秋の薬膳おもてなし料理 [第3回]

見た目に満足、栄養たっぷり。「五色」のスープの作り方

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健康レシピ季節

 今回は「スーパーで手に入る食材で薬膳風のおもてなし料理」をテーマに、
「旬の食材を使う」
「五色(見た目)を意識する」
「油はあまり使わずヘルシーに」
 ということに配慮して、料理研究家の時吉真由美先生にメニューを組み立てていただきました。

「これらの中でもポイントとして意識していただきたいのが、五色。これを意識するだけで、ビジュアル的にも美しい食卓になるからです。それに、さまざまな色の食材を取り入れることで栄養バランスもよくなり、体が喜ぶ効能を高めることができます」

「季(気)がきく食卓」を囲みながら、気のおけない仲間たちと秋の味覚を楽しんでください。

汁物 五宝湯

~鮮やかな彩りを楽しむ滋味たっぷりスープ~

 中華料理の基本数は偶数です。餃子は1皿6個が基本ですし、「八宝菜」という料理名もあります。これは、中国では偶数が縁起がいいとされているから。人を招いてのおもてなしも、メニュー点数は偶数がいいとされています。(ちなみに八宝菜は「8種類」という意味ではなく、「たくさんの具材」という意味です)

「しかし今回はあえて、5種類の具材を使ったスープをつくりました。うずら卵以外の食材は、切り方をすべて千切りにすることで、完成時の見た目が美しく揃います。また、同じ大きさなので火の通りも一緒。つまり、早く仕上がり、食感も同じで食べやすいのです」

「白」というと豆腐がおなじみですが、「今回は高野豆腐を使いました」と、時吉先生。
「なぜなら、スープに入れても型崩れせず、食感がしっかりあるからです」

 高野豆腐は豆腐を凍らせ乾燥させた保存食品ですから、栄養が凝縮され、タンパク質をたっぷり含みます。夏バテしたからだに体力をつけるには、タンパク質が欠かせませんから、この時期にぴったりの食材といえます。

 高野豆腐などの乾物類は、戻すのに時間がない場合、水ではなくお湯で戻すと早く戻せます。戻したらしっかり絞って水気をとり、横にスライスしてから千切りにします。

「黒」のきくらげも、低カロリーでタンパク質や食物繊維が豊富。血液をきれいにして、婦人科系疾患など血液に関する病気にも効果があるとされ、女性は積極的にとりたい食材です。

 スープの味付けに使う醤油は、多すぎず、うっすら色がつく程度に。そうすれば、五色が美しく引き立ちます。

五宝湯

【材 料】 【分 量】
高野豆腐 1丁
セロリ 1/2本
赤ピーマン 1個
きくらげ(もどしたもの) 4個
うずら卵(水煮) 4個
鶏ガラスープ 400ml
醤油 小さじ2
塩・こしょう 各少々

 

【つくり方】

  1. 戻した高野豆腐・セロリ・赤ピーマン・きくらげは細切りにする。
  2. 小鍋に鶏ガラスープを温め、「1」とうずら卵を加え、醤油・塩・こしょうで味付けし、器に盛る。

主菜 秋鮭ときのこの蒸し物~黒酢ソース

~旬のうまみも香りも一緒に包み込む~

「秋鮭&きのこ」という、秋の味覚を包み込んだ主菜にふさわしい一品です。鮭はアンチエイジングに効き、きのこ類は老廃物の排出を促すので、この組み合わせは老化防止が期待できそうです。

「まず、鮭の下に長ねぎとしょうがを敷きますが、これは魚の臭み消しのため。調理をすると、ねぎには鮭ときのこのうまみが移るので、食べてもおいしくなります。しょうがもほっくり柔らかく仕上がり、辛み成分がやわらぐので、そのまま食べられますよ」

「アスパラは本来、春の食材ですが、今回は色味と薬効を考えて添えました」
 消化吸収を促すほか、体に潤いを与え、余分な水分を排湿してむくみを解消する食材です。

 材料をすべて乗せたら、酒と塩を振り入れます。酒をふるのは、臭み消しのほか、ふっくら仕上がるから。生鮭ではなく塩鮭を使う場合は、塩は控えめにしましょう。

 鮭はクッキングペーパーで包みますが、そのとき、両端を折るだけでなく、たこ糸でしばってみてください。
「これが、おもてなしポイントを高めるコツ。見た目も華やかになりますし、糸をほどいて開封するという動きが、イベント性を高めてくれます」

 このメニューのポイントは、はちみつ入りの黒酢ソース。酢が血行を促進し、はちみつの高い栄養を活かすので、夏バテなど疲労回復に効きます。
 大根おろしが入っているのもポイントです。ボリューム感が出るだけでなく、呼吸器官や消化器官を整える効能が期待できます。
 この黒酢ソースは、ゆでたササミやエビ、生ホタテなどに使ってもおいしくいただけます。

秋鮭ときのこの蒸し物~黒酢ソース

  【材 料】 【分 量】
  秋鮭 4切れ
  大さじ4
  少々
  長ねぎ 1本
  しょうが 1片
  えのき 1パック
  しめじ 1パック
  アスパラ 4本
  クコの実 大さじ2
  松の実 大さじ2
[A] 黒酢 大さじ2
大さじ2
ガラスープの素 小さじ1
醤油 大さじ1
長ねぎ(みじん切り) 大さじ3
はちみつ 大さじ1
大根おろし 大さじ3

 

【つくり方】

  1. 長ねぎは斜め薄切りに、しょうがは薄切りにし、えのきとしめじは石づきを除いてほぐし、アスパラは4~5cm長さに切る。
  2. クッキングシートに長ねぎとしょうがをしき、秋鮭をのせ、えのき、しめじ、アスパラを添え、全体に酒と塩をふり、クコの実・松の実をちらし、クッキングシートで全体を包む。(4つ作る)
  3. フライパンに「2」を並べ、水(大さじ3程度)を加え、蓋をして中火の弱で約10分、鮭に火が通るまで蒸し焼きにする。
  4. Aを混ぜて黒酢ソースを作る。
  5. 「3」を器に盛り付け、「4」を添える。

まず、長ねぎの半分くらいの深さまで斜めに切り込みを入れます。

反対側にひっくり返して、同じく斜めに切り込みを入れます。その後に端から輪切りにすれば、素早くみじん切りができあがります。

★ワンポイントアドバイス ねぎの時短みじん切り

「みじん切り」は案外と時間がかかります。スライサーを使う人もいるかもしれませんが、包丁で長ねぎをみじん切りにする場合の早ワザをご紹介しましょう。

■お話を伺った方

時吉真由美さん

料理研究家、cooking Clocca代表。30年以上にわたり料理教室講師を務める。また、テレビ・出版物などの料理監修、フードコーディネートも多数。

参考文献
『からだに役立つ薬膳・漢方の食材便利帖』幸井俊高監修、学研
『旬を食べる 和食薬膳のすすめ』武 鈴子著、家の光協会

文◎江頭紀子 撮影◎神出 暁

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)