シリーズ 男のリフォーム 「薪ストーブ」のある暮らし 第3回

「初めての薪ストーブ」で知っておきたい3つの注意点

空間
リビング・寝室・居室
関心
ライフスタイルインテリア季節リフォーム

素敵な「炎のある暮らし」を安全・快適に実現してくれる薪ストーブ。最終回の今回は、薪ストーブの購入・設置の際の注意事項とかかる費用、さらに燃料である薪についての正しい知識、最後に薪の正しい着火法についてご紹介します。

何よりも安全性を重視した選択を!

「機種選びから、設置場所に合わせたご提案をします」と小林さん。

 薪ストーブを実際に設置する場合は、まず何をいちばん最優先して考えたら良いのでしょうか。また、設置時と設置後にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。薪ストーブのプロ、株式会社エープラスのテクニカルマネージャーの小林雅生さんと代表取締役の三ッ井陽一郎さんに聞きました。

「薪ストーブは火を使う暖房器具ですから、設置の際も、また日常で使う場合も、何よりも安全で使い勝手良いこと大事です」と小林さん。購入・設置に当たって、安全のための小林さんが次の3つの条件を教えてくれました。
 [1] 生活の動線にゆとりがあり家や部屋に合った適切なサイズ、暖房能力のものを選ぶこと
 [2] 建物の造りや形状に合わせてきちんと設計された煙突を設置すること
 [3] 必要なら床の強化や断熱壁の構築も含めて適切な工事を行うこと

「どのようなタイプの部屋で、どのように薪ストーブを使いたいか、自分のイメージをプロに伝えてみることが、満足できる設置・導入の近道です。その希望をもとに、設置する場所の状況を考慮し、何よりも安全性を最優先して、我々のようなプロからベストな設置方法をご提案します」と小林さん。

大は小を兼ねない薪ストーブ

 では具体的に、適切なサイズ、暖房能力のストーブをどのように選べばいいのでしょうか。ひとくちに「適切なサイズ、暖房能力」のストーブと言っても、それは住宅の構造や断熱性能によっても大きく変わるそうです。

「エアコンを選ぶ場合には余裕があった方がいいと、暖房・冷房能力の大きなものを選ぶ方が多いと思います。薪ストーブの場合も、同じように『寒いよりも暖かい方がいいだろう』『大は小を兼ねる』という考えから、大きなストーブを選ぼうとする方が多いのです」
 小林さんは傾向をこう分析します。

クリーンな排気のためにも、薪は燃やし切るのが薪ストーブの基本。

 しかし、最近の住宅は断熱性能が高いもの。また、タイプによって着火してから部屋が暖まるまでの時間には差がありますが、薪ストーブはガスや石油を使ったファンヒーターと違って、オン/オフが瞬時にできるものではありません。クリーンな排気のためにも、薪は燃やし切るのが薪ストーブの基本です。ガスや石油のようにすぐに火を落とすことはできません。

 さらに小林さんはこうアドバイスします。

「大きなストーブは出す熱の量も多く、当然のことですが薪の消費量も多くなります。熱の対策も大変になりますし、燃料代もかさむので維持することも大変になります。薪ストーブは『大は小を兼ねない』のです。使う場所や使い方によっては、薪ストーブだけで暖房しようとせず、薪ストーブと合わせて他の暖房器具を併用するのも良い方法です」

ストーブと煙突を中心にレイアウトを考える

 モデル選びの次に考えたいのが煙突のこと。そして、ストーブと煙突をどのように配置するか、ということ。前にも述べたように、ストーブに合った適切な煙突は薪ストーブの性能と安全に関わる重要な装置で、その設計や配置には充分な注意が必要です。

「煙突はすべて、設置する場所に合わせたオーダーメイド。適切な煙突を適切に配置しないと、安全で快適な薪ストーブのある生活は実現できません。リフォームで薪ストーブを設置する場合は、薪ストーブと煙突の配置を最優先に考え、今のお部屋のレイアウトをゼロリセットして考える。薪ストーブの設置を、部屋の模様替え、リフォームのチャンスにしましょう」というのは、薪ストーブを初めて設置する際に、小林さんが必ず伝えるアドバイスだそうです。

 ところで、薪ストーブを設置すると、全部でどのくらいの費用がかかるのでしょうか。また、燃料の薪にはひと冬、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

「自分が納得した薪ストーブしか販売しない」という三ッ井さん。今はこのデンマークデザインのワムとドイツ生まれのアイアンドッグ、この2つのブランドに力を入れている。

「設置費用はストーブのサイズやタイプで変わるので、一概には言えませんが、ストーブ本体の価格は約50万円程度が平均価格。大きなものでは100万円近くになるものもあります。これに煙突や工事費を含めると、トータルでの費用は130万円~200万円前後と考えてください」と、代表取締役の三ッ井陽一郎さん。

 燃やす薪の費用は、設置した環境や、その年の天候などで大きく影響されるので、はっきりした金額を出すことは難しいようです。

「薪は自分でも作ることができるいちばん身近な燃料です。購入するのがいちばん簡単ですが、それなりの費用がかかります。薪ストーブのある生活では、地域にある伐採された木材を頂いたり、原木を購入してチェンソーなどで切断して乾燥させる、つまり『薪を自分で作る』のも楽しみのひとつ。そうすれば、費用も安くて済みます」

間伐材などを使った薪作り。今、最も求められている森林資源の有効活用だ。

 第1回でお伝えしたように、薪の原料は広葉樹でなく針葉樹でもまったく問題はないと三ッ井さんは断言します。ただ、どんな薪でも、煙や臭い、危険な煙道火災を防ぐ、最小限にするためには、充分に乾いた薪にする必要があります。

「薪の調達は、ひとつの方法にこだわらないほうが良いでしょう。薪作りをする時間がなければ購入して、時間があるときだけ、薪作りを楽しんでみる。薪作りは苦労でもあり、楽しみにもなるもの。無理をしないで、薪ストーブを楽しんで頂ければと思います」(三ツ井さん)

細かく割った薪に上から着火する

まず最初に、ストーブの燃焼室のサイズに合った大きさ、適切な太さの、充分に乾燥させた薪を燃焼室にセットする。太すぎる薪は、着火できても不完全燃焼を起こしやすいので、適切な太さにする。

セットした薪の上に、十分に乾燥させた薪をさらに細かく割った薪を載せていく。

細かく割った薪の上に小さなキューブ状の着火剤を載せ、着火剤に着火してからストーブの扉を閉める。
※ストーブの機種によっては、着火の際にストーブに入る空気量を調整するレバーを最大にして着火したら調整するタイプもあります。

最後に最新の薪ストーブでの、スムーズな薪の着火法をご紹介します。大事なポイントは、まず、しっかりと乾燥させた薪を使うこと。さらに薪の並べ方。「太いものを下に、細いものを上に」。そして着火は「下からではなく、上から」。さらに、「細かく割った薪と着火剤から点火する」こと。これはキャンプ等でも応用できるテクニックです。

お話しを伺った方

三ッ井陽一郎(みつい・よういちろう)さん

自身の薪ストーブ体験をきっかけに1983年に創業したアメリカの薪ストーブの輸入販売を開始。以来「薪ストーブの素晴らしさをひとりでも多くの人に」という想いで世界最高の薪ストーブと関連製品届ける株式会社エープラスの代表取締役。

小林雅生(こばやし・まさお)さん

元々は光学機器メーカーに勤務していたが、薪ストーブとの出会いをきっかけに、株式会社ディーエルディーに転職。テクニカルディレクターとして薪ストーブや煙突の設置を指揮。また薪ストーブの魅力を解説し、普及に力を入れる薪ストーブのプロフェッショナル。

文◎渋谷康人 撮影◎江藤義典
取材協力◎株式会社エープラス(https://www.aplusinc.jp/

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)