて行くの、面倒なんですよねぇ」だって(笑)。
藤山:そりゃ、面倒かもしれないけど。
鈴木:遠いからイヤなんだって。
藤山:イヤって言われても……。地下の部屋って何畳くらいなんですか?
鈴木:18畳。
藤山:え、えー。6畳程度ならまだしも、18畳の部屋をまったく使っていないんですかぁ。
鈴木:そう。いまだに広大な物置部屋になっている。
(つづく)
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