究極は、ワンフロアのワンルームといえます。生活するドアの開け閉めが不要で、寝室から各所にダイレクトにアクセスできる住まいは効率的ですし、同時に、不要な間仕切りや段差もなくなるので、バリアフリーも実現できます。
ワンルーム化は、構造上の制約もあって実現が難しいかもしれませんが、老後の暮らしを考えたら、住居内の動線は少しでも短くしておくに越したことはありません。「年を重ねれば、毎日の洗濯も重労働。そこで、洗面室を広めにつくり、部屋干しができるようにするのも手です。毎日洗濯物を2階のベランダに運んで、夕方になったら取り込んで……なんてこと、できませんよね」と、木藤さんも話しています。
夫婦の心と体を休める寝室の在り方とは
出典:奈良県「高齢者の生活・介護等に関する県民調査」(平成29年3月)より住居に関する部分を抜粋し編集部で作成
空間の使い方は、元気なうちはさほど気にならないことも、いざ介護を受ける側になって「落とし穴」に気づくこともあります。図表1は、住まいへの不満について、若年者、一般高齢者、要介護認定者それぞれにヒアリングした結果です。
これを見ると、「バリアフリーになっていない」という声は、自身が要介護認定者になってはじめて気づくものであることがうかがえます。 反対に「狭い」という声は一般高齢者と要介護認定者では低く、若いころは憧れていた個室やLDKが、年齢とともに必要なくなっていくことを物語っています。
「30代はLDKを中心に家を考えることが多いですが、50~60代は寝室をどこにどうつくるかを考えると暮らしやすい住まいになります」と木藤さん。寝室については、親の介護の例(前回参照)で触れたように、自らの老後を考えたらトイレの近くに設計するのがベストです。その寝室ですが、夫婦別寝室という考え方があるのをご存知でしょうか?
「50~60代のご夫婦にお話を聞くと、奥さまが『旦那のいびきがひどい』『寝る時間が違う』という不満を口にします。ご主人が現役のときには気にならなくても、定年退職後は一緒にいる時間が増えるので、徐々に気になりだすことも出てくるのでしょう。ベテラン夫婦といえども、家のなかではほどよい距離を保ったほうが心理的にも穏やかに過ごせるはず。こうしたことから、別寝室を選択する夫婦が増えているようです」
ただし、一方がもう一方の介護をすることになる可能性も考えると、完全なる夫婦別寝室はリスクをともないます。そこで木藤さんは「寝室は1つにしておき、お互いのベッドの間に収納などの緩衝地帯を造作する」という方法を教えてくれました。これなら、お互いの生活時間が違っていても気になりませんし、それでいて気配を感じることもできます(図表2)。 皆さんもわが家を「終の住処」にする際には、参考にしてみてください。
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