基礎知識をおさえたら、さっそく観戦!
(ウインドサーフィン種目のRS:X級で日本代表を目指す山辺美希選手 ©Team mineko)
インターネットテレビを含め、セーリング競技のお茶の間観戦の機会は徐々に増えています。また、東京オリンピックの会場となる神奈川・江の島をはじめ、国内各地で世界選手権などの主要大会が行われ、現地での観戦を楽しむチャンスも、実は多くあります。ここからは、「競技する側」と「見る側」、2つの視点から、セーリング競技の魅力と観戦のコツをご紹介していきましょう。
まずは競技者の視点から。教えてくれるのは山辺美希選手(23/サガミホールディングス)です。中学3年からヨットを始め、大学からウインドサーフィンに転向しています。全日本女子学生選手権優勝や国体入賞の実績を持つ山辺選手は、RS:X級で日本代表を目指す選手のひとりです。セーリング競技を始めたときは、「それまでやっていた競泳の経験は通用せず、『何だこれは?』と戸惑うばかり」。競技の面白さに目覚めたのは、海の上を自由に走れる気持ちよさがわかり、レースに出場するようになってからだそうです。
(強靭な体力、スタミナが求められるRS:X級 ©サガミホールディングス)
「レースでは対戦相手のことはもちろん、風や波、潮の流れ、マークの位置……とにかく考えることがたくさんあります。風ひとつ取っても、今の風ではなく、その先の風を読んでコース取りをしなければいけません。セーリング競技は『キング・オブ・スポーツ』とも言われるそうですが、頭をフル回転させながら体を動かし続けていると、本当にそのとおりだと思えます」
「戦略を考えて、競り勝ったときの快感」が競技の魅力という山辺選手。その戦略のぶつかり合いが、見て いる側にも伝わるのがスタート地点なのだとか。
「レース5分前からすべての艇がスタート地点に並びますが、その位置取りが本当に重要です。風を読んで その風が得意な選手の近くは避ける。そうでないと、すぐに潰されてしまいます。スタート合図のホーンが鳴った瞬間、いっせいに飛び出すのですが、みんなが激しくセールを漕いでパンピングするシーンは迫力満点で、ウインドサーフィンではそこも見どころのひとつだと思います」
(2020年東京オリンピックのセーリング競技は神奈川・江の島で開催 写真提供:株式会社ジュピターテレコム)
続いて、「見る側」の視点で観戦の楽しさを教えてくれるのは、株式会社ジュピターテレコム(J:COM)神奈川メディアセンター 制作グループ長の矢野正泰さん。
J:COMでは昨年のリオオリンピックで、セーリングを含めた6競技を放送。ケーブルテレビのコミュニティチャンネルを使ったオリンピック放送としては、日本初の試みでした。矢野さんはプロデューサーとして、セーリング競技の中継番組や競技紹介番組の制作に関わったそうです。そんな矢野さんがあげた「テレビ観戦の注目ポイント」を見ていきましょう。
「スタート時も大きな見どころですが、スタートしてから最初のマークまでの駆け引きも見逃せません。マークは左右どちらから回ってもいいので、選手の方たちは風や波、あらゆる自然環境を瞬時に見極めながら、それぞれにベストと判断したコースを選択する頭脳戦を繰り広げます。マークを遠目に回るか、ギリギリを回るかなど、戦略の違いを見比べるのも楽しいですし、セールを豪快に引きながら鋭くマークを回る選手のテクニックも、大きな注目ポイントのひとつです」
観戦を楽しむコツとして、矢野さんがもうひとつおすすめするのが「選手を知ること」。
「テレビなどを通して『こんな選手がいるんだ』ということがわかると、その選手の出ている種目にも興味を持ちますし、競技の見方も変わってくるのではないでしょうか。また、実際に会場に足を運んでみると、国内外の世界トップクラスの選手たちがセールを調整したり、レースを待っていたりする姿を目の前で見たりすることもできます。セーリングをより身近に感じることで、観戦もますます楽しくなると思います」
2018年~2020年の3年連続で、江の島でのワールドカップ開催が決定。また、初心者の方に向けたセーリング体験会も各地で開かれるなど、セーリング競技に触れる機会は今後ますます増えていきそうです。
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