「正しい摂取」で病気知らずに
食は命の源です。「医食同源」という言葉があるように、正しく摂取すれば、病気知らずの体になります。なぜなら私たちの体は「食べるもの」でつくられているから。食材にはそれぞれ性質や効能があり、それらをうまく料理に活かすことで、美や健康に役立てることができます。
「簡単にいえば、それが薬膳料理です。もう少し補足すれば、食べる人の体質や体調、自然環境に合った食材を使った料理といえます」
こう教えてくれたのは、料理研究家の時吉真由美先生です。
薬膳には中国三千年以上の歴史に基づいた独特の考え方があります。中国の伝統医薬がもとになっているので、「難しそう」「材料が高そう」と思われがちですが、実は、「薬膳」は身近にあります。
体を冷やす冷やっこは、夏におすすめの料理。しかし冷やしすぎることのないよう、体を温める効果があるねぎ、しょうがを添えて食べることが一般化している。
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たとえば、
「ねぎやしょうがは体を温める」
「にんにくは疲労回復に効く」
「刺身のつまの大葉や大根には殺菌効果がある」
などといったことは、多くの方がご存じだと思います。
また、冷やっこには、ねぎやしょうがを添えますが、これにも薬膳的な理由があります。体を冷やす食材である冷やっこだけでなく、体を温める効果があるねぎ・しょうがを一緒に摂取することで、バランスをとっているのです。
「これは、薬膳の基本のひとつである“陰陽”という考え方に基づいたものです。この考えでは、すべてのものごとは相反する陰と陽で成り立っていて、あらゆるものはお互い助け合い、抑制しながらバランスをとっていると解釈しています。このバランスがくずれると、病気になってしまう。それが食材にもあてはまるのです」
ですから、その食材が体を「温めるか」「冷やすか」を知っているだけで、十分に日々の料理に活かせます。
こんなふうにちょっとした知識を持っていれば、ナツメなどの特別な漢方食材を買わなくても、自宅で手軽に“薬膳風”料理を楽しめます。
薬膳にも通じる和食の「五味・五彩・五法」
時吉先生は、「和食のお膳を用意するときは五味・五彩・五法を基本にしている」と話します。
おなじみの幕の内弁当にも「五彩」は取り入れられている。
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「五味は、甘・辛・酸・塩・苦の5つ。薬膳では、酸・苦・甘・辛・鹹(塩辛さ)が五味です。五彩は赤・白・黄・緑(青)・黒を指します。幕の内弁当や松花堂弁当を思い浮かべてみてください。白いご飯に黒ごまが散らしてあったり、煮物には、インゲン豆、かぼちゃ、にんじんなど、色とりどりの野菜が入ったりしていますよね。これこそ五彩の法則にのっとった料理の代表例といえます」
「献立に悩んだら、とりあえず、この5色を揃えるようにしてみてください。そうすれば栄養バランスも自然にとれますし、何より見た目がきれいなので、食欲をそそります。
最後の五法は調理の仕方で、“生・焼・蒸・煮(炊)・揚”です」
おもてなしポイントは「色彩」と「切り方」
「今回は単なる薬膳料理ではなく、秋の食材をホームパーティで楽しめる“おもてなし料理”として組み立てました。おもてなしとは、相手を思いやり、相手が楽しく過ごす時間を提供すること。料理の場合、見た目が大きく影響します」
「ただ、豪華料理であればいいというわけではなく、色の使い方がポイントになります。五色を意識して料理をすれば、食卓が華やいで、お客さまが『おいしそう!』と喜ぶに違いありません。もしも色が足りなければ、テーブルクロスや飾り花で色を補足してみましょう。食卓が明るくなり、いい“気”が流れるようになります」
もう一つ心がけたいのが食材の「切り方」だと、時吉先生。
「いくら豪華な食事でも、食材が大きすぎたり小さすぎたりしてお箸でつかみにくいと、相手は困りますよね。食べやすさを考えて、ちょうどいい大きさに切るなどの心遣いを大切にしたいものです」
「ちょうちょ」の形に切った大根やにんじんで彩りをプラス。
欲をいえば、この機会に「飾り切り」にチャレンジしてみてもいいかもしれません。今回、副菜の「里芋だんごのとりそぼろあんかけ」の仕上げに、大根とにんじんを「ちょうちょ切り」にしてあしらいました。切り方は料理本やインターネット上で紹介されているので、参考にしてみてください。
「こうした美しい切り方は、料理の見た目を引き立てます。『どうやってつくったの?』などと話題にもなり、食卓がより楽しくなるでしょう」
また、時吉先生は料理をするとき、「季(気)がきく食卓」になることを目指しているそうです。
「“季”は季節のこと。つまり旬の食材を料理します。旬の食材は栄養が豊富でおいしいですし、お財布にもやさしいのです。
そして“気”は食べる人への気配り。先にお伝えした“おもてなし”と同じ意味です。皆さんもぜひ、意識して取り組んでみてください」
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