家計管理に求められることとは
「家計管理の原則として、『月の支出が手取り月収を上回った状況ではやりくりが難しい』ということを、まず認識してください」と井戸さんは言います。
現在の収入に比べ、支出が多すぎるからこそ、残業代やボーナスなど、いわゆる「不安定なお金」に頼る必要性が出てきてしまいます。
「家計を見直すことで出費を抑え、貯蓄を増やしていくことを考えていきましょう。そのためには、月ごとの収入と支出を正確に把握することから始めます」
家計の見直しは、次のポイントに気をつけて行います。
「ただやみくもに節約をするのは、長続きしません。自分の働き方のスタンスや収入を、1年単位など中長期的な視点で把握しておくことが必要です。現在はコロナ禍ということもあり、収入増は見込みにくいタイミングです。数年後の収入はどう変わるのか、貯蓄はどうするのかといったことを、平時より割り引いて考え、動いていきましょう」
現状だけではなく、将来まで見据えて考えていくことが大切ということですね。
「今はステイホームが増えて、交際費等が減っている人も多いのではないでしょうか。そこで浮いたお金は、『これから豊かに生きていくための勉強代にあてること』『貯蓄していくこと』、この2つに使いたいところです」
また、春という季節は家計の見直しにぴったりのタイミングなのだとか。
「年度初めで区切りとしてちょうどよいのです。仕事や子どもの学校の都合(進学や進級)と合わせやすい点は見逃せません。また、1月から3月の生活を振り返って、今後の計画を立てることができる点も大きいですね」
後回しにせず、今から家計を見直していく姿勢が大事です。
家計見直しのための手順
では、家計管理をどのような手順で行えば上手く進められるのでしょうか。
「途中でくじけずに続けるためには、まず、家計管理の明確な目的意識をもつことです。皆さんほとんどの場合、いきなり出費の見直しから手をつけ始めるのですが、その前に、家計の見直しをするのは何のためなのか、自分や家族がどうありたいのかといったことを、あらかじめきちんと考えておく必要があります」
現在の暮らしだけでなく、将来の家庭のあり方をイメージしておくことが求められますね。
「費用に関しては、家賃やローン、水道光熱費といった固定費(金額が一定のもの)を先に見直し、その次に、食費や娯楽費などの変動費(金額が一定ではないもの)を考えていくとよいです。固定費のほうが、減らした分だけしっかりと結果が出ます」
ただ、予想外の出費などでうまくいかないこともあります。
「そうした場合でも、細かく考えすぎてしまうのはよくありません。家計の見直しを図っても、うまく貯蓄ができる時とできない時があるのは当たり前なのです。自分のストレスにならない程度に、出費の見積もりをしておきましょう」
また、家計管理はある程度期間を区切ることが大切なのだとか。
「計画を立て実行したら、その成果をどこかの区切りでまとめなければ、だらだらと家計管理を続けてしまいます。そうすると、節約している意味がわからなくなってしまうでしょう。気を引き締める意味も兼ねて、一定期間ごとに収支を確認していきましょう」
3か月、半年、1年といったスパンで、それぞれ前年と比較するのがおすすめとのことです。
固定費見直しを徹底
固定費とは、基本的に支払う料金が変わらない費用のことで、住宅ローンや保険料、通信費をはじめ、動画配信コンテンツなどの課金サービスも含まれます。
「固定費として家賃を見直したい、という相談はよくあるのですが、引っ越しは大きな手間やお金がかかります。現在の住宅費が極端に高い以外は、即時の見直しはおすすめできません」
では、どのようなところから取りかかるのがよいのでしょうか。
「まずは普段使っている月額、年額の課金サービスを見直すとよいでしょう。全く使っていないものがあったり、家族間で重複しているものが見つかったりと、目に見えて減ることも多いので、効果は大きいですね。あとは携帯料金も、減額にさほど手間がかからない時代になりました。ローンの組み方や保険料も、見直せば固定費削減につながりやすいのですが、さまざまなケースを調べる必要があるので、こちらは少し時間をかけるべきですね」
課金サービスの見直しを図るにはどうすればよいのでしょうか。
「多くの固定費は、利便性の高さからクレジットカード払いにしている人が多いかと思います。こうした場合は、クレジットカードの引き落とし記録を見るのが一番手軽でしょう。ここから無駄遣いを見つけ、本当に必要か考えた上で、不必要なものを減らしていきます。また、毎月決まった日にちに、銀行の引き落とし金額を確認する癖をつけましょう」
負担の少ないところから無駄な出費を見つけることが重要といえます。
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変動費の節約方法とは
変動費とは、月々の支払う金額が異なる費用です。食費や日常の買い物などが変動費に当たります。効率的に考えて節約していかないと、ストレスが溜まりやすいので注意が必要です。
「出費を減らすには、その買い物が本当に必要かどうか、まず考えてみることです。なんとなく買ってしまうのはNGですね。節約という観点では避けるべき行動です」
買い物にも目的意識が必要ということですね。
「しかし、1円や10円単位で出費を減らすことばかり考えていると、疲弊してしまいます。例えば、数千円~1万円単位でざっくり減らす意識を持ちましょう。万が一無駄遣いをしてしまったとしても、後悔する必要はありません。大切なのは、買ってしまった失敗を意識して、目的意識を新たにしていくことです」
何にお金を使っているのか、じっくり考える機会を持って「出費」に対しての意識を改めれば、家計は良い方向に向かっていくことでしょう。
次回は、より効率的な家計管理について、井戸さんにお話を伺います。
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