自宅の耐震化でSDGsに貢献![第3回]

耐震補強で住まいをパワーアップ!

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防災リフォーム

耐震補強工事の4つの方法

 耐震補強工事には大きく分けて4つの方法があるといいます。以下、簡単に説明します。

【1】壁を強くする・増やす

写真提供:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

 強い壁を増やすことが耐震補強の第一歩。現在の壁を耐震性の高い壁にすることで、「壁の量(強さ)」を増やし、「壁の配置バランス」を改善できます。構造用合板や筋かいによる補強もありますが、耐震補強部材メーカーが開発した耐震性のより高い工法もあります。

 例えば旭トステム外装の「パンチくん」はスチール製の板を使用することで、一般的な合板張りに対し、壁基準耐力が約1.5倍。筋交いや合板を使わずに耐震性をアップすることが可能です。
※詳しくはこちら → www.asahitostem.co.jp/reform/p_tokucho.php

 また、LIXILの「アラテクト」は、鉄の7~8倍の引張強度をもつアラミド繊維に樹脂を含浸させ、厚さ1mm以下の薄い板状にしたアラテクトシートを既存の壁に貼るだけで、壁の強度を大きく向上させることができます。
※詳しくはこちらこちら → www.lixil.co.jp/lineup/construction_method/aratect/

 どちらも施工は簡単なので短い工期で仕上がります。日常生活にあまり支障をきたさないので、リフォームにぴったりです。

 また、壁の補強を行う際には、柱が引き抜けないように金物でしっかり固定することが重要です。
 1995年の阪神・淡路大震災では、このつなぎ目を金物で固定することが義務づけられていた3階建ては倒壊被害が少なく、義務化されていなかった2階建て以下の木造住宅に甚大な被害が発生しました。その後、2000年に建築基準法が改正され、2階建て以下も金物による固定が義務化されています。

【2】基礎を強くする

写真提供:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

 壁を強くしたり、接合部を補強しても、足元の基礎がしっかりしていなければ、大きな揺れが来た時に踏ん張りが効かず、耐震性を発揮できません。
 基礎の補修や補強には、主に3つの施工があります。

1.ひび割れを補修する
 エポキシ樹脂などを注入し穴を塞ぎます。鉄筋が入っている基礎の場合、雨水によって基礎がさび付き、基礎が割れてしまう「基礎の爆裂」を防ぐことが目的です。

2.鉄筋コンクリート造の基礎を足す
 鉄筋が入っていない基礎に、鉄筋コンクリート造の基礎を足します。基礎の「増し打ち」と呼ばれ、鉄筋コンクリート造の基礎を抱き合わせて一体化させる工法です。

3.基礎を新たに設置する
 基礎のない箇所に補強壁を増設する場合には、基礎も新しく増設します。基礎の新設は大がかりな工法となるため、費用も高額になります。

【3】腐敗・劣化箇所を直す
 木材は腐ると本来の強さを発揮できなくなります。特に浴室や洗面室が多い北側は要注意です。土台が腐朽したり、シロアリ等の被害を受けたりしている場合、傷んだ木材を取り外し交換します。その際、防腐・防蟻処理を推奨します。

【4】屋根を軽くする
 耐震診断では、屋根や壁が重いほど、それを支える為に必要な壁の強さ(量)が大きくなります。瓦屋根の家は頭が重たいため、地震の時に揺れやすくなります。屋根を軽いものに取り替えることで、耐震性は向上します。

瓦の重い屋根を軽量屋根に葺き替え(提供:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)

 例えば、LIXILの「T・ルーフシリーズ」なら、m2当たり重量が一般的な瓦が約50kgなのに対して約7kg、1棟分の重さ(100m2)は5tなのに対して0.7tと、圧倒的な軽さを誇ります。
 さらに、地震によるタテ揺れとヨコ揺れによって、住宅全体にねじれるような力が加わります。T・ルーフは、専用ビスでしっかりと固定するため、屋根全体をギブスのように固定。住宅の構造を支える効果があります。
 同様に、躯体にしっかりと固定されているため、落下などの心配もありません。

※詳しくはこちら→ www.lixil.co.jp/lineup/solar_roof_outerwall/t-roof/

【プラスαの耐震工事】制震ダンパーで揺れを吸収!

2016年4月に発生した熊本地震では震度7の揺れが2回も発生し、1回目の揺れでダメージを受けた建物が、再び大きく揺らされることで倒壊被害が拡大しました。
そこで注目されているのが「制震ダンパー」です。「ダンパー」と呼ばれる特殊な装置で揺れを吸収することで、建物に伝わる地震の揺れを軽減します。
耐震に制震をプラスすることで、より安全・安心な家にすることができるのです。

日常生活の心配もなし

 耐震補強工事を始めたら普通に生活するのが難しくなるのではと思う人も多いでしょう。しかしほとんどの場合、「日常生活に支障が出ることはほぼない」と、関さん。

「確かに相談者から『工事中はホテルなどに仮住まいをしなくてはいけないのですか?』と聞かれることもありますが、実際の耐震補強工事は住みながら行うケースがほとんどです。例えば補強工事は部屋ごとに進めるので、普段の生活は工事を行っていない部屋で送っていただければ問題ありません。また、基礎工事でも全部いっぺんには行わず、劣化している部分のみなど限られたスペースなので大丈夫です」

 これまで紹介したように耐震補強工事には様々な方法があります。目標とする耐震性(評点)と予算に応じた補強工事を組合せて、施工箇所を考えていくのが補強設計です。

「木耐協では、様々な補強工事の費用対効果を踏まえて優先順位を定めています。相手が天災である以上、絶対に倒れない建物は造れません。だからこそ、『今の家にあと何年くらい住むか』『これからのライフスタイルはどうしたいか』『予算はどのくらいか』などを考慮し、どこまで補強するのかを決めることが重要です。それが費用対効果の高い耐震補強を実現するためのポイントなのです。家族だけでは決められない場合は、耐震の専門家と相談しましょう」

★LIXILでも各種耐震リフォームサービスを取り揃えているので、ご自宅のリフォームをお考えの方はそのついでに一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
※参考:www.lixil.co.jp/lineup/construction_method/quake_resistant/

★災害対策ガイド
LIXILのサイト内で、地震、豪雨、大雪などの自然災害への備えおよび災害発生時や復旧の際にご注意頂きたいポイントをご紹介しています。参考にしてください。
www.lixil.co.jp/support/disaster/

 次回は気になる費用を抑えるコツなどを解説していただきます。

SDGsを動画で学ぶ: 「内田篤人のSDGsスクール!」

www.youtube.com/channel/UCyLpj6fbC4Q8sXYu8o_2x3Q/featured

LIXIL SDGsアンバサダーの内田篤人さんと一緒に、SDGsというテーマを分かりやすく学び、 楽しい実験や体験を通じて、皆さんと一緒に知識を身につけていただくYouTube番組です。

≪お話をうかがった方≫

関励介(せき れいすけ)さん

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 事務局長。1974年岩手県生まれ。大学卒業後、国際会議や学会の運営・事務局業務を経て、2002年から現職。組合員(工務店)への情報提供、耐震研修、一般消費者向け耐震セミナーなど、組合の運営全般を担当している。

文◎山下久猛
撮影◎大平晋也
写真提供◎Shutterstock

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)