ひちぎりと薄茶の王道コンビで愉しむ
ひちぎり(亀屋良長)370円 × 薄茶
春の和菓子の主役は「ひちぎり(引千切)」。京都では、ひな祭りにはかかせない上生菓子です。まるで、杓子型の黄緑の柔らかい座布団の上に、ピンク色の花びらのような餡がふんわりと鎮座しているよう。
丸いフォルムと優しい色合いがなんとも愛らしいですね。杓子型の柄が、引きちぎられた形になっているのがその特徴。平安時代から、子どもの幸福を祈願する宮中の儀式の祝儀に用いられた、戴き餅(いただきもち)に由来しているそうです。
ドリンクには、薄茶を合わせて。茶道では、「主菓子」といって薄茶を飲む前に、生菓子をいただく習慣があります。和菓子で口の中に甘みを広げた後に、薄茶の苦みをより一層深めるというのが、粋な楽しみ方です。
コーディネートのテーマは、「シンプル is ベストにちょっと遊び心」。
茶菓子皿にコースターを使用しています。石川県能登の作家グループ・モメンタムの作品で、銅板の濃淡のある深みのある色合いが、生菓子の色鮮やかさをより一層引き立ててくれます。
抹茶碗は、京都の陶芸家・加藤美樹さんの作品。イッチン描きという繊細な手法が施された磁器は、凛とした品のある器です。紺色と抹茶の黄緑の色の対比は、心地よい安心感がうまれますね。
桜が花開く春をイメージして
練り切り桜(亀屋良長)370円 × 薄茶
和菓子は、「練り切り 桜」です。
ふくよかな桜の花と、しべの上に小さく乗った黄色い花芯がワンポイント。
練り切りとは、白あんに求肥(ぎゅうひ)を加え、白あんを主原料とする生菓子のことで、春夏秋冬を和菓子を表現するために使われることが多いです。
桜ひとつとっても、お店によって少しずつ色や形が異なるので、見比べてみるのも季節の楽しみの一つです。
自宅で薄茶なんて難しそう……と思われた方、大丈夫です。形式にこだわらず、スタイルとして楽しんでみてください。
茶筅(ちゃせん)がない場合は、代替え品として泡立て器やスプーンで抹茶粉を混ぜることもできます。興味が湧いてきたら、少しずつ道具を増やしていけばOK。まずは身の回りにあるもので気軽にトライしてくださいね。
テーマは、「桜が花開く季節にみられる、自然の情景」。
ターコイズブルーの茶菓子皿は、桜の葉に見立てて、桜の練り切りと統一感をもたせています。抹茶碗は、愛媛県砥部の龍泉窯の作家・池田麻人さんの作品。川の流れを想像させる柔らかく勢いがあります。そして、漆器塗りのお盆は、土台を支えてくれる大木のイメージで、和菓子と薄茶の間をつないでくれます。
丸・丸・丸を積み重ねて和菓子のピラミッド
京都の老舗「亀屋良長」の代表銘菓「烏羽玉(うばだま)」。明治時代から引き継がれるこのお菓子は、黒糖と餡子(あんこ)の上品な甘さが特徴です。つるっとした餡玉を一口で頬張るのにぴったりのサイズ。優しい甘さに、ケシの実のちょっとした香ばしさがアクセントになっています。
合わせたドリンクは、国産紅茶である「和紅茶」。今回は、愛知県豊橋市で作られている「べにふうき・とよかブレンド」茶を使いました。渋みが少なく、お茶自体の甘みが特徴。ちょっと焼き芋のような香りとクリアな甘さで、和菓子の甘みとの相乗効果でいただくことができます。ローズのような花の香りもプラスされて、ホッとするひと時を演出します。
コーディネートは、和菓子の形や和紅茶の色の良さを活かしたものに。4つ重ねて立体感を出し、五角形の茶菓子皿で形のユーモアさを強調しています。
茶菓子皿は、清水焼の作家・川瀬満之さんの作品です。和紅茶は、その色と香りを味わえるように、耐熱ガラスの茶海(ちゃかい)をセレクト。竹あじろ貼りの漆塗り盆を敷いて、和の雰囲気をプラスしています。
烏羽玉(亀屋良長)450円/ 6個入り × 和紅茶
甘いanimalと渋めのワインが好バランス
animal(UCHU wagashi)710円/ 6個入り × 赤ワイン
ゾウやしろくまの形がキュートな落雁(らくがん)は、UCHU wagashiの「animal」。それぞれの動物はココア味とミルク味に分かれ、和のテイストにユーモアがプラスされた楽しい一品です。
落雁には、もち米や麦、豆の粉が使われるのが一般とされますが、UCHU wagashiの落雁には、純日本糖である和三盆糖をふんだんに使用。そのふくよかな甘みが特徴です。
ドリンクには、赤ワインをチョイス。口の中に入れるとほろほろと溶けるこの落雁は、ワインと相性抜群で、甘さに深みが加わっていきます。果実感のあるフルーティなワインはアペリティフ(食前酒)に、タンニンが含まれボディがしっかりしているワインは食後の一品など、お好みやシーンに合わせてアレンジしてみてください。
茶菓子皿は、前出のコーディネートでも使用した清水焼の作家・川瀬満之さんの息子である川瀬竹秋さんの作品。形のシンプルさと柔らかい色合いが美しい背景となり、和菓子が絵のように浮き上がります。柄や色が際立たない食器にすることで、落雁の形を引き立てたコーディネートとなっています。
いかがでしたでしょうか?
季節感のある和菓子とドリンクや器を合わせることで、普段のテーブルが一気におもてなしのシーンに早変わりします。和菓子を主役に、春のイメージを膨らませて、色々な組み合わせを楽しんでみてくださいね。
(第2回に続く)
※お菓子はすべて税抜き価格(2020年1月現在)
文・コーディネート◎小倉千明
撮影◎宇野真由子
撮影・取材協力
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