猛暑に負けない家づくり 第4回

2階が暑くて寝られないなら、断熱リフォームを検討しよう!

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なぜ、断熱リフォームが必要なの?

 夏の暑さ対策では、窓だけでなく、壁や屋根もしくは天井の断熱性も高める必要があると清水さんは語ります。

「実は、窓の遮熱・断熱対策をするだけでは、夏の真昼や西日の強烈な太陽熱から屋内を守るには不十分です。熱は窓だけでなく、伝導で外壁からも伝わってくるからです。また、2階で寝ていると、エアコンをつけないと寝苦しいと話す方が案外多いのですが、それは日中に熱くなった屋根材や小屋裏が夜になっても冷めず、部屋に侵入してくるからです。

 窓の遮熱・断熱対策だけで暑さを我慢できない場合は、室内での熱中症を防ぐためにも、外壁や屋根、天井裏に断熱材を施工することを速やかに検討することをおすすめします」

断熱材の種類と性能

 断熱リフォームに使われる「断熱材」とは、伝導、対流、輻射による熱移動を防ぐために“空気の層”などを重ねてつくられた素材のことです。断熱材を外壁や屋根、天井、床などに施工することで、夏は涼しい環境を、冬は暖かい環境を保ちやすくなります。

 ひとくちに断熱材といっても、断熱材にはさまざまな種類があり、性能も玉石混交です。清水さんによると、性能を判断する基準となるのが「熱伝導率」だといいます。
 熱伝導率(W/m・K)とは熱の伝わりやすさを表す数値で、低ければ低いほど熱が伝わりにくく、断熱性が高いということになります。

 以下は、断熱材の主な種類と熱伝導率を表したものです。

種類 素材 熱伝導率(W/m・K)
特殊断熱材 真空断熱材 0.002
発泡系断熱材 フェノールフォーム 0.02
硬質ウレタンフォーム 0.024
ポリスチレンフォーム 0.034
繊維系断熱材 ロックウール 0.045〜0.035
グラスウール(24K) 0.038
グラスウール(16K) 0.045
グラスウール(10K) 0.050
現場発泡用断熱材 ウレタンフォーム 0.038
セルロースファイバー 0.04〜0.045

※断熱材は同じ素材を使っていても製品によって性能に差があるため、ここの熱伝導率はあくまで目安となります

 断熱材の中で最高峰の断熱性能を誇るのが、特殊断熱材の「真空断熱材」です。たとえば、高性能な発泡系断熱材の「フェノールフォーム」の熱伝導率が0.02であるのに対し、真空断熱材の熱伝導率はその10分の1の0.002とすごい数値となっています。

 熱伝導率が低い素材は、高価ではありますが、断熱材の厚みを薄くできるメリットがあります。たとえば、フェノールフォームでは10cmの厚みをもたせないと得られない断熱性能が、真空断熱材なら1cmの厚みで同じ断熱性能を得られるということです。

 断熱材は厚い方が良いのですが、壁が厚くなるため部屋が狭くなることもあり得ますので、予算と相談しながら、なるべく断熱性能のよい素材を選ぶのがおすすめです。

 なお、グラスウールは密度(K)によって熱伝導率に違いがあり、密度が高いほど断熱性能は高いということになります。

断熱材の施工方法

現場発泡の施工現場(画像提供:ミタス一級建築士事務所・清水煬二)

 清水さんによると、断熱材の施工方法には以下の3つがあるといいます。

(1)外壁室内側を壊して、断熱材を入れ替える

 断熱材の一般的な施工方法になりますが、清水さんは「施工方法によっては断熱材を敷き詰める際に隙間ができやすく、壁のなかで結露しやすいので工事方法に注意が必要」という点をあげています。

(2)現場発泡用断熱材を使ってふきつける

 断熱材を壁のなかに押し込むのではなく、発泡スプレーを使って現場発泡用断熱材を吹き付ける施工方法です。現場発泡であれば隙間ができにくく、結果的に断熱性能もよくなるため、清水さんは(1)よりも推奨しています。

(3)室内側からそのまま断熱パネルを貼る

断熱パネルの施工現場(画像提供:ミタス一級建築士事務所・清水煬二)

 断熱パネルとは、室内にそのまま貼ることのできるボード状の断熱材です。断熱パネルを貼るのであれば、壁を壊す必要がないうえ、壁のなかで結露する心配が少なく、現場発泡と同じように設計上の断熱効果を、そのまま得られやすいそうです。

LIXILの「ココエコ」

家全体ではなく、ひと部屋ごとに窓・壁・床の断熱リフォームができる新発想の断熱エコリフォーム。壁と床には、最高峰の断熱性能を誇る「真空断熱材」の断熱パネルを採用しているため、わずかな薄さで大きな断熱効果を発揮します。

www.lixil.co.jp/lineup/construction_method/cocoeco/outline/

優先的にリフォームすべきは
「壁」と「天井」

 断熱リフォームをする場合、1年を通して快適に過ごすことを考えると、壁、屋根(もしくは天井)、床に断熱材を入れることが多いでしょう。
 清水さんは、「これらのうち、夏の暑さ対策を目的とするなら、壁と天井のリフォームがおすすめ」だと話します。

「床の断熱リフォームは冬に効果を発揮しますが、夏は床から熱が伝わってくることはあまりないため、優先順位は低くなります。
 上からの熱を遮るには『屋根断熱』と『天井断熱』の2種類があります。断熱効果を考えると屋根に施したほうがいいのですが、屋根断熱はコストと手間がかかるため、天井裏に断熱材を施工するケースが多いのです」

「グリーン住宅ポイント制度」でお得にリフォーム!

 新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の回復を図るために創設された「グリーン住宅ポイント制度」をご存知でしょうか。

 これは、一定の性能を満たす新築住宅の購入や、省エネにつながるリフォーム工事などに対し、ポイントの発行・交換を行う事業のことです。
 リフォームの場合、窓まわりや外壁、屋根、天井の断熱改修もポイントの対象となります(制度の詳細やポイント発行の条件、申請方法などは下記をご覧ください)。

【グリーン住宅ポイントについて】

・国土交通省ホームページ
www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000181.html

・グリーン住宅ポイント事務局ホームページ
greenpt.mlit.go.jp

・LIXILのポイント発行対象製品リスト
www.lixil.co.jp/green/list/

※2021年のグリーン住宅ポイントは、10月31日が申請期限となります。

 断熱リフォームで利用できる補助金制度は他にもあります。断熱リフォームをお考えの方は、この機会にぜひお得に断熱リフォームする方法も検討してみてはいかがでしょうか。

〈お話を伺った方〉

清水煬二さん

ミタス一級建築士事務所 代表。一級建築士。神戸大学工学部建築学科を卒業後、2000年に現事務所を開設。住宅の設計と監理、住宅コンサルティング、住宅の耐久性や断熱、防湿、構造に対する工事指導、セミナーや講演でも活躍中。『TV劇的!大改造 ビフォー&アフター』にも匠として出演したほか、NHKテレビなどでもミタス一級建築士事務所のリフォーム実例が紹介された。

文◎八木麻里恵
人物写真◎神出 暁
画像提供◎ミタス一級建築士事務所・清水煬二/Shutterstock

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