細かく棚の位置を調節できるダボレール
モノをしまうとき、最初に悩むのが「何をどこにしまうか」です。とりあえず、押し入れやクローゼットなど、既存の収納スペースに入りそうなモノを、適当に入れてしまっている人も多いのではないでしょうか。しかし、それでは入らないモノも出てきてしまいます。
とくに押入れは中段に区切りがあるので、置くモノが制限されてしまいます。 クローゼットも、つるした洋服の下がムダに空いてしまうことがあります。 皆さんも、「この仕切りがなければいいのに」「ここに棚が1段あったらなあ」などと、不満を口にしたことはありませんか?
これらのことからも、既存の収納スペースは、必ずしも自分にとって「使いやすいスペース」ではないことがわかります。
そこで、自分好みの収納スペースをつくるための商品である「ダボレール」(ステンレス製の棚受けレール)を活用している方もいるかもしれません。 ダボレールは、レールに小刻みに穴があいていて、そこに棚をのせるための棚受けや、パイプをセットできるようになっている収納部材。穴のピッチ(間隔)が細かいのがウリで、自由度が高い商品です。
ほとんどのモノは350㎜で収まった!
ダボレールは自由に高さを変えられる良さがあるものの、「いったいどのくらいの高さにすればいいんだろう?」と悩む人も多いのだとか。 ここで悩んだ挙げ句適当な棚板間隔にしてしまうと、きれいにしまうどころか、押入れ同様に置くものが制限されてしまいます。結局、そのスペースに合わせて紙袋を押し込んだり、ボックスティッシュをバラしてタテに入れたりヨコに入れたり……。 ピッチの間隔が細かすぎるがゆえ、最初に設置するときに高さを決めるのが難しいという一面がダボレールにはありました。
では、押し入れほどにザックリしておらず、ダボレールほど細かすぎない、収納が苦手な人でも考えずに配置できる「理想の収納」は、果たして実現不可能なのでしょうか。そもそも、モノや人によって、「理想の収納」は違うはず……と思いきや、キーとなる数字がありました。それが、近藤さんが生み出した「350㎜の法則」です。
「モノを空間に収めるようにするには、サイズが大事。私は30年以上、収納のために、いろいろなモノや空間を測ってきました。その結果、多くのモノが350㎜ピッチで収納できることがわかりました。」と近藤さん。
つまり、350㎜間隔で棚をつくれば、ほとんどのモノが収納できるようになるのです。例えば、1段(350㎜)なら、A4サイズのファイルや書籍がちょうど入ります。2段(700㎜)ならスーツケースや机、洋服のボトムス、3段(1050㎜)なら扇風機、4段(1400㎜)ならスティックタイプの掃除機……といった具合です。
洗剤類、洗濯用品、衣装ケース、トイレットペーパー12ロール、ファイルボックスなどなど、あらゆる日用品が「350㎜の法則」できちんと収まります。まさに「350㎜」は、収納問題を解決する魔法の数字といえそうです。この魔法の数字を取り入れた収納システムが「ヴィータス パネル」なのです。
棚を支える出っ張りがない。だから洋服が引っ掛からない!
ダボ棚板を受けるのではなく、レールに棚板を引っ掛ける方式を開発。
「細かいピッチがあるダボレールが大好きだった」と言う近藤さん。ダボレールとは対照的に、350㎜間隔のピッチで収納商品を開発することに、いささかの不安があったそうです。「今回の商品は、私のように仕事でも使い慣れている人以外の方が大勢だということに着目しました。」
「実際、ダボレールを使って収納を改善したお宅に数年後にうかがうと、どこのご家庭も最初の設定から動かしていないんです。せっかく移動できる仕様なのに、ですよ。皆さん、棚と棚の間にまるめたり、畳んだりして、適当に突っ込んでいます。つまり、棚板1枚動かすことが、優先順位としてそれほど低いことなんだとわかりました。であれば、シンプルに『350㎜の法則』を訴求するようにしたのです。」(近藤さん)
あとは、この「350㎜の法則」をいかに形にするか、開発チームの試行錯誤が続きました。一番のポイントは、「レール引っ掛け方式」を採用したことです。
開発を振り返る(左から)近藤典子さん、LIXILの倉田昌和、金児寛子
ヴィータス パネルを開発したLIXILインテリア事業部商品開発4グループのグループリーダー倉田昌和は、発案の背景をこう語ります。 「350㎜間隔で棚を設置するには、当然棚板を受ける桟が側板に必要です。ダボレールにしろ桟にしろ、これまでは受け部分が出っ張って見た目が悪かったうえ、そこに洋服が引っかかり傷んでしまうこともありました。そこで思いついたのが、棚板に溝をつくって細いレールを埋め込んで、そのレールに棚板を引っ掛ける方法です。」
「見栄えが悪くなるから、ねじ留めはしない」など、見た目にもこだわりつつ、棚板のほかパイプやフックをかけても落ちないよう、さらにはそれらにバックや洋服をかけても耐えられるか強度を確認しなから、引っ掛けるパーツもつくり込んでいったそうです。 棚板、パイプ、フックは自在に取り付けられ、しかもレールにひょいとかけるだけでOK。もちろん、パーツは追加することもできます。
「これ、すごいことだと思います。ほんとに」と、近藤さんはその技術力を大絶賛。たとえばタテの間仕切り板の厚みは2センチですが、そこに棚板を置くためのレールを両サイドに埋め込むと、残る厚みはわずか1センチ。その1センチで棚板やパイプ、そしてそれらにかけられたり置かれたりした洋服やモノを支えているのです。
開発チームの不断の努力の末、できあがった試作品を見た近藤さんは、「お、これ扉いらないじゃない!」と驚いたそうです。 「私がこれまで手がけてきた収納品は実用重視で、武骨なものが多かったのですが、ヴィータス パネルはスタイリッシュでカッコイイ! 扉がなくても見栄えがします」
「どこに何をしまえばいいかわからない」――そんなお悩みに答えてくれるヴィータス パネル。実用性とクオリティ、そしてデザイン性を兼ね揃えた、まったく新しい収納システムがここに誕生しました。
第2回収納記事に続く・・・「L字型収納って?」
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