コメ大王が語る「玄米」の真実 第3回

玄米を簡単に炊く!

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玄米入門に向いている「分搗き米」

左から玄米、3分搗き米、白米。色も粒の大きさも異なります。

 白米を食べ慣れた方は、完全な玄米になかなか慣れないという話をよく聞きます。そんな方は「分搗き米(ぶづきまい)」からトライしてみるといいでしょう。

「分搗き米は、簡単にいうと、玄米を精米して白米にする途中でストップしたものです。3分搗き、5分搗き、7分搗きなどがあり、数字が大きくなるほど白米に近づきます」

「精白度が高くなるほど玄米特有の栄養素は減ります。それでも白米に比べビタミンやミネラルは豊富ですし、白米の食べやすさと玄米の美味しさの両方を兼ね備えています」

 肝心の炊き方は、精米の度合いによって変わってくるそうです。

「お米の洗い方は、白米と同じく、『手早く優しく』です。 ロウ層(ヌカ層)をある程度削っているので、水分は玄米より吸いやすく、洗っているときに美味しさのもとが流れやすくなります。白米よりヌカが多く付いているので、2〜3回すすぐとよいでしょう」

 水の量と浸水時間は、分搗きの度合いによって変わります。

「白米に近い7分搗きなら、水は重量比1.2〜1.4倍で、白米と同じ程度でいいでしょう。2時間程度、冷蔵庫などで浸水させてください。5分搗きなら重量比1.4〜1.6倍で浸水時間3時間、3分搗きなら1.5〜1.7倍で5時間。玄米に近くなるほど、水の量は多め、浸水時間も長めをおすすめします。炊き方は、7分搗きは白米モード、5分〜3分搗きは玄米モードで。ガスの直火で炊く場合も同じです」

 また、早炊きが出来る品種もあるそうです。

「金のいぶきという品種のお米で、胚芽の大きさが通常のお米の3倍もあります。粒もやや大きめなお米で、粒はやや大きめ、白米と同じ炊き方で炊けるのが特徴です」

新時代の玄米「グレインカット玄米」

「最近、玄米好きの間で注目されているものに、グレインカット玄米、ロウカット玄米といわれるものがあります」と小野瀬さん。

「これは玄米から、外側のロウ層を削ったものです。玄米のもつ防水層を削っていますから、浸水がしやすく、白米と同じように炊けます。玄米はこのロウ層が邪魔になって炊くときに膨れにくいのですが、グレインカット玄米は白米のようにふっくら膨らみます。また、玄米より栄養素は減少しますが、分搗き米と同じく、白米よりも豊富です」

 精米技術が進歩したことでできた、新時代の分搗き米といえるかもしれません。価格的には、製法がシンプルなこともあって、一般的な玄米とあまり変わらないようです。

発芽玄米や早炊き玄米は白米と同じ炊き方で

 TVなどで「発芽玄米」という言葉を聞いたことがあると思います。発芽玄米は、玄米を一定時間水に浸すことで、胚芽部分を発芽させた玄米のことです。また、お米売り場には「吸水不要・白米と同じように炊ける」と書かれた早炊き玄米も並んでいます。

「発芽をさせることで、増える栄養素と減る栄養素がありますが、白米より栄養が豊富である点は同じです。一般的な玄米に比べると味が淡く感じるかもしれません。メーカーによっては水洗いも不要と謳っていますが、炊き方は白米と同じでいいでしょう。胚芽部分が発芽していて、そこから浸水しやすいので、浸水時間も白米と同じで大丈夫です」

 洗い方、炊き方が白米と同じなのは、もうひとつ理由があるようです。

「早炊き玄米や多くの発芽玄米は、実は加工されています。メーカーによってさまざまな製法があるようですが、代表的なものは、マイクロウェーブを使ったもの。簡単にいうと、大きな電子レンジにかけるようなものです。これらのお米は、JAS法上、表記が異なります。発芽玄米は『発芽玄米』と表記され、加工がしてある早炊き玄米は『加工玄米』となっています。加工の手間が必要なので、価格も若干高めになります」

 こうしたお米は、白米と同じ炊き方が出来るので、白米とブレンドして炊くこともできます。

「玄米を自宅で水に浸けて発芽玄米を作る方もいるようですが、その場合、衛生面に留意してください」

吸水不要の「びっくり炊き」

 玄米が食べたい。けれど浸水時間は取れない、という方におすすめなのが「びっくり炊き」という方法です。

「秋田で江戸時代から伝わっている伝統的な炊き方といわれ、一般的な玄米よりふっくら炊けるといわれています」

 それでは、びっくり炊きの手順を追って玄米を炊いてみましょう。
 炊飯器ではなく、炊飯鍋の直火炊きに挑戦です!

1:米をがしがし洗う

 前回の記事で紹介した方法で、玄米を洗います。もみ洗いで玄米の表面に傷を付け、米が水を吸いやすくします。

2:浸水をせずに炊く

 炊飯器の中に洗った米を入れ、水を加えます。水の量は重量比で1.1倍くらいを目安に。
 慣れてきたら、好みで水の量を調節しましょう。

 直火で炊くなら、沸騰までに10分、沸騰してから弱火で10分炊いてください。炊飯器なら「早炊きモード」「白米急速モード」で。
 ここまでは、白米を炊く方法と同じです。

3:炊けたら「びっくり水」を加える

 ごはんが炊けたところで蓋を開け、熱々のところに玄米と同量から1.2倍の水を注ぎ、しゃもじでかき混ぜます。
「びっくり水を入れることで、玄米のロウ層が破れ、お米が膨れるのです」

4:もう一度炊飯!

 火を付けて沸騰まで中強火で。沸騰したら弱火にして10〜15分ほど炊きます。ロウ層が破れ、中のデンプンが水に溶け出すので、蒸気が上がる段階で「おねば」が出てくるのがわかります。パチパチと音がしてきたら水分がきちんと飛んだ証拠。炊きあがりです!

 炊飯器の場合は、再び早炊きモードで炊きます。炊飯器によっては釜の中が熱すぎるとスイッチが入らない場合があります。これはセンサーが働いてしまうためです。少し冷ましてからスイッチを入れることで、2回目の炊飯をすることができます。

5:10分蒸らしてかき混ぜたらできあがり!

 きれいに炊けた状態なら、写真のように「カニ穴」が開いています。蒸らしを終えたら、蓋を開けてしゃもじでよくほぐし、残っている水分を飛ばします。

 びっくり炊きをすると、玄米も白米と同じように膨れます。びっくり水の量でも、柔らかさは変わります。

 前回紹介した標準的な炊き方の玄米ごはんはプチプチした食感が楽しいのですが、白米のようなふっくら感が欲しいときは、びっくり炊きをおすすめします。

 次回は、玄米ごはんを美味しく食べられる料理について伺います。


文・撮影・レシピ◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

お話を伺った方

小野瀬多幸さん

通称「コメ大王」。食味鑑定士の資格を持つお米のプロ。店舗を持たず、ネット通販や出張販売で選び抜いたお米を売る。自前の精米機を持って店頭に立ち、その場で精米したてのお米を対面販売することも。
https://komedaioo.net/

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