保存版!年代別「家づくり」方程式

保存版!年代別「家づくり」方程式ー総論

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リクシルオーナーズクラブ会報誌『住み人』創刊号(全国のLIXILショールームで配布)では、『建築知識ビルダーズ』編集長・木藤阿由子さんによる「年代別『家づくり』方程式」をご紹介しました。
ここでは、『住み人』編集部が選ぶ「誌面に入りきらなかったけど、絶対に知っておきたいリフォーム話」を公開します。

詳しくはこちら→『住み人』 創刊のお知らせ

30代のリフォーム:引き継いだ家を大切にしたいけど……

「地方を中心に、“祖父母が亡くなってから空き家になった家を30代で引き継ぐ”といったケースがみられますが、今の30代が望むライフスタイルとはマッチしない広さやつくりに、多くの人が持て余してしまいます」と木藤さん。

小さいころから馴染んできた祖父母の家ということもあり、「手放せない」「建て替えもしたくない」「でも、古くて住みにくい」と悩む人が多いのだそうです。特に古い家は部屋数が多く、2階部分は使われずに空き部屋となってしまうことも。

「吹抜けリビング」で実家を明るく!

そこで、建物の一部を取り壊す「減築」を検討するのも一つの手です。

しかし、減築は大がかりな工事になるため、費用も時間もかかります。まして30代は、これから子どもが増える可能性もあるので、部屋数を減らしていいものかも迷います。

「ならば、2階の床を一部取り除いて、吹抜けにするのはどうでしょうか」というのが、木藤さんの提案です。「吹抜けなら、古い家に多い“暗い”という不満も解消できます。たとえば住宅密集地などで1階の日当たりが悪い家では、吹抜けをつくることで、上からの光を1階に届けることができます。ただし吹抜けは、耐震面や断熱面で弱点になるため、知識や技術力がある工務店に相談してください」。古い家でも憧れの吹抜けリビングは不可能ではありません。2階に使わない部屋がある場合は、思い切って部屋をなくすことを検討してみてはどうでしょうか。

40代のリフォーム:同居で気になるキッチン問題

40代になると親が高齢になり、同居を始める人も少なくないでしょう。同居で最もトラブルになりやすいのが、キッチンです。

「キッチンの使い方はそれぞれ個性があるもの。調理器具の使い方や置き方、食材の保管方法やらお皿の重ね方にいたるまで、ちょっとした習慣の違いがぶつかりあう場所なので、争いに発展しがち」と木藤さんは言います。この、キッチン問題を解決する糸口は、「小さくてもキッチンを増やすこと」にあるそうです。

親の部屋にミニキッチンをつけるリフォームプラン

キッチンを増やすとはいえ、立派なキッチンをつくる必要はありません。また、食事を別々にするということでもありません。

「要は、キッチンの主導権をはっきりさせるということです。1つしかないキッチンを互いに遠慮しながら使うのはとてもストレス。特に子育て中は、子供の生活リズムに合わせてキッチンを使うので、ご両親が使える時間帯が制限されます。“朝の忙しいときに、親がお茶を淹れにキッチンに来る”などのちょっとしたバッティングを防ぐことが重要になります。そのため、親の部屋に簡単なミニキッチンを取り付けるリフォームをおすすめします」

ミニキッチンには、どの程度の機能を持たせればいいのでしょうか。木藤さんは、「蛇口とシンクと小さな作業スペースがあればよいでしょう。コンロも1口あると便利ですが、最近は便利な調理家電があるので、コンロを設けないときは電気を引いておくことがポイントです」と説明します。将来、介護をする可能性を考えても、薬を飲んだり、体を拭いたりすることが容易で、利便性が高いそうです。

子どもが孫たちを連れてくる日”にそなえたリフォーム

40代も後半になると、近い将来、独立して家を出ていく子どものことが頭をよぎります。

「以前、成人した姉妹が家を出た後の夫婦のリフォームを取材したことがあります。そのときに奥様が“いつか娘が結婚して、家族を連れて帰ってきたときに大勢でもみんなで食事ができる場所がほしい”と言ったのが印象的でした。その家は、LDKをワンルームスタイルにリフォームしました」

また、夫婦二人になったら大きなキッチンはいらないと思われがちですが、そうでもないようです。

「キッチンは、独立した娘さんはもちろん、息子さんの彼女と仲を深められる場所にもなります。オープンキッチンにすると、複数人で使っても狭くないし、50代、60代になって自分たちの時間が増えたときに「食」を楽しみたいのであれば、キッチンの作業台を広めにつくっておくとよいでしょう」と、木藤さんは教えてくれました。

50代のリフォーム:夫婦両方が満足するマル秘の一手

減築については30代のところでも触れましたが、「子どもたちが巣立っていき、これからは夫婦2人暮らし。使わない部屋も増えた」という50代になってから検討しても遅くはありません。

自分たちの暮らしに合わせ家をリサイズ

減築とは、家屋の一部を取り壊し、面積を小さくすることです。「思い切って2階を減築して平屋にするという選択肢もあります。多少、費用はかかりますが、階段の上り下りがなくなりますし、空き部屋の掃除の手間が半分になります。耐震という点でも効果があります」と木藤さんは続けます。

実際に減築を行うことで、専有面積も減るため、固定資産税の軽減も期待できます。これからも、愛着のある町、愛着のある家に住み続けたいと思うのなら、自分たちの暮らしにあったサイズに「仕立て直す」というのもよいでしょう。

番外編:全世代におすすめしたい「半屋外空間」

リフォームというとどうしても実用性が重視されがちですが、せっかくお金をかけるのであれば、より豊かな暮らしを叶えたいもの。そんな希望に対し木藤さんは、「戸建て住宅ならではの、趣味と実益を兼ねるおすすめのリフォームプランがあります。ここまで現実路線のリフォームを紹介しましたが、これは割と夢のある話です(笑)」と、コンサバトリー※をつくるリフォームをおすすめしてくれました。

▼用語解説
※コンサバトリーとは
コンサバトリーはミッドテリアとも呼ばれる空間で、家から張り出して設置されたサンルームを指す言葉です。大きさはさまざまですが、日当たりのよい場所に、光を通す素材でつくることが多いスペースです。

家の“中間”リフォームでコンサバトリー(ミッドテリア)を

「たとえば、使っていない庭や敷地のちょっとした余白に屋根のある土間空間をつくるのです。床は、土がむき出しのままよりは、タタキにしたり、タイル張りにしたり、ウッドデッキもよいと思います。ポイントは、屋外でありながら、部屋のように使えること。部屋履きのまま出られると使い勝手がよくなります」

鉢植えのハーブを育てたり、子どもたちが水遊びしたり、ペットの居場所や休日の夫の居場所にもなる、万能なスペース。「コンサバトリーは、最初の優先度こそ低いですが、実際につくってみると、特に女性の満足度は高いですね。ぽかぽか暖かい場所で、子どもたちを安心して遊ばせることができますからね」と、リフォーム住宅取材での話も聞かせてくれました。

家と外の間にある中間領域をうまく使うことで、団らんや趣味の時間を充実さる“第2のリビング”が新たな家族の居場所を生み出すことにつながり、素敵なマイホームライフが送れるようになるそうです。

まとめ:リフォームは人生の棚卸

「どの世代にとっても、どんな小さなリフォームでも、リフォームは“人生の棚卸”のようなもの。自分たちのこれまでの生活を振り返り、何が必要で何が不要かを整理するよい機会です。そして、将来に向けてどんな準備をするのか、普段は話しづらいことも家族と話し合ってみてください。リフォームは、家族の絆を深め、よりよい暮らしを手に入れるもの。単に悪くなったところを直すだけではもったいない。せっかくのチャンスを思いっきり楽しんでほしいです」と木藤さん。

時間をかけて、自分たちにとって最高のマイホームを少しずつつくり上げていく。それもまた、深い愉しみと、確かな充実感を与えてくれるリフォームのあり方なのだと、木藤さんは教えてくれました。

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------お話をうかがった方------

木藤 阿由子さん

株式会社エクスナレッジで「建築知識ビルダーズ」編集長を務めるほか、
専門知識を生かし、一般ユーザー向けの書籍編集も手がける。
LIXILメンバーズコンテスト審査員なども歴任。

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