収納力抜群なロフトだけに
重量オーバーにご注意を
ロフトは、収納はもちろん、書斎や趣味のスペースに活用でき、建築基準法では「小屋裏物置等」という扱いになり、固定資産税の課税対象面積に含まれないことや、リフォーム費用も、部屋を増築する場合と比べて、それほど高くないなど、税制面やリフォーム費用などコスト面でのメリットがあることなど、前回はロフトの魅力についてお伝えしました。
しかし、リフォームによるロフトの増築は、メリットだけでなくデメリットもあり、事前に知っておくべき注意点と必要な対策があります。その1つが、収納力があるがゆえに収納物の重量が増えがちになることです。
「ロフトの上限面積は、ロフトが属する階の2分の1未満です。この基準の上限いっぱいに建てると狭小住宅でも、かなりの量の収納が可能です。収納力はロフトの大きなメリットでもあるのですが、気をつけたいのは、収納物の重さ。特に、本や雑誌、CDなどは要注意です」
ロフト床の強度を増すために天井から吊り下げ式の補強をしている。ロフトを設置して低くなった天井は、床を一段下げることで高さを確保。
つまり、重さに耐えられる設計かどうか、重いものを収納するのであれば、それ相応の強度が必要です。本の重量について、ご自分の蔵書を考えてみましょう。
「例えば、ハードカバーの単行本が1冊450gだとして、1000冊なら450㎏、2000冊なら900㎏になります。『本で床が抜けた』という話を聞いたことがあると思いますが、実際に、大量の本は、木造住宅だけではなく、鉄筋コンクリートの住宅でさえも床がたわむなどの影響を及ぼすことがあるほどです」
部屋に収納しきれない蔵書の収納をなんとかするためにロフトが欲しい、ロフトで好きな本に囲まれて読書三昧の時間を過ごしたいという方は少なくないと思います。
「ロフトを増築する際には、ロフトに大量の本を収納する予定があることを建築家や設計士、施工業者に伝えて相談したほうがいいでしょう」
また、本に限らず、重量がある物を置く予定がある方も同様です。
「家全体に影響がないか、強度やバランスなど、構造安全上の計算や、梁、柱、壁、床などの補強が必要になってくるケースもあります。場合によっては、ロフトを増築できないケースもあります」
床が抜けたり、家が傾いたりしないように、事前に必ず相談してから施工してもらうことが大切です。
こもった熱は換気扇で室外に放出
ロフトをお持ちの方が、真っ先にあげる悩みが「夏の暑さ」ではないでしょうか。
「実際に、ロフトは暑いです。家の中の暖かい空気、熱気は上に行く性質があり、また、屋根に当たった太陽光の熱が伝わりやすいため、真夏はかなり厳しい暑さとなります」
しかし対策を施せば、ロフトの暑さは軽減できるそうです。その対策は主に2つあると岡本さんはアドバイスします。
「1つは、こもった熱を室外に放出すること。そして2つ目は、外からの熱、主に屋根から伝わる熱を遮断することです。その対策としては、換気扇を設置することと、断熱材を設置することがあげられます」
岡本さんのオフィスは、ロフトを含めた放熱に北向き開閉式の天窓を利用している。
この2つの対策を行うことによって、ロフトだけでなく、家にこもった熱を排出したり、屋根や天井から伝わる熱を遮断したりすることで、家全体の快適性が増すことにもつながります。
「ただ、それらの対策を施して暑さが軽減されても、家の中では比較的高温になりがちな空間です。ロフトに何を置くのか、夏場は高温になる場所であることを考慮して収納したほうがいいでしょう。また、小さなお子さんが長時間過ごすには注意が必要です」
前回もお伝えしたように、ロフトは、建築基準法では「小屋裏物置等」として扱われます。「部屋」ではなく、あくまでも「収納」という取り扱いのため、ロフトは階とみなされず、床面積にも算入されません。そのために、面積や天井の高さの他にも、窓やコンセントなどについても自治体によって条件があり、それらをクリアしなければなりません。
ロフト内の移動はキャスター付きの椅子が便利
天井が1.4m以下に制限されているので、ロフト内の移動はキャスター付きの椅子を使うと便利と岡本さん。
(c)OASis一級建築士事務所
建築基準法で「小屋裏物置等」として扱われるロフトの天井高は、1.4m以下です。大人が過ごすには、やはり天井が低いと感じることは否めません。特にロフト内を移動するときに天井の低さを実感するでしょう。
「読みたい本を探したいというときに、ずっと腰をかがめながら動くのでは、疲れてしまいますよね。でも、読書や作業用の椅子にキャスター付きのものを選ぶと、座ったままロフト内を移動できて、蔵書や書類を探しやすいです」
ちょっとした工夫ですが、足腰に負担がかかる姿勢で捜し物をするという問題をクリアする方法の一例です。
また、「天井が低いので掃除がしにくい」というのも、ロフトにありがちなお悩みです。
「最初から掃除がしにくいということを頭に入れて物を置くようにしたり、こまめな片付けを心がけたりするだけで、掃除の手間が随分と変わってくると思います。また、ロフトのコンセントの数に制限がある自治体もあるので、小回りがきく充電式のコンパクトな掃除機があると便利です。最近では、充電式のハンディ型掃除機でも、小型で吸引力が強い商品があるのは心強いですよね」
ロフトを増築する際の注意点やデメリットはいくつかありますが、リフォームを依頼するプロに事前にその対策を相談してみるのはもちろん、あらかじめデメリットもあるということを十分理解しつつ、あれこれ工夫しながらお気に入りの場所にしていくのもロフトの楽しみの1つなのかもしれません。
(第3回に続く)
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