家の中を暖かくすると、長生きになる
「健康な家づくりのポイントの1つ目は、冬に暖かいこと。私たちの体温が36~37℃と高いのは、免疫力を高めておくためです。例えば、がん細胞は正常な細胞よりも熱に弱く、35℃でもっとも活性化するため、低体温の人はがんになりやすいのです。
大切なのは、体を冷やさないようにすること。そのためには、家の中を暖かくするのがいちばんの近道。逆に、夏には涼しさを保つことが、快適な眠りを得るためにも必要です」と星さん。
実際、家の中を暖かくすると、脳血管障害や心疾患、糖尿病、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの病気が減ることや健康で長生きになることが、星さんたちの調査で分かっています。
冬の室温は18℃以上に保つことが大切。そして、夏はいくら高くても27~28℃を上回らないようにしましょう。
家の中を暖かくすると、さまざまな病気が減り、健康で長生きになる。
約2万人が寒い家で命を落とす
ふだん過ごす部屋が暖かくなったら、他の部屋の温度にも配慮したいもの。温度較差は、体に大きな負担を与えるからです。
「お風呂やトイレに行ったときの急な温度変化により、国内で年間1万9,000人が命を落としています。交通事故の死者数が年間約4,000人ですから、じつにその4倍以上です。温度較差の大きい家は体に大きなダメージをもたらし、生死にも関わるということを知ってほしいと思います」と星さんは語ります。
家の中の温度は、なるべく差が出ないように工夫することが大切。脱衣所には温風ヒーターを置いて、湯船に入る前に体温を上げておくようにしましょう。お風呂のフタを開けて、浴室を暖かくしてから湯船に入るのも1つの方法です。また、トイレも寒くならないように、温風ヒーターなどを活用して温度を上げるようにしましょう。
火事や火傷などの危険性も考慮し、温風ヒーターは熱源が露出していないもの、転倒すると自動的に切れるものを選ぶようにしてください。
湿度は高くても低くても健康に悪い
温度だけではなく、湿度を適切に保つことも大切。湿度が高すぎるとカビやダニなどの発生を招き、逆に乾燥しすぎても風邪を引きやすくなるなど、どちらも悪影響があります。
「私たちは湿度と要介護の関係についての調査も行っています。湿度が低い乾燥した施設に入所している人と、寒い施設に入所している人を追跡調査した結果、乾燥した施設に入所している人のほうが寝たきりになる確率が高ったのです。
口の中にはたくさんの菌が生きていますが、死期が近づいた人間の口は渇いているものです。逆に、口の中がみずみずしければ細菌が活性化し、おいしく食事ができて、誤嚥(ごえん)もないということがデータで証明されています。
そのため、特に冬場は、調湿機能のしっかりした家に住むことが不可欠と言えます。湿度は、高くても70%を超えないように、低くても40%を切らないように気をつけてください。50~60%をキープするのがベストでしょう」
健康長寿には、空気の質も大切
住まいに使われている素材にも注意しましょう。接着剤や塗料などに含まれる各種の化学物質とシックハウス症候群、化学物質過敏症、アレルギー性疾患との関係があることが研究から分かってきています。
「例えば、部屋の内壁です。日本の住宅の多くは内壁がビニールクロスですが、ビニールクロスに使われる接着剤はシックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす可能性があります」と星さんは警鐘を鳴らします。
星さんが提案するのは、ビニールクロスの上からでよいので、自然素材である漆喰や珪藻土を自分で塗ること。漆喰や珪藻土は呼吸する壁とも言われ、湿気を吸ったり出したりして部屋の湿度を調整する機能とともに、有機溶剤濃度を低下させる機能もあるのです。
「LIXILのエコカラットを活用するのもおすすめです。エコカラットは調湿機能を持っており、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドやトルエンなどの有害物質を吸着し、低減する機能もあります」
植物には、部屋の空気をきれいにする効果も
もう1つ、星さんが提案するのは、緑の植物を暮らしの中に取り入れること。夏の暑さ対策として、家の外壁につる性植物を這わせる方法や、ベランダに緑のカーテンをつくる方法などは、気軽にできて大きな効果があります。
「植物は暑さ対策以外にも、きれいな花を咲かせて楽しませてくれたり、香りを漂わせてくれたり、たくましい生命力で感動を与えてくれたりします。室内で育てられる植物にもさまざまな種類があり、部屋の空気をきれいにしてくれる効果も期待できます」と星さん。
この連載第2回では、病気や寝たきりにならず、元気で長生きできる「家」のポイントをご紹介してきました。しかし、今回ご紹介したのはあくまでもハード面でのポイント。次回は、ソフト面でのポイントについて星さんに話を聞きます。
(第3回に続く)
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