出典:総合情報サイト「All About」【国民の決断アワード2014】実施調査
別の調査(図表2)では、中古住宅購入者のうちおよそ6割が、何らかのリフォームを行っている現実が明らかになっています。お話をうかがった住宅専門誌『建築知識ビルダーズ』編集長の木藤阿由子さんは、住宅資源を有効活用するこのムーブメントを肯定的にとらえながらも、「失敗しないために」と、こうアドバイスしています。
「肝心なのは、『その住宅があと何年もつか』。水まわりを新しくしても、内装を自分好みにデコレーションしても、躯体が傷んでいれば、雨漏りやシロアリに悩まされて、憧れの暮らしどころではなくなります。地震の揺れで屋根や外壁が破損すれば、補修に膨大な費用がかかることもあります」
躯体とは、家の構造部分や骨組みのこと。木藤さんは「立地や見た目は自分で判断できますが、躯体の善し悪しは、素人には見分けがつきません。だからといって不動産屋の言葉を鵜呑みにするのも危険」と指摘します。 そのうえで、「最近は、インスペクション(住宅診断)制度が整ってきたので、設計・施工の知識をもったインスペクター(有資格者)にみてもらうことができます」とアドバイス。
さらに、「フルリノベが前提なら、特に戸建住宅の場合、新築の実績のある工務店に相談するのもよいと思います」と話してくれました。 新築の場合、建築基準法で、最新の耐震基準を満たすことが義務づけられています。そのため、新築を取り扱う工務店は、リフォームの際にも、最新の基準に沿ったプランニングができるというわけです。
断熱をしっかりしないと床暖房はまったく効かない
出典:日本データーサービス株式会社「(環境省)平成27年度低炭素ライフスタイルイノベーションを展開する評価手法構築事業委託業務(積雪寒冷地における高齢福祉施設の低炭素化と健康性等の評価モデル構築)報告書」
では、中古を買ってフルリノベするとして、限られた予算のなか、何を優先すればよいでしょうか。
「まずは耐震。日本中どこでも大地震の危険はありますから、専門家に要確認。その次は、生活するうえで、衛生上交換が必要ならお風呂やキッチンなど。そして、いよいよ自分好みの空間づくり……に走りたい気持ちはわかりますが、もうひとつ、断熱も忘れないでください。築20年以上の家には断熱材が入っていないこともあり、購入時にチェックして、総工費とのバランスを検討したほうがいいでしょう」
断熱に多くの予算を割けない場合も、少なくとも窓だけは二重窓にしたり、サッシを変えたり、何らかの対策をしたほうがいいと、木藤さんは話します。反対に、断熱に予算をあてられるのであれば、床と天井もしっかりと工事をしたいところです。
「たまに『断熱よりも、床暖房を入れたい』と話す方がいますが、断熱をしないと、床暖房の熱は床下に逃げてしまいます。床断熱ができれば、冬に床が冷たくて、足元が寒いということはなくなります。そうなると、果たして床暖房を入れる必要があるのかも再検討したほうがいいでしょう」
一方、夏の過ごし方を考えるうえで外せないのが天井断熱です。 「夏は屋根裏から暑くなります。戸建てで2階を寝室にする場合は、天井の断熱化はマスト。冷房を効かせすぎた寝室では、快適に眠ることができません。また、最近のエアコンは電気代が安上がりとはいえ、それは一定以上の断熱性能がある家に限ります。使えば、それだけ電気代がかかります」
断熱化は、家全体の温度を一定に保つうえでも効果的。例えば、高齢福祉施設入居者を対象にした調査(図表3)では、「主観的健康感」は、居室と廊下などの共有部の温度差に影響を受けることがわかっています。快適かつ健康な毎日を過ごすためにも、断熱化はぜひ検討してください。
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