異常気象時代の家づくり ─ 水害から家を守る 第3回

新発想、「浸水前提」の住まいとは

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東南アジアの建築から学ぶ

 前回まで、国土交通省が推奨する「かさ上げ」「高床」「囲む」「建物防水」という4つの水害対策についてご紹介してきました。これらの方法はすべて「どのように建物内に水を入れないようにするか」を前提として検討された水害対策だといえます。

 前回まで、国土交通省が推奨する「かさ上げ」「高床」「囲む」「建物防水」という4つの水害対策についてご紹介してきました。これらの方法はすべて「どのように建物内に水を入れないようにするか」を前提として検討された水害対策だといえます。

 しかし、昨今の異常気象による浸水被害の状況を考えると、浸水のリスクがある地域に住んでいる限り、完全に被害を免れるのは難しいといわざるを得ません。
 小笠原さんも「これからは建物が浸水することを前提とした家づくりが必要なのではないか」と話します。

「日本建築学会の提言をみていても、水害に耐える建築物であるとともに、水害からの復旧性能の高い建築物である必要性についても述べています。ある程度の浸水が避けられないなら、これからは『水を排出しやすい家づくり』を考える時代なのかもしれません」
(参考資料(pdf):日本建築学会「提言 激甚化する水害への建築分野の取組むべき課題~戸建て住宅を中心として~」

 水を排出しやすい家づくりのヒントとして、「たびたび浸水被害に見舞われる東南アジアの事例が参考になるのでは」と小笠原さんは考えています。

 たとえば、水害の多いバングラデシュでは、ピロティ式の建物が災害時のシェルターとして活用されている事例もあるそうです。これらのシェルターは、サイクロン(強い熱帯低気圧)に襲われても、浸水や倒壊などの被害を受けないように検討されてつくられているのでしょう。

「ピロティはもともと浸水することを前提とした建築様式です。洪水が起きやすい東南アジアの国でこの建築様式が多く採用されているなら、水害対策として有効なのでしょう。このように、異常気象時代の水害対策を考えるなら[0]、国内のみではなく、海外の水害対策事例からも学ぶべき点が多いと思います」

「スキップフロア」という有効策

 建物が浸水することを前提に家を建てる場合、小笠原さんは有効策のひとつとして「スキップフロア」をあげています。

 スキップフロアとは、フロアの高さを半階層ずらすことで「中二階」「中三階」といった中階層をつくる間取りのことです。

 小笠原さんは水害対策として、このスキップフロアを取り入れた住宅を実際に設計したことがあるといいます。

「川沿いの低地の戸建てだったため、浸水した場合にも復旧しやすいよう、スキップフロアを取り入れた住宅を計画することにしました。
 間取りを考える際に行ったのが、空間ごとにプライオリティをつけること。施主と一緒に、『どこが一番残っていてほしい大切なエリアなのか』を一緒に考えていきました。

 その結果、一番下を土間とし、100cmほど高い位置に予備室を設け、さらにその半階上にリビングや寝室を設けました。分電盤や室外機なども、計画上可能な限り高い位置に設置しています。浸水するとあとが大変な洗面室や浴室も最上階に設計しました。この家なら、100cm以下の浸水であれば土間を清掃するだけで復旧できるし、万が一予備室が浸水してもリビングや寝室は被害を受けずに済みます」

 水害から家を守ろうとする場合、一朝一夕でできる簡単な方法はありません。
 だからこそ、ご自分の住む地域について調べ、必要な水害対策について早めに検討する必要があります。

 また、いざという時に最優先すべきは人命です。避難場所を確保したり、防災リュックを準備したりと、日頃から避難できる準備を整えておくことも大事です。

 当連載を通して、いま一度水害に対する防災意識をアップデートしていただければ幸いです。

〈お話を伺った方〉

小笠原正豊さん

一級建築士。米国ニューヨーク州登録建築家。東京電機大学 未来科学部建築学科 准教授・博士(工学)。東京大学工学部航空宇宙工学科、東京大学工学部建築学科を卒業。ハーバード大学デザイン大学院建築学科修了。2004年、小笠原正豊建築設計事務所設立。大規模プロジェクトマネジメント、戸建・集合住宅や別荘の設計といった事務所運営を行いつつ、准教授として建築設計教育にも力を注ぐ。2017年秋、日米の建築設計プロセスについての論文で東京大学より博士号取得。
https://masatoyo.com

文◎八木麻里恵
人物写真◎小林彦真
画像提供◎Shutterstock/PIXTA

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