コメ大王が語る「玄米」の真実 第1回

玄米の特性を知る!

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白米との違いは?

「実は、お米のワークショップをやると一番よく売れるのが玄米なんです」という小野瀬さん。月に何度か開いているお米イベントやワークショップで、美味しいお米の食べ方を広める活動をなさっています。

「というのも、白米は、お米屋やスーパーで好みの品種のお米が買えますが、玄米は品揃えがさほどありません。その玄米が美味しいかどうかの保証もないのです。私たちがイベントや店頭で販売する際には、きちんと美味しいものをセレクトしていますので、安心して買っていただけるというわけです。もちろん、そこで美味しい炊き方もお教えしていることも大切なポイントです」

玄米はなぜボソボソしているの?

 最近、コンビニでも、レンジアップできるパックで玄米が売られています。玄米は白米に比べると、粘り気がなく、甘みや旨みもあまり感じません。

「味や食感の違いが、精米されていないからだということは、皆さんご存じだと思います。簡単にいうと、お米から籾殻を取り去っただけのものを玄米と呼びます。その玄米の表面を8%〜10%削ったものが白米。削られた部分はヌカとなります」

 お米の構造(下図)を見てみましょう。外側から、黒褐色の固い果皮、薄いフィルム状の種皮、胚乳という層になっているのが分かるでしょうか。この果皮と種皮、そして、成長して芽になる胚芽と呼ばれる部分を取り除いたものが白米です。

「この果皮や種皮は、胚芽や、胚乳の中にたっぷり貯蔵されているデンプンなどを守るために、水をはじきやすくなっています。ここが残っているために、玄米は水を吸いにくく、炊きあがりがふっくらもちもちにならないのです」

 また、種皮のすぐ内側にはデンプン層というものがあります。この部分についても、小野瀬さんはこうアドバイスします。
「白米を洗うと白く濁るのは、デンプン層が剥がれ落ちるためです。ここは、美味しさのもとです。私たちが、『白米を洗う時は、水が透明になるまですすがないように』と勧めるのは、この部分を洗い流してしまわないためです」

果皮や種皮には栄養がたっぷり

 構造が分かると、美味しくお米を食べるには、やはりきちんと精米した「白米」がいいのではと思いがちです。

「玄米は、たしかに果皮や種皮のせいで水を吸いにくいのですが、この部分にたっぷりの栄養素が詰まっているんです」

 日本食品標準成分表2015年版によると、炊いたごはん100gあたりのカロリーは、玄米が165Kcalに対して白米は168Kcalと、ほとんど差がありません。
 けれど、玄米の方がビタミンやミネラルが多く含まれています。ビタミンB群(B1、B2、B6、ニコチン酸、パテントン酸、イノシトール、コリン、葉酸等)は特に豊富で、エネルギーを作り出すための代謝を助けてくれる作用があります。

 また、不水溶性食物繊維は4倍、白米にはほとんど含まれていない水溶性食物繊維も豊富で、食物繊維全体では白米の4.67倍も含まれています。

 厚生労働省のデータでは、成人女性で1日18g、成人男性で21g以上の食物繊維摂取を推奨されています。
 しかし日本人の30代〜50代女性では、不水溶性食物繊維は推奨値の1/3以下、水溶性食物繊維も極めて少ない値しか摂取できてないそうです。白米を玄米に変えることで、食物繊維の摂取量を増やすことができるのです。
 女性に多い便秘も、食物繊維を多く摂取することで改善できるとされています。

 一方で、玄米食のデメリットはあるのでしょうか。
「一番のデメリットは、やはりふっくら炊けたごはんとは違う食感でしょう」と、小野瀬さん。

「胚乳、つまり白米部分が水分を含みにくい構造であることに加え、外側の果皮や種皮は水を含みませんから、白米のようにはなりません。けれど、栄養素も多い玄米は、よく噛んで食べると、口の中でいろいろな美味しさが出てきます」

 そばを例に挙げると、一般的な「せいろ」と、実の外側も含めて製粉した「田舎そば」とでは、後者のほうが濃い味がします。米もこれと同じ。実の外側まで炊いたごはんは、実は滋味深い味わいなのです。

 玄米に関しては、「含まれるフィチン酸が亜鉛や鉄と結合して、貧血によくない」という話があります。玄米に含まれているのは「フィチン」で、すでに玄米中のミネラルと結合しています。
「アブシジン酸が細胞を傷つける」という設もありますが、これもあくまで一学説で、現時点では科学的エビデンスが確立されているわけではありません。

「一番心配なのは、精米しないことで農薬が残留していないか、という点です。けれど、日本の米は厳格な残留農薬基準があります。もしそれでも心配、という方は、特別栽培米という表記のある玄米を選ぶといいでしょう」

「無農薬や減農薬米のほうがいいのでは」と思う方もいるかもしれませんが、日本ではパッケージに「無農薬」と表示することは禁止されています。
 小野瀬さんのいう“特別栽培農産物”は、簡単にいうと、農薬や化学肥料の使用を減らして栽培された農作物のことです。「農薬や化学肥料が、産地で一般的に使用されている量の半分以下」というガイドラインがあります。

「一般的にいう無農薬栽培の場合、『農薬:栽培期間中不使用』または『節減対象農薬:栽培期間中不使用』という表示は許可されていますので、こうした表示のあるものを探してもいいかもしれません」

白米同様、品種で味わいに違いが

スーパーのお米売り場では、さまざまな品種の玄米が揃っていることは少ないですが、お米屋さんならばパッケージされていなくても、頼めば出してくれる場合もあります。信頼できるサイトのネットショッピングで買うのもいいでしょう。

 白米は、産地や品種によって味が大きく違います。これに比べ玄米は、なんとなくどれも同じような味わいというイメージがあります。小野瀬さんは、玄米もやはり品種ごとの違いがあるといいます。

「これは白米の食味チャート(下図)です。味の濃さで“あっさり”“もっちり”、歯ごたえで“しっかり”“柔らか”の指標があり、それぞれに合うおかずも変わってきます。玄米の場合、果皮や種皮があるので、全体にかみしめて食べたほうが美味しくなりますが、品種ごとの特性や差違は、白米と同じと考えていいでしょう」

 どの玄米が自分好みかは人それぞれ。まずは1kg〜2kgくらいのものを買って、自分の好みを探してみましょう。

 次回は、玄米の美味しい炊き方を伺います。


文・撮影・レシピ◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

お話を伺った方

小野瀬多幸さん

通称「コメ大王」。食味鑑定士の資格を持つお米のプロ。店舗を持たず、ネット通販や出張販売で選び抜いたお米を売る。自前の精米機を持って店頭に立ち、その場で精米したてのお米を対面販売することも。
https://komedaioo.net/

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