今回座談会に参加してくださった方
Aさん
リフォームショップマネージャー。25年のキャリアを持ち、依頼主の立場に立った安心・丁寧なマネジメントに定評がある。
Bさん
リフォームショップマネージャー。一級建築士としての経験と知識を生かして、暮らしやすさを第一にした多彩なプランを提案している。
Cさん
リフォームショップ勤務後、リフォームコンシェルジュも経験。さまざまなリフォーム希望のお客さまの相談にのっている。
――希望するリフォームが、その方の生活スタイルに合ってないというときも、お客さまに伝えますか? たとえば、物が多いのに収納が少ないとか。
Bさん
私の場合は伝えますね。ただ、物が多いかどうかって、ご本人は自覚されていない場合が多いんです。他人と比較する機会ってあまりないので。
Aさん
まさにそう。ご要望を伺うと、明らかに収納が足りてないというケースはよくあります。
Bさん
整理整頓が苦手な方が、リビングから丸見えのフルオープンタイプのキッチンを希望された場合にも「大丈夫ですか? 毎日きれいにするは大変ですよ」と率直に伝えますね。それでもいいとおっしゃればご要望には応えます。でも、住み始めてから、「やっぱり大変だったわ」と言われることもあります。
Aさん
引き渡したときは当然すごくきれいで、ご本人も「片付け、頑張ります」と張り切っているけれど、1ヵ月後に定期点検で伺うと、昔の家の状態に戻っている方もいますね。
Cさん
理想のプランを叶えるときでも、ご自身の性格や暮らし方のクセを少し考えてみると、より快適な住まいになると思いますね。
Bさん
うちの会社では専門家を呼んで、整理術のセミナーを開いていますよ。そのときに、片付けやすい収納もご紹介する。リフォームを機に、片付け上手になりましょうという企画なんです。
Aさん
すごくいいですね。
設備・建材の色決めはお客さまの仕事
――ところで、お客さまからの相談で困る事柄はありますか?
Bさん
悩むのは色味の質問ですね。「どれがいいですか?」とお客さまにたずねられることもあるのですが、それは好みの問題にもよりますね……。
Aさん
そういう方は、永遠に迷ってしまうんですよね。だから、「私だったらこれですね」とか、「どんな雰囲気がお好きですか」とか、選ぶヒントになるような返答を心がけています。洋服を選ぶときと一緒で、背中を押してほしいだけということもありますし。
Cさん
小さな色見本や写真だけでは想像ができず、迷っているパターンもあるかな。その場合はショールームで実物を見ながら相談すると、比較的決まりやすいです。
Bさん
住宅設備の選択については、好きな色だけでなく、汚れが目立たず、お手入れがしやすい等、使う場所や全体の雰囲気といったこともポイントに選ぶといいですね。もちろん、お手入れよりも色や質感を優先したいという方もいらっしゃいますが。
Cさん
もちろん、最終的に選ばれるのはお客さまご自身です。「ちょっと暗かったわ」「やっぱりこの組み合わせはおかしかったわ」と言われるお客さまもいらっしゃいますが、「私が選んだもの」と気に入っていただいていますよ。
――システムキッチンなどの住宅設備もたくさんあるので迷ってしまいそうですよね 。
Cさん
住宅設備については、デザイン、色味、機能で選ぶのが基本ですが、それらに加えて長く快適に使えるかどうかを考えて選んでほしいなと思います。たとえば、レンジフードのスイッチが高い位置にある場合、今はよくても、高齢になったときに手が届かなくて不便を感じるかもしれない。そういうことって、意外に意識が向かないんです。
Aさん
確かに、住んでいる家をリフォームする方は40~50代が多いので、老後の暮らしまで考えておきたいですね。たとえば、ご自宅をフルリフォームするなら、将来手すりがつけられるよう壁に下地を入れておくとか。ご提案はするんですが、「そのときになったら考えます」と言ってコストをおさえたい方が大半なんです。
Cさん
下地を入れておかないと、将来、必要になったときに、また大かがりな工事が必要になってしまいますもんね。
Aさん
現物のしっかり確認をしつつ、プロのアドバイスにも耳を傾ける。それが後悔しないリフォームの秘訣だと思います。
要望はできるだけまとめて伝える
Cさん
失敗談とは違いますが、リフォームの要望はすべて最初に言っていただけるとスムーズですね。キッチンのリフォームを依頼されてプランニングを進めていたところ、洗面所の水栓が使いにくいとか、外灯が壊れてつかないとか、あとから要望が追加されることもあります。
事前にお伝えいただくと、現地調査は1回で済みますが、あとから言われるとそのためにもう一度ご自宅にうかがわないとならない。当然、手間がかかるので料金も変わってしまいます。あらかじめイメージを伝えていただければ、こうした二度手間、三度手間を避けられるので、お互いのためにもいいと思います。
Aさん
工事中に言われるのも避けたほうがいいですよね。特に、職人さんに「ここを直して」と、その場で追加工事を頼むのはやめたほうがいい。
Cさん
職人さんは現場監督の指示で動き、その現場監督に依頼をするのは一般的にリフォーム会社です。だから、現場の人たちに直接要望を伝えても、直していいかは判断できないんですね。「伝えたのにやってもらえなかった」といった結果になりかねないのです。
Bさん
「ついでに直す程度であればカンタンに済む」と思っている方も多いのですが、それも勘違い。たとえ小さな修繕でも、基本的に費用はかかりますのでしっかりと打ち合わせをさせて頂きたいですね。
Aさん
もちろん、できることはやるので、もし追加の依頼があったら、まずはリフォーム会社の担当者に言ってほしいですね。
Cさん
依頼する場合、タイミングもありますよね。水道屋さんが帰ってから、水道に関わる工事を依頼されても困ってしまいます。
Bさん
それ、よくあります。電気工事の人が帰ってから「コンセントを増設してほしい」とか。そうなると、もう一度、電気工事の人に来てもらわないとなりません。そのぶん新たに工事代がかかるので、工事費は数千円では済まなくなります。「こんなに高かったの」と、驚く方もいました。
――では、無事に工事が終わったとして、引き渡し前後で気をつけたほうがいいことはありますか?
Aさん
リフォームは次世代住宅ポイント制度や減税制度などの対象になる場合があるので、フルに活用したいですよね。お客さまはご存じないことが多いので、できる限り伝えるようにしています。
Bさん
LIXIL製品を設置した場合、「リクシルオーナーズクラブ」に登録すると、メーカー保証が2年から5年に無料で延長される商品もあるので、それもご案内していますね。登録料も無料なのでお得ですよね。
Aさん
あと、引き渡し後には、最終的なリフォーム内容の詳細をもらって残しておくこともお薦めしたいですね。見積書などにも詳細は書いてありますが、途中で変更した場合、なにをどう変えたのは記録されないこともあるので。それにプラスして、工事中の工事現場の写真ももらっておくといいですね。
Cさん
確かに、どんなリフォームをしたのか履歴が残っていると、次にリフォームするときの参考になります。将来、クロスや床材などが廃番になっていても、品番がわかばかれば後継の製品がつかめるし。
Bさん
間取り変更した場合、変更前と変更後の図面をもらえるはずなので、これも一緒に保管しておけば、もともとどこに壁があったのかも一目瞭然。
Aさん
リフォーム履歴が残っていることは、売却するときもセールスポイントの一つになると思うんです。もっとも、仕様書などを改めて作成するのは手間がかかるので、なかには嫌がる業者もあるかもしれません。そう考えると、リフォームはやはり業者選びが一番大事といえますよね。
堅実かつストレスのないリフォームをするには、やはり業者選びが肝心ということなのですね。本日は貴重なお話をくださり、ありがとうございました。
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