ずっと片付くお部屋づくりのコツ[第1回]

片付けが続かない原因は「心」にある!?

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片付けをする時間がない、習慣がない

 中山さんは片付けのカウンセリングに入るときに、まずはその人の一日のタイムテーブルを出してもらうといいます。

「現代は忙しい方も多いので、帰宅してから寝るまで2時間程しかないという人も多くいらっしゃいます。そんな生活の中で片付けのためのまとまった時間をとるのは難しく、そうしたらどうやって時間を作るかを考えるしかないのです。そのために大事なのが、片付けの習慣です。“食べたらしまう”“汚したら洗う”“出したらしまう”といった、いわば当たり前のことなのですが、この習慣が身についているか、ついていないかによって片付いた状態が維持できるかが変わってきます。片付けを維持するのに一番大切なのは、この習慣だといえます」

 片付けの習慣が身についているかどうかは、育ってきた環境も大きく影響してくるそうです。

「親のどちらか、もしくは両親とも片付けが苦手な家庭に生まれて育った方の中には、今まで片付けを全く学んでこなかったというケースもあります。それとは反対に、親が潔癖で自分で片付けをなにもしてこなかったというケースもあります。ただ、どちらもともにいえるのが、子どものうちから片付けや掃除の仕方を学んできていないことが多いので、どうしたらよいのかわからないということです」

 ちなみに中山さんは、子どもの頃から片付けや掃除は意識するほうではあったけれど、きちんと効率よくできるようになったのは大人になり仕事として携わるようになってからだそうです。

「私のような片付けのプロやお掃除クルーも、限られた時間の中でテキパキと効率よく作業できるのは、仕事として教えられ、身につけているからです。だから、もし子どもの頃に全く片付けについて学んでいなかったとしても、片付けやお掃除のスキルは大人になった後からでもきちんと学べば身につけることができます」

 片付け上手になるには何歳からでも遅くないのです。ただ、その目標に向かうために、一緒に片付けのプランを立てていると、ここで心の問題にぶち当たることもあるといいます。

片付けられない人の心の闇

 中山さんのところにくる相談者の中には、自分で片付けることが難しい状態になってしまった方が多くいらっしゃいます。そして、“なぜ片付けが苦手なのか”という理由の中には、心の部分で深い理由が存在することがあるそうです。

「カウセリングの前にメールのやり取りなどを通して、今に至るまでのご事情を必ず伺います。そこで自分でも気づかなかった心の闇の部分が、部屋の状態とリンクしていることに気づくことがあります。それが本気で片付けを始めるための第1歩になります」

 そのうえで「片付けマラソン」という10回の片付けサポートを通して、相談者が片付いた状態を自分自身で維持できるように導いていくそうです。

「私のサポートは“自分で片付けができるようになること”が目標なので、ただ片付けて終わりというものではないのです。そのためにこうしたカウンセリングも行っています。カウンセリングというとかたく感じられると思いますが、実際はいろいろな心情を話し合うといった感じです。そしてそのことが、相談者の心の扉を開けていくことにつながります。こうした作業が、スムーズに片付けを進めるうえでもとても大切なのです」

 また、カウンセリングの中で相談者からの希望があり、中山さんが必要だと思った場合は、ご自身で資格を持っている催眠療法(ヒプノセラピー)を受けていただくこともあるそうです。その中で幼いころの自分になって、当時の気持ちを探っていく『年齢退行』という方法があります。

「“全然使っていない文具や雑貨が手放せない”という相談者がいました。そこで年齢退行を使って小さなころの自分に戻ってもらいました。そうしたら意外な答えが返ってきたのです。その方は“文具とか雑貨を捨てると、お母さんから嫌われる”と思っていたのです。その方は幼いころに、両親の離婚でお母さんと離れて、そのまま育ってきました。そこで受けたショックが、ずっと心に影を落としていたのです。このようにカウンセリングしていると、人の心の奥深さに驚かされることがあります」

 幼少期に親から受けた言動が今の自分に影響を与えていることは多々あります。特に14歳頃までの体験は心理的に大きな影響を及ぼすそうです。

「片付けができない状態というのは、そこに至る行動があり、そしてその行動に至る意識というものがあります。意識は目に見えないエネルギーなのでわかりにくいのですが、片付けを進めていくうちに、“買い物依存”などのいろいろな依存や心のクセが見えてくるのです。その部分に対して真摯に向き合って見直していくことで、暮らしが、そして人生自体が変わっていきます」

 第1回は、片付けができない原因やその裏にある心の傷についてお伺いしました。次回は、片付けをすることで得られる意味やメリットについてお伝えします。

≪お話を伺った方≫

中山ゆうみさん

東京都大田区生まれ。
祖母が助産院を開業していたため、自宅で生まれる。20代より横浜在住。
1996年7月、不動産管理会社の原状回復工事業務の会社を設立。
以後、内装リフォーム、ハウスクリーニング、ビルメンテナンス、ハウスキーピング、片付けサポート、生前整理、遺品整理などの業務を請け負う。
片付けは心と深い関係があるということから、催眠療法士(ヒプノセラピスト)の資格も取得し、心と身体と部屋の改善を中心に活動中。著書に『部屋と心が片付く人生のタイムテーブル』がある。

文◎濱田麻美 
写真提供◎Shutterstock

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