10年目の収納 [第2回]

脱「とりあえず収納」! “新世代家電”は適材適所にすっきりと

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お手入れ整理収納

プロに依頼後、半年で元通りに……

 お掃除サービスやあふれる家財を片付けてくれるサービスを利用される方が増えています。しかし、ただ見た目をきれいにしてもらうだけでは、使い勝手がいまひとつで徐々にちらかりはじめ、半年後には元通りになってしまうことがあります。

プロに整理収納を依頼するなら、自身の生活動線やよく使うものとあまり使わないものを伝えることが成功の第一歩だという拝藤さん。

 それは、よく使うものとあまり使わないものの選別をせず、ただ「きれいにしてほしい」と大雑把な注文をしているからかもしれません。

「持ち物全体のうち、気に入ってよく使うものは、実は1~2割程度なんです。もし、そのほかのものを処分することができれば、仮に収納場所が十分に確保できないような環境でも、しまいやすく取り出しやすい収納ができます。まして、プロに希望を伝えて話し合ったのちに収納してもらったのなら、それをベースにすれば、自身の日常的な片付けで状態は保たれます」

 例えば、キッチンの収納なら、使うものはキッチンに周辺に限られるので、動線も限定され、案外簡単だと拝藤さんはいいます。

「10年前の家なら、キッチンの広さに対して収納スペースは1割程度あるはず。まず、使わない食器や調理道具などを処分すれば、キッチンまわりがものであふれることはなくなるので、よく使うものを適材適所に収納することが可能になります」

散らかりやすいと思われがちなキッチンも、動線が限られているので、ツボをおさえれば実は収納は簡単。(写真提供◎拝藤チサト)

注意したい“ミス収納”

 適材適所の収納のつもりでも、まったく見当はずれのことが起きやすいのが、家の顔である玄関の収納だと拝藤さんはいいます。

「玄関に『置くべき』と思っているものが多すぎて、玄関が混雑していませんか? 頻繁に使う靴なら玄関にあったほうがいいですが、冠婚葬祭用のパンプス、雪の時に履くブーツなど、履物だからという理由で玄関に置いていることはないでしょうか」

 使用頻度に着目して動線上重要かどうかを判断して、めったに使わないものはクローゼット(納戸)や廊下、階段下などの収納スペースにしまっておけば、玄関もだいぶすっきりします。

 また、拝藤さんが2軒に1軒は見かけるというのが、一部屋まるごとの「とりあえず収納」です。

 戸建てなら用途をはっきり決めていない部屋、マンションなら北側の一室などにありがちで、収納スペースが足りないから、とりあえずものを置きはじめてしまう例です。

 最初はトイレットペーパーやアルバムにはじまり、子どものおさがりの洋服類や季節の家電品、ひな人形やクリスマスツリーといった季節飾り、証券など、クローゼットに収納すればいいものを置いてしまう。多くは段ボールが山積みの、「なんでも部屋」というケースです。

「クローゼットや納戸などにも通じますが、最初に部屋の壁面に機能的な棚をつくっておけば、収納不良は防げます。これからリフォームを予定しているなら、建築業者さんに相談してしつらえてもらうといいでしょう」

“新世代家電”の収納

スティックタイプの掃除機は収納に悩むところだが、拝藤さんのお宅では吊るして充電しながら収納している。(写真提供◎拝藤チサト)

 適材適所の収納は、風呂場、トイレ、玄関まわりなど、すべての場所で共通です。しかし、新築から10年間で大きく変化し、なかなか対応しにくいものがあります。

 それは、掃除機です。

 10年前はキャスターのついた掃除機が主流で、掃除する場所ごとにコンセントを差し込み直して作業していましたが、今は充電式のスティックタイプが普及しています。

 従来の掃除機なら掃除用品をしまう場所に収納しておけば問題ありませんでしたが、スティックタイプは使用した後、充電しながらの収納が必要です。コンセントの数や位置が、新しい家電品に合わないのです。外出中に自動で部屋の埃を集めてくれるお掃除ロボットの収納場所も、案外ありません。

「スティックタイプの掃除機は、吊るして収納できるラックが便利です。また、リフォームを行う際は、壁に穴をあけて収納スペースを確保したり、お掃除ロボット用の収納棚を設けるなどしています。その際、新たな家電品に対応するため、ソケットを増やすだけでなく、高さや位置を考慮して設計のアドバイスをしています」

 ほかにも、Wi-Fiのルーターやスマートスピーカーなどのネット関連用品、パソコン周辺の足りなくなったソケットをタコ足配線で対応するためのタップも同様です。スマホ充電器の収納も、なかなか難物です。

 拝藤さんはこれらの“新世代家電”も含め、収納について個別にリモートでのアドバイスもしています。次回はその様子をご紹介していきます。

(第3回に続く)

≪お話を伺った方≫

拝藤チサトさん

一級建築士 整理収納アドバイザー。一級建築士として100軒を超えるリノベーションを行う中で「間取りや収納量にこだわっても、使いこなせるかどうかは別の問題」と感じ、2018年整理収納アドバイザーの資格を取得し独立。お客様の性格とライフスタイルにフィットした収納を動線から考え、建築士としての経験を生かした整理収納サポート行う。セミナー講師としても活動する。
https://tommy-d.net/

文◎三星雅人
写真◎宇野真由子

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