自宅の耐震化でSDGsに貢献![第1回]

キーワードは「2000年」。補強すべき家とは

空間
その他
関心
防災リフォーム

耐震補強とSDGsの関係

「地震が来ても倒壊しない家に住みたい」と考えた時、当然のことながら、新築よりも少ない資材で済む耐震リフォームのほうが、SDGsにかなっています。そもそも家を長持ちさせることはSDGsにつながるので、自宅の耐震化を考える人はSDGsの意識が高いといえるでしょう。

SDGsに関心が高まっている昨今、住宅業界では耐震リフォームをどうとらえているのでしょうか。

「世間でSDGsが話題になる前から、国としては既存住宅を活用する方針を取っています。例えば、住生活基本計画の中で、既存住宅の流通とリフォームの市場を倍にするといっています。現実的には、なかなか進んでいないのですが、世界的なSDGsへの関心の高まりや脱炭素の動きもあり、今あるものを活かして長く使うことがこれからますます重要になってくるでしょう。

 住宅に関しても、外観だけきれいでも内部がボロボロでは持続的に安心・安全な生活は送れないですよね。よって、そのベースとなる耐震性をしっかり高めることはSDGsにつながるのです。

 そして、耐震性に優れた家が増えると、SDGsの目標の11番の「住み続けられるまちづくり」と12番の「作る責任・使う責任」に貢献できます。我々が20年以上前から進めている耐震事業は、その2つの目標の実現に繋がっているのです」

 改めて言うまでもありませんが、地震大国の日本において、住まいの耐震性能アップは急務です。

「2020年10月から2021年10月までの1年間に発生した震度4以上の地震だけでも50回も発生しています。死者が出た巨大地震は、1943年の鳥取地震から数えても20以上にも上ります。さらに近い将来、南海トラフ巨大地震や首都圏直下地震など、甚大な被害が懸念される巨大地震が確実に起こると予想されています。それ以外の場所でも、いつ巨大地震が発生しても不思議ではありません」

2000年5月以前に建てた家は要注意

 特に地震対策が必要な家とはどのような家なのでしょうか。

「住宅の地震対策を考える基準の1つとなるのが『建てた年』です。建物の耐震性能は建築基準法によって定められています。その建築基準法は大地震による被害程度で強化されてきました。木造住宅において大きく基準が変わったのは1981年と2000年。まず1978年に発生した宮城県沖地震の被害によって、1981年に抜本的に改正されました。

 2回目は、1995年に発生した阪神・淡路大震災の甚大な被害を受けて2000年に大きく改正されました。1981年以前の建物は『旧耐震基準』、1981年以降の建物は一般的に『新耐震』と呼ばれていますが、私たちでは1981年から2000年までの建物を『新耐震基準/81-00木造住宅』、2000年以降の建物を『現耐震基準』と呼んでいます。40年経っている在来の木造住宅の耐震性を確認せずそのまま住み続けることはリスクが高いです」

 95年の阪神淡路大震災で倒壊した家屋は、大きく以下4つの原因があるといいます。

「この4つの対策として、2000年に建築基準法が改正されたわけです。その後に建てられた住宅は基本的には問題ないとされてきましたが、2016年に発生した熊本地震では、新耐震基準/81-00木造住宅の建物にも大きな被害が生じました。これを受けて、国土交通省と日本建築防災協会が新耐震の建築物も耐震性の確認をしましょうという指針を出しました。ですので、我々としては旧耐震の建物は言うまでもなく、原則として2000年5月以前に建てられた家は地震対策を行うべきだと考えています」

 住宅を建てた年に加え、建てた場所も重要です。昔、川や沼だったような、元々地盤が弱い場所では同じマグニチュードでも液状化を起こしたり、建物がより大きく揺れて被害も大きくなるリスクがあります。地質・地盤調査を元にエリアの危険度を判定できるインターネットサイトやアプリがあるので、自宅がある地域を調べてみることをお勧めします。

 次回からは地震対策として何から始めればいいのか、そのプロセスを教えていただきます。

SDGsを動画で学ぶ: 「内田篤人のSDGsスクール!」

www.youtube.com/channel/UCyLpj6fbC4Q8sXYu8o_2x3Q/featured

LIXIL SDGsアンバサダーの内田篤人さんと一緒に、SDGsというテーマを分かりやすく学び、 楽しい実験や体験を通じて、皆さんと一緒に知識を身につけていただくYouTube番組です。

≪お話をうかがった方≫

関励介(せき れいすけ)さん

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合 事務局長。1974年岩手県生まれ。大学卒業後、国際会議や学会の運営・事務局業務を経て、2002年から現職。組合員(工務店)への情報提供、耐震研修、一般消費者向け耐震セミナーなど、組合の運営全般を担当している。

文◎山下久猛
撮影◎大平晋也
写真提供◎Shutterstock

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)