ずっと片付くお部屋づくりのコツ[第2回]

片付けることで未来をデザインできる

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「いつか使うかも……」と思うと捨てられない

 片付けをするうえでまず必要なのが、自分の持ち物の量を把握して「必要なもの」と「必要でないもの」に分ける作業です。ここで発生してくるのが、モノを捨てるという作業です。ただ、モノを捨てるときに、人には様々な感情が浮かび上がってくるといいます。

「モノを捨ててもらうときに皆さんよくおっしゃるのが『いつか使うかも……』というセリフです。例えば文房具。ボールペンやサインペンなどがたくさん溜まっているという方は多いのではないでしょうか。でも同じようなボールペンが30本くらいあっても、実際に使っているのはその中の2~3本だったりします。しかもこれらの中には、インクがないものもあります。私はこのような場合、まずはボールペンにインクが残っているかを紙に書いて確認してもらいます。そして書けるペンから何本残すかを決めてもらうのです。片付けられない方は、そういった使わないのにとってあるモノが部屋の中から山ほど出てくると思います。『いつか使うかも……』と思ったものが重なって、今の暮らしに必要なスペースを圧迫してしまっているのです」

 今使わないモノをとっておくと、自分の管理できる範囲を超えてしまいます。そしてどんなものでも人が管理できる範囲の適量を超えると、部屋がモノで溢れるきっかけになってしまいます。だからこそ、まずは自分が管理できる範囲の適量を見極める必要があります。

 片付けサポートをしていると、自分の適量を超えてしまうモノの種類としては、洋服と本や書類などを含む紙類が多いそうです。

「着なくなった服が溜まっている人は本当に多いです。また、本好きな方は大量の本や漫画が部屋を狭くしていることもあります。そんな時は、『もう買えない本はあるか?』『また読み返したい本は何冊か?』などと細かく質問して、本当に必要なものを選んでもらいます」

 こうした雑多なものから必要なものを取捨選択するのは、非常に根気のいる大変な作業です。でもこの作業をしないと、モノはどんどん溜まってしまうので、時間が経つほど苦労するのです。モノが溜まってしまい収拾がつかなくなる前に、手を打つことが大切だといいます。

今の自分に必要なものだけを取捨選択する

 その他、思い出があるものや高価だったもの、バーゲンなどで格安で購入したものなども捨てられない人が多いといいます。

「例えばバーゲンで3万円のコートが1万円だったからと購入したけれど、今は全く着ていない場合などです。“これは高かったな”とか、“価値があるものだ”と思うと捨てられなくなって、何十年もとっておいている人がいます。ただ、人は気に入っている服しか結局は着なくなってくるものです。そのコートは今の自分には必要のないものなのです。だから私は寄附やリサイクルに出したりしてもらいます。そしてこれからはバーゲンなどで買うのを控えるようにともアドバイスしています」

「また、お子さんの絵や作品、保育園とのやりとりに使った連絡帳などの思い出の品や、人にもらったお土産や記念の品など“想い”がこもったものも捨てにくいという人が多いです。そういったものはその人の“心の潤い”にもなっているので、無理に捨てる必要はないと思います。ただ、かさばるものや全部残さなくてもよいものも多いはずなので、最小限にはしてもらっています」

 こうして必要なものだけを取捨選択することは、今の自分を見つめ直すことでもあるといいます。

「例えばスノーボードをやろうと思って高い値段でボードやウエアを揃えたけれど、もう10年も使っていないという人がいたとします。その人はこれからも多分スノーボードをやる機会は少ないと思います。現時点でその人は、スノーボードをやる人ではないのです。それなのにそういった道具がスペースを圧迫して、今の自分の快適さを邪魔しているのです。大切なのは“今の自分”です。過去や未来にとらわれず、“今の自分”に必要なものを選ぶことが、自分を大切にすることにもつながるのです」

 私たちは、生きていくために必要なモノと人間関係を維持していくために、その都度、取捨選択をしてモチベーションを上げていかなくてはなりません。片付けは「今の自分」を見つめ直し、これからの生き方をデザインしていくことでもあるのです。

「ずっと片付くお部屋づくりのコツ」最終回の第3回では、片付けが長続きするためのテクニックについてお伝えしていきます。

≪お話を伺った方≫

中山ゆうみさん

東京都大田区生まれ。
祖母が助産院を開業していたため、自宅で生まれる。20代より横浜在住。
1996年7月、不動産管理会社の原状回復工事業務の会社を設立。
以後、内装リフォーム、ハウスクリーニング、ビルメンテナンス、ハウスキーピング、片付けサポート、生前整理、遺品整理などの業務を請け負う。
片付けは心と深い関係があるということから、催眠療法士(ヒプノセラピスト)の資格も取得し、心と身体と部屋の改善を中心に活動中。著書に『部屋と心が片付く人生のタイムテーブル』がある。

文◎濱田麻美 
写真提供◎Shutterstock

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