自宅の耐震化でSDGsに貢献![第2回]

まずは自宅を「診断」しよう

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防災リフォーム

リフォームでは「設備交換」だけでなく「耐震」も!

 前回、地震で被害を受けるリスクの高い建築年や建築場所についてご紹介しました。この内容を受けて、「真剣に地震対策をしなければ」と思ったものの、実際に耐震補強工事をするにはかなりのお金や時間がかかるため、なかなか一歩を踏み出せない……、といった人も多いのではないでしょうか。

「そのお気持ちはよくわかります。自分の身体を例にしても、現状で問題がなければ、わざわざ病院に行くことは少ないですよね。それと同じで、地震対策のためだけに工事をするのはハードルが高いものです。でも長く同じ家に住んでいると壁や床、天井などが傷んだり、お風呂やキッチンなど古くなった水まわりの設備を交換したくなったりしますよね。そういったタイミングで耐震補強も考えると、ハードルが下がると思います」

耐震診断は「健康診断」と心得る

 確かに、リフォームのついでだと取り組みやすいかもしれません。
 ただし、耐震化しようと決めた時には、いきなり工務店等に依頼するのではなく、その前にやるべきことがあると関さんはいいます。

「先ほど人間の身体のことを例に出しましたが、どんな問題があるのかわからないのに病院へ行き、とにかく手術をしてくれとか薬をくれといっても医者は困りますよね。何の病気かわからなければ処方や治療はできません。家も同じで、まずは耐震診断を行う必要があります。その後、どこにどのような補強工事を行うかを決め、実施します。『何でもいいから補強工事をしてほしい』という人もいますが、何の病気かわからなければ処方も治療もできないのと同じで、まずは耐震診断が必要なのです」

 では、耐震診断とはどのようなものなのでしょうか。
 関さんによればその目的は、「人命保護に重点を置き、住宅の弱点を認識し、耐震、制震、免震など具体的な対策を立てること」。
 言い換えれば、「『大地震時に倒壊しない』ための耐震性の確保」だそうです。

「2000年に改正された現在の建築基準に照らして、どのくらいの耐震性があるか確かめるのが耐震診断です。床下から天井裏まで丁寧に調査し、大地震で倒壊しない耐震性(強さ)があるかを確認します。耐震診断で明らかになった改善ポイントに基づいて、耐震リフォームを検討します」

 耐震診断には以下の3つの方法があります。
 ・簡易診断:住まい手でも可能な「誰にでもできるわが家の耐震診断」といわれるもの。
 ・一般診断:建築士等が行う。非破壊調査ながら一定の精度を確保。木耐協で推奨。
 ・精密診断:建築士が行う。原則として壁を一部解体し、調査する。診断費用は高額。

 また、耐震診断は建築士や大工であれば誰でもできるものではなく、高度な専門知識をもった専門家に依頼する必要があります。
 関さんも「木造住宅の耐震診断を正しい手順、手法で行える人は建築業界の中にも少ないのが現状」と指摘します。

 その専門家として、木耐協による「耐震技術認定者」に相談するのもいいでしょう。

※耐震技術認定者はこちらで検索できます
www.mokutaikyo.com/ninteisya/search/

「木耐協では、全国組合員の耐震診断知識の均一化と技術の向上を目的として、耐震技術認定者の資格制度を設け、認定講習会を行っています。受講資格は、一級・二級・木造建築士、または木造建築工事業の実務経験が7年以上の者。受講後、考査試験に合格した者を認定し、3年ごとの更新受講を義務づけています」

 このほか各自治体でも耐震診断を受け付けています。
「以前は旧耐震にしか対応していませんでしたが、一部自治体は新耐震にも対応しているので、問い合わせてみるとよいでしょう」と、関さん。

耐震診断の具体的な内容

 ここからは、「一般診断」のプロセスを関さんに解説していただきましょう。

屋外調査

屋根裏調査

「まずは築年数やリフォームの有無、雨漏りの状況など、住宅に関する情報を収集します。その後、調査員が実地調査を行います。時間は約2時間。まず屋外で、外壁、基礎、屋根をチェック。屋根の構造や基礎の鉄筋やひび割れの有無を確認します。

 屋内は、図面通りに施工されているかを確認するほか、床下や天井裏にもできるだけ入って、壁の材質や筋かいは適切に施工されているか、雨漏りの跡や傷んでいる木材はないかなどを確認します。調査項目は、間取り・壁の材質・筋かいの有無・屋根の重さ・劣化状況(基礎のひび割れ・外壁の割れ・雨染み)など多岐にわたります」

床下に潜り、コンクリートテストハンマーで基礎の強さを測定

含水率計でシロアリや腐食のリスクを確認

以上写真提供:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

倒壊可能性を「4段階」で判定

 耐震診断を行うことで、健康診断と同じく、家の状態が細かくわかり、対策が立てられます。

「耐震診断後、現地調査票に間取りや壁の材質、筋かいの方向や太さ、柱の腐れやシロアリ被害、基礎のひび割れ有無等について記入します。その調査結果から耐震診断書を作成します。最終的には耐震性を総合評点で評価し、一般財団法人日本建築防災協会が定めた基準に沿って、『大地震で倒壊する可能性』を4段階で判定します」

 この4段階は、以下のとおりです。
 ◎……倒壊しない
 ○……一応倒壊しない
 △……倒壊する可能性がある
 ×……倒壊する可能性が高い。

 そして、評価に大きな影響を及ぼすものとして、「壁の量」「壁の配置のバランス」「柱と土台・梁の接合」「劣化状況」の4項目を挙げています。

「診断書を読み解くと、家の弱点が見えてきます。例えば、『耐震性のある壁や筋かいが少ない』『南側に大きな窓あり壁のバランスが悪い』『木材が腐っている』などです。この弱点を補強するのが耐震補強工事です。

 そして、総合評価が『◎』『○』であれば、耐震性があると判断されます。一方、『△』『×』の場合は、大地震によって大きな被害が生じる可能性が高いため、耐震補強が必要となります。後者の場合は調査結果を元に、具体的な補強箇所や方法などを提案します」

 そして、総合評価が『◎』『○』であれば、耐震性があると判断されます。一方、『△』『×』の場合は、大地震によって大きな被害が生じる可能性が高いため、耐震補強が必要となります。後者の場合は調査結果を元に、具体的な補強箇所や方法などを提案します」

 これだけの耐震診断をやってもらうとその料金も気になるところ。いくらくらいかかるのでしょうか。

「一般的な建築事務所に頼むと10万円ほどでしょうか。自治体の場合はまちまちですが、基本的には数千円で済むと思います。ちなみに木耐協は無料で行っています」

 次回は具体的な耐震補強工事について解説していただきます。

SDGsを動画で学ぶ: 「内田篤人のSDGsスクール!」

www.youtube.com/channel/UCyLpj6fbC4Q8sXYu8o_2x3Q/featured

LIXIL SDGsアンバサダーの内田篤人さんと一緒に、SDGsというテーマを分かりやすく学び、 楽しい実験や体験を通じて、皆さんと一緒に知識を身につけていただくYouTube番組です。

★ LIXILでも各種耐震リフォームサービスを取りそろえています。ご自宅のリフォームをお考えの方はそのついでに一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
https://www.lixil.co.jp/lineup/construction_method/quake_resistant/

≪お話をうかがった方≫

関励介(せき れいすけ)さん

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 事務局長。1974年岩手県生まれ。大学卒業後、国際会議や学会の運営・事務局業務を経て、2002年から現職。組合員(工務店)への情報提供、耐震研修、一般消費者向け耐震セミナーなど、組合の運営全般を担当している。

文◎山下久猛
撮影◎大平晋也
写真提供◎Shutterstock

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