今回は5種類の調理法(五法)をまんべんなく採用したほか、野菜、肉、魚、豆類、穀類など多彩な食材を使っているのも特徴。とくに今回紹介する「主食」のさつまいもと栗のおこわは、秋の味覚をたっぷり味わえる一品です。ホームパーティのときだけでなく、秋になったら毎年食べたくなる味わいです。
主食 さつまいもと栗のおこわ
~秋の味覚が満載! ほんのり黄色でもっちりおいしい~
もち米を使ったおこわです。もち米は、水加減や浸漬時間に気を遣わなくてはならず、「ちょっとハードルが高い」と思う人もいると思いますが、「そんなに難しく考えなくても大丈夫」と、料理研究家の時吉真由美先生。
今回は、もち米を2.5合、通常のうるち米を0.5合、合わせて3合分を炊きました。
「2種類の米は、水ではなく、お湯で研ぎました。炊くときも、ぬるま湯を使用。お湯を使えば吸水が早く、すぐ炊けるからです。時間のないときの裏ワザとして覚えておくと便利です」
なお、炊飯時間は、炊飯器によって「おこわモード」もあるので、ご自宅の炊飯器によって調整してください。
「もち米よりも手間がかかるのは栗のほう。渋皮をむいたり、あく抜きしたりと、いくつか工程を踏まなくてはなりません。ですので、市販のむき栗や甘露煮(真空パック)を使ってももちろんOKです。甘露煮の場合、甘過ぎてしまうことがあるので、甘いのが苦手な人は砂糖を洗い流すほうがいいかもしれません」
栗は「温」の性質をもっているので、体を温め、血行を促進します。さつまいもは腸の働きを活発にするため、便通に効くのはよく知られています。ただし、食べ過ぎると、胃液が過剰に分泌され、腸にガスがたまりやすくなるので、ほどほどにしておきましょう。
最後に散らす黒ごまにも、小さいながら大きなパワーがたっぷり。白髪や抜け毛の予防、便秘の改善、美肌効果、強壮作用などさまざな効能があります。
とくに炒って使うと、抗酸化作用が強化され、老化防止が期待できそうです。ごまにはほかに白ごま、金ごまがありますが、一番薬効が優れているのは黒ごまとされています。
さつまいもと栗のおこわ
【材 料】 | 【分 量】 |
---|---|
もち米 | 2.5合 |
米 | 0.5合 |
さつまいも | 150g |
栗 | 4個 |
水 | 540ml |
酒 | 大さじ2 |
塩 | 小さじ1/2 |
黒ごま | 適量 |
【つくり方】
- さつまいもはいちょう切りにし、水にさらしてあく抜きして、水気を切る。
- 栗は40度程度のぬるま湯に15分ほどつけて皮と渋皮を剥いて、水にさらしてあく抜きし、水気を切る。
- もち米と米は研いで炊飯器に入れ、分量の水・酒・塩を加えて軽く混ぜ、さつまいもと栗をのせ、炊飯する。
- 炊き上がりを混ぜ、黒ごまをふる。
デザート ココナッツゼリー・マンゴーソース、ラ・フランスの赤ワイン煮添え
~なめらか、クリーミー、カラフルで女子会にぴったり!~
「デザートには、オリエンタル風にココナッツゼリーとマンゴーソースという組み合わせを用意しました。白と黄色のコントラストもステキですが、おもてなしということで、洋なしの赤ワイン煮を添え、ミントを飾って華やかさを演出しました」
ぷるんとした舌触り、ほのかなワインの香りのデザートは、満腹でもおかわりしたいくらいです。
ゼリーをつくる際、粉ゼラチンを直接、溶液(今回は一煮立ちさせたココナッツミルク)に入れてしまうと溶けにくいので、事前に少量の水でふやかしておきます。
「ココナッツミルクは、牛乳または豆乳、生クリーム、砂糖と合わせて一煮立ちさせますが、このとき沸騰させないように注意しましょう。豆乳を使う場合は成分無調整を使用してください。洋なしの赤ワイン煮は、できれば前日につくっておくと、色がしっかり染みて美しいルビー色になります」
「ただ、全体がまんべんなく染みていなくても、カットしたときムラがあるほうが、グラデーションが楽しめますよ。洋なしを漬けた汁は、ゼリーに使ってもいいですね」
「マンゴーは最近ではスーパーでも手軽に購入できますし、缶詰もあります。ソースをつくるには、いずれもミキサーにかける必要がありますが、それが手間と感じる場合、市販のマンゴーソースを使うのも手です」
マンゴーソースをオシャレに演出するならば、クッキングシートで「絞り袋」をつくってみましょう。シートを三角形に切ってからくるくると巻いて、中にソースを入れて、好きな模様を描いて完成です。
ココナッツゼリー・マンゴーソース、ラ・フランスの赤ワイン煮添え
【材料/直径24cmタルト型1個分】
【材 料】 | 【分 量】 | |
---|---|---|
水 | 50ml | |
ゼラチン(粉) | 10g | |
マンゴー(缶) | 1/3缶 | |
洋ナシ | 1個 | |
赤ワイン | 100ml | |
はちみつ | 大さじ2 | |
ミント | 適量 | |
[A] | ココナッツミルク | 150ml |
牛乳または豆乳 | 200ml | |
生クリーム | 50ml | |
砂糖 | 50g |
【つくり方】
- 水に粉ゼラチンを振り込み、浸しておく。
- 鍋にAを入れ、一煮立ちさせる。火を止めて「1」を加え煮溶かす。粗熱を取り、型に流し入れ冷やし固める。
- マンゴーは缶汁ごとミキサーにかけ、ソースを作る。
- 洋ナシは4等分に切り皮をむいて鍋に入れ、赤ワイン、はちみつを加える。紙蓋をして一煮たちさせて、汁につけたまま冷まし、食べやすくスライスする。
- ココナッツゼリーに洋ナシ、マンゴーソースを彩りよく盛り付け、ミントの葉を飾る。
喜ばれる「おもてなし料理」とは?
「おもてなし料理で気をつけたいのは、みな同じような味つけにしないこと」と、時吉先生は語ります。
「日本人はどうしても醤油をよく使いがちですが、醤油味のほか、塩味、お酢味、味噌味など、日本古来の調味料を使うことでバラエティに富んだ味つけをすることができます」
また、料理は段取りが命。とくに大勢を招く場合、いかに段取りよく準備ができるかで、慌てずにじっくり調理をすることができます。
そこで知っておいてもらいたいのは、「キッチンに立って最初にやるべきは、お湯を沸かす」ということ。乾物を戻したり、調理用具を洗ったりと、何かとお湯は使うからです。
「次に炊飯など時間のかかるものから取りかかります。冷めても大丈夫なもの、温め直しがきくものも先に作っておくといいでしょう。これらのコツをふまえて、秋の食材を楽しく料理してみましょう!」
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■お話を伺った方
時吉真由美さん
料理研究家、cooking Clocca代表。30年以上にわたり料理教室講師を務める。また、テレビ・出版物などの料理監修、フードコーディネートも多数。
参考文献
『からだに役立つ薬膳・漢方の食材便利帖』幸井俊高監修、学研
『旬を食べる 和食薬膳のすすめ』武 鈴子著、家の光協会
文◎江頭紀子 撮影◎神出 暁