

藤山:なぜだか急に欲しくなって買ったものの、2、3度使ったきり使わなくなるモノってありますよね。
鈴木:あるね。うちは調理器具でそういうものが多いよ。“一瞬で剥けます”って触れ込みの皮剥き器とか。見つけたときは「こんなに便利なものがあるのか!」って興奮して買うんだけど、すぐに使わなくなった。
藤山:皮なんて、そんなに剥かないし。
鈴木:忙しくて剥いているヒマがない(笑)。洋服なんかもそうだね。雑誌を見て、「かっこいいじゃん」って似たようなシャツを買ったりするけど、買った時点でもう満足。ほとんど着ないものがけっこうある。
藤山:家づくりにもそういう部分がありますね。なんとなく、いきおいでつくってしまう部屋とか。
鈴木:あるある。いざ家を建てるとなると、それまでの思いが一気に吹き出すからね。あれもこれも欲しくなって、収拾がつかなくなる。それと、目先のことに引っ張られがち。小さな子供がいる家庭は、どうしても子供中心の家づくりになってしまう。
藤山:子供なんて、いつまでも子供じゃないのに。
鈴木:10年くらいしたら出て行くからね。もっとも、最近はいつまでも家に居座っている子供も多いみたいだけど……。
藤山:これまでの設計で、絶対に欲しいと要望されてつくったにもかかわらず、その後、意外と使われなかったものって何かあります?
鈴木:けっこうある。いまでもたまに笑い話になるのが、ガスコンロの話。
藤山:はい。
鈴木:子供が3人いらっしゃる5人家族の新築なんだけど、お母さんは、お父さんと子供の分を合わせて毎日4人分のお弁当をつくっていたの。
藤山:それは大変。
鈴木:そのお母さんというのは炊飯器が嫌いな人で、「うちはずっとガスの直火でお米を炊いておりまして……、新居のキッチンもぜひガスでお米が炊けるようにしていただければ」って。
藤山:ガスで炊く?
鈴木:お釜で炊くやつ。コンロの上に直接お釜を置いて。
藤山:ああ、ありますね、そういう釜。
鈴木:ガスで炊くのと炊飯器で炊くのでは、コシも粘りも全然違うらしい。ただ、そのとき問題になったのは、ガスコンロのバーナーを4つにしたいと要望されたこと。お米を炊く釜はコンロの上に常に置きたいから、バーナーは全部で4つないと不便というわけ。