まずは自分がどんな地域に
住んでいるのかを知る
水害から自宅を守ることを考える際には、「まずはハザードマップで自分がどんな地域に住んでいるのかを確認することが大事」だと小笠原さんは話します。
「住んでいる地域によって、水害時の浸水レベルや必要な水害対策は異なります。水害時にどこまで水が浸水する可能性があるのか、また、水害時に建築物や敷地のどのラインで水を止めるのかを検討するためにも、ハザードマップでご自分の住んでいる地域の特性や災害リスクを確認する必要があります。
とはいえ、ハザードマップはあくまで広域を対象とした地図なので、自宅の敷地についての細かい情報は載っていません。たとえば、周辺の川と自宅との位置関係や、目の前の道路の勾配などといったことは、自分の目で見て確かめるしかありません。
そのためにも、普段から、雨が降ったら水がどこに流れていくのかなど、自宅周辺の状況をよく確認しておくことをおすすめします」
ハザードマップだけでなく、古地図を見てその土地の歴史を知ることも大事だそうです。
「現在目の前にある状況だけでなく、過去にさかのぼって浸水の可能性を探ることは重要です。たとえば、ハザードマップ上では安全な地域でも、古地図を見てみると、川の埋立地であることが判明するかもしれません。
まずは危機意識をもってご自分の住んでいる地域の状況を把握することからはじめてみてください。そのうえで必要な水害対策については、専門家に相談しながら検討する必要があるでしょう」
国土交通省が推奨する
4つの水害対策
これから家を建てるなら、浸水被害の可能性がある土地を避けるに越したことはありません。しかし、先祖から低地の土地を譲り受けるなど、敷地がすでに決定されている方もいるでしょう。その場合は、なんらかの水害対策を講じる必要があります。
ひとつの参考例となるのが、国土交通省のホームページで紹介されている水害対策です。ここで紹介されている「かさ上げ」「高床」「囲む」「建物防水」という4つの水害対策について、小笠原さんの考えを伺いました。
(参考資料:国土交通省ホームページ「浸水の予防・人命を守る家づくり」)
(1)「かさ上げ(盛り土)」して敷地全体を高くする
「かさ上げ」は、盛り土などによって敷地全体を高くする方法です。想定される水位よりも基礎を高くするこの水害対策は、川沿いや海沿いの低地では古くから使われています。浸水被害のリスクがある土地にこれから家を建てるなら、検討の余地がある対策といえるでしょう。
ただし、「盛り土をはじめとした土工事は、予想よりも高額になる場合が多い」と小笠原さんはいいます。
「土をある程度の高さ以上盛るためには、擁壁を構築して土留めとしなければなりません。また、道路から家へのアプローチとして階段やスロープも必要です。これらの工事を行えば、当然高額な費用がかかります」
そのほか、開発行為の許可が必要な場合や、絶対高さの制限などを考慮する必要があるといいます。かさ上げを行うなら、費用対効果も含めた総合的な判断が必要になるでしょう。
(2)「高床」で家の基礎を高くする
「高床」は家の基礎を高くする方法です。この方法には、1階床用の基礎を高くする方法や、1階をピロティ状にして2階以上を居住スペースにする方法などがあります。
1階床用の基礎を高くする方法では、基礎部分を通常よりも高く設計します。「基礎」とは、家の外壁の下に配置されている鉄筋コンクリート造の土台のことです。基礎には主に「べた基礎」と「布基礎」の2種類があり、この基礎を高くすることで、1階床に浸水することを防ぎます。
1階をピロティ状にして2階以上を居住スペースにする方法は、仮に1階に浸水したとしても、居住スペースへの被害は最小限にとどめられる建築様式だといえます。
この構造は水害対策としては理にかなっていますが、一方で構造上の問題をはらんでいるといいます。
「地震や風などで水平方向に荷重がかかった場合、ピロティの柱が崩壊し、1階が層崩壊する可能性があります。そのため、ピロティ式を採用するなら、柱の強度を高めたり、十分な耐震壁を適切な位置に配置したりするなどの耐震対策が必要不可欠です。
また、浸水の可能性が指摘されるエリアは地盤が悪いことが多いです。住宅建設にあたり、地盤改良や杭工事を行う必要があるかもしれません」
杭工事や地盤改良には当然費用がかかります。またこちらの方法も「かさ上げ」と同様、絶対高さの制限なども考慮する必要が出てきます。どちらの方法も、費用対効果も含めた総合的な判断が必要だということでした。
次回は、「囲む」「建物防水」について解説します。
(第2回に続く)
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