

藤山:鈴木さんは、いまおいくつでしたっけ?
鈴木:51歳。
藤山:住宅の設計を始めて何年くらいですか?
鈴木:一級建築士の資格を取ったのが27歳のときで、その年に初めて住宅の設計をしたから、かれこれ25年弱だね。
藤山:最初のお客様はどんな方でした?
鈴木:どんな方もなにも、親ですよ。
藤山:ご両親に家を建ててあげた?
鈴木:いやいや、そんな立派なものじゃなくて、奥さんの実家の建て替え。当時はまだ奥さんじゃなくて彼女なんだけど……。実家を建て替えるというので、「それはぜひ自分にやらせてくれ」って無理やり頼み込んだの。
藤山:へぇ、若者っぽくていいですね。
鈴木:ただ、それまで住宅の設計なんて一度もやったことがなかったの。当時はまだ大学の研究室で助手の仕事をしていて、たまに住宅とは全然関係ない設計をやっていた程度で。
藤山:それで、ちゃんと出来たんですか?
鈴木:いや全然。特にお金関係がまるでダメだったね。「コストを合わせる」という意識がまったくなかったんだよ。敷地いっぱいにあれもこれもとアイデアを詰め込んだ図面を描いて、いざ見積りを取ってみたら予算を軽く1,000万円オーバー。
藤山:そもそも予算はいくらだったのですか?
鈴木:それがよく憶えていないんだ(笑)。憶えていないというか、予算の話はされたのだろうけど、そのときはまったく頭に入っていなかった。「念願の住宅の設計ができるぞ」ってすっかり舞い上がっちゃって。
藤山:そんなものですかね。
鈴木:でも、結局そのままいったんだよねぇ……。
藤山:そのままいったって、1,000万円オーバーのままですか?