【第1回】介護に効く究極の間取り-「65歳」がリフォームのリミット

空間
リビング・寝室・居室
関心
老後介護リフォーム

「年をとっても暮らしやすい間取りにしたい」

「介護する側にも、介護される側にも便利な間取りがいい」

そんな希望をお持ちの方も多いのではないでしょうか。でも、老後や介護を見据えて、いざ家をリフォームしようと考えたとき、どんな間取りにしたらよいかはとても悩むところ。

そこで今回は、住宅やホテルなどのプランニング・デザイン・室内計画のコンサルタントとして活躍する小川千賀子さんに、年をとっても暮らしやすく、介護に便利な間取りについて教えてもらいました。

設備の機能を覚えられるのは「65歳」まで

「65歳までに介護リフォームを終えておきたい」と、小川さんは話します。

まず気になるのが、老後や介護を見据えたリフォームを考えるべき時期。

「後期高齢者になる75歳ぐらいから考えるか」

「両親は60代だから、もう少し先でいいな」

など、ご自分やご両親がまだまだ元気で、今の住まいに不便を感じていないと、介護リフォームもついつい先延ばしにしがちですが、小川さんは「介護リフォームはできるだけ早いうちに考えたほうがいい」と言います。

小川さんが考える介護リフォームのリミットは「65歳」。65歳と言うとまだまだ現役で若々しいですが、そうした早い時期にリフォームをして新しい設備や機能を使いこなしておくことが大事なのだそうです。

「新しいものは使い慣れていないと、いざというとき使えなかったり、間違った使い方をしたりするもの。高齢になればなおさらです。例えば、トイレをリフォームしたら、新機能がたくさん付いているのを高齢のお母様が怖がってトイレに行けなくなってしまったという話も聞きます。

手すりも普段から使い慣れていないと、よろけたときに手すりをつかむ動作が瞬時にできず、転倒してしまうこともあります。ですから、年をとったときに設備や機能を使いこなせるよう、早めに準備をしておくことが大切なんですね」

よい間取りの秘訣は「笑顔」を想像すること

いよいよ介護リフォームをしようと考えはじめたとき、年をとっても暮らしやすく、介護にも便利な間取りにするにはどうすればよいのでしょう。小川さんは、すぐに図面上で間取りを考えるのではなく、どうしたら家族が互いに温かいコミュニケーションを図りながら、いつも笑い声に満ちた暮らしができるかを考えるのが大切と言います。

たとえば、ご両親のために介護リフォームを考えている方は、現在のご両親の様子をよく観察するのはもちろん、おじいちゃんやおばあちゃんの様子などを思い返してみるのがオススメだそう。

「出かけるときはいつも杖やシルバーカーを利用していた、靴を脱いだり履いたりする際につらそうにしていた、階段の上り下りが大変そうだったなど、いろんな姿が思い浮かぶと思います。そんなとき自分はどうしてあげたいか、どうしたらみんなが笑顔で暮らせるかを想像してみると、必然的によい間取りやプランになると思います」

介護リフォームと聞くと、段差をなくす、手すりを付けるなど、機能一辺倒になりがちで、なかなか楽しいイメージが湧かないかもしれません。しかし、家族みんながいつまでも笑顔で暮らせる理想の住まいづくりと考えたなら、介護リフォームは前向きでワクワクするライフイベントになるのではないでしょうか。

介護リフォームのポイントは「寝室&水まわり隣接型」

では、年をとっても暮らしやすく、介護にも便利な間取りのポイントとは?

小川さんが挙げるのは「寝室と水まわりを隣接させる」こと。つまり、寝室のすぐ近くにトイレ、脱衣所、お風呂を配置する間取りです。

●間取りのポイント

1.寝室のすぐ横にトイレを設置することで、転倒事故防止や介助のしやすさを実現

2.脱衣所や浴室も寝室の近くに配置し、介護の負担を軽減。入浴時のヒートショック対策も

3.各部屋を回遊できる間取りにすると、行ったり来たりする時間が削減でき、介護の負担が少なく

「寝室&水まわり隣接型」には下記のような特長と利点があります。

1.トイレは寝室のすぐ横に

高齢になると、トイレに行く回数も増えてきます。寝室のすぐ隣にトイレがあれば、夜中にトイレに行きたくなったときも短距離で行けるため、トイレに行くのが億劫になることもなく、転倒などの事故を防止することもできます。また、介護する人もトイレの介助がしやすくなります。

2.脱衣所・浴室も寝室の近くに

脱衣所や浴室も寝室の近くに配置すると、車いすの生活になったときも寝室から浴室まですぐに移動できるため、介護の負担を減らすことができます。また、寝室との温度差が少ない動線にしておくことで、入浴時のヒートショック対策にもなります。

3.各部屋を回遊できる間取りに

介護に効く間取りのポイントは「回遊式」。特に、寝室や水まわりに双方向からアクセスできると、居住者も介助者も快適に暮らせるそうです。

各部屋を回遊できる間取りにしておくと車いすでも動きやすいため、自立した生活を維持しやすくなります。同時に、回遊できる間取りにすれば行ったり来たりする時間が削減でき、介護もしやすくなるでしょう。

ご紹介した間取りはあくまでも一例。この間取りをそのまま自分の家に当てはめようと考えるのではなく、なぜこういう間取りにしているのかという考え方をしっかり吸収し、その中から必要だと思うものを介護リフォームの際に取り入れるようにしましょう。

第2回に続く……

お話を伺った人

小川千賀子さん

一般社団法人 日本インテリアアテンダント協会 理事長 株式会社デザインクラブ 代表取締役社長

ディベロッパー、リフォーム会社勤務などを経て、1998年に株式会社デザインクラブを設立。2013年、一般社団法人 日本インテリアアテンダント協会設立。ユーザー側の立場で専門家とつなぐ役割を持つ「インテリアアテンダント」を職業として確立し、ユーザーに介添することで家づくりにおけるトラブルを未然に防ぎ、住まいづくりをもっと楽しくすることを目指す。著書に『女性の生活目線でわかった! 99%失後悔しない「65歳からのリフォーム&家づくり』(日本文芸社)、『住まいをもっと楽しくするイマドキの方法』(カナリア書房)などがある。

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