引き戸でフレキシブルな空間に
サービス付き高齢者向け住宅の間取り事例①
最初にご紹介するのは、玄関ホールを抜けるとリビングがあり、その奥にもう一部屋あるという、小規模なサ高住でよく見られる間取りです。
●間取りのポイント
1.ベランドに隣接した明るく風通しのよい部屋をベッドルームに
2.引き戸を全面的に採用し、車いすでの移動や歩行介助のしやすさを確保
3.引き戸を活用し、フレキシブルな空間を実現
この事例では、リビング、寝室、トイレ、洗面室、浴室の扉をすべて引き戸にしています。引き戸は、開き戸のように一歩下がって開けたり、開いた扉を手で押さえたりする必要がないため、車いすでの移動や歩行介助に便利なのです。
「引き戸のもう1つのメリットは、フレキシブルな空間づくりができることです。日中はリビングと寝室の引き戸を開け放して広々としたワンルームにし、就寝時は引き戸を閉めて独立した寝室にしたり、お客様がいらしたときは引き戸を閉めてベッドルームが見えないようにしたりと空間をフレキシブルに使うことができます」
リビング、寝室、サンルームをぐるりと回遊
サービス付き高齢者向け住宅の間取り事例②
次にご紹介するのは、広い居住スペースを確保したサ高住の間取り。リビングには独立型のキッチンが備えられており、寝室の外にはサンルームが広がる間取りです。
●間取りのポイント
1.リビング、寝室、サンルーム、バルコニーをぐるりと回遊できる間取りに
2.引き戸を全面的に採用し、車いすでの移動や歩行介助のしやすさを確保
3.就寝時や来客時には寝室の引き戸を閉め、独立した寝室に
4、引き戸を開け放せば、ベッドでくつろぎながらリビングのテレビを鑑賞することも
この事例もまた引き戸を全面的に使用し、車いすでの移動や歩行介助のしやすさを確保しています。「事例①と同様、ベッドルームの引き戸を開け放せば広々としたワンルームとして使えます。寝室のベッドでくつろぎながらリビングのテレビを観ることもできますよ」
もう1つのポイントは、リビング、寝室、サンルーム、そしてバルコニーをぐるりと回遊できる間取りであること。「前回解説した通り、各部屋を回遊できる間取りにしておくと車いすでも動きやすいため、自立した生活を維持しやすくなります。また、回遊できる間取りにすれば行ったり来たりする時間が削減でき、介護の負担も軽減されるでしょう」
高齢者の居住スペースは1階に集約する
小川さんはサ高住の間取りを手に、「シンプルで生活動線が短い間取りを、介護に効くリフォームの参考にしてもらえれば」と話します。
サ高住の間取り事例を2つご紹介しましたが、「うちは2階建てだから、居住スペースをワンフロアに集約した間取りにはできないな」とお考えの方もいるのではないでしょうか。しかし、たとえ自宅が2階建てだったとしても、介護リフォームでは高齢者の生活エリアを1階に集約したほうがよいと小川さんは言います。
「階段は住宅内の移動空間のなかでもっとも危険な場所の1つ。高齢でなくても、階段の昇降時に足元が滑って怖い思いをされた方も多いと思います。また、もしも2階で親御さんが倒れたら1階まで下ろすのは至難の業です。そのため、高齢者の生活エリアは必ず1階に集約することをオススメします」
子ども世帯との同居ならば、親世帯が1階に、子世帯が2階に住み、それぞれの世帯の希望を取り入れた間取りにするのもよいでしょう。
また、子どもが独立して夫婦2人になった場合は、「生活エリアを1階にして2階は客間にする」などのリフォームも考えられます。そんなとき、回遊できる間取りや引き戸の活用など、サ高住の事例で見たこれらのヒントが役立つのではないでしょうか。
第3回に続く……
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