
コロナ禍でリモートワークの導入が進むいま、ワークスペースの確保を迫られている人も多いことでしょう。そこでおすすめしたいのが、LIXILの収納システム「ヴィータスパネル」を活用した書斎づくりです。一級建築士である津野恵美子さんの解説を交えながら、その活用方法をご紹介します。
「ヴィータスパネル」とは、使う人や収納する物、用途に合わせて自由に組み合わせられる、LIXIL独自の収納システムです。350mm間隔で設定された側板に、棚やパイプ、フックを設置することができます。
既存のクローゼットや押入れは、自分の置きたい物の大きさに合わせて設計されていません。そのため、スペースが足りなくなったり、逆にスペースがムダに空いてしまったりしがちです。
「置きたい物の大きさに合わせて棚を設計したい!」という方に向けて、穴のピッチ(間隔)が細かく設定されている棚受けレールも商品化されています。しかし、ピッチが細かすぎると、今度は逆に自由度が高すぎて、どのくらいの高さにすればいいのかが分からなくなってしまうという人も。適切な棚板間隔を自分で設けることは、それほど難しいことなのです。
このような収納の悩みを解決するために考案されたのが、ヴィータスパネルです。その最大の特徴は、収納する物を効率的にしまうことができる「350mmの法則」で設計されていること。
なぜ350mm間隔なのかというと、ほとんどの物が350mmピッチで収納できるからです。
1段(350mm)ならA4サイズの書類、2段(700mm)ならデスクが収納できるので、書斎づくりにも活かしやすい棚板間隔だといえます。
津野さんも、「一般の方でも扱いやすい棚板間隔で商品化されているのがヴィータスパネルの特徴」だと語ります。
A4サイズのファイルも収まる棚板間隔。
「我々のようなプロの建築士であれば、居住空間やデスクまわりの寸法間隔が身についています。しかし、一般の方がそれを理解するのは相当大変だと思います。たとえば、A4サイズの高さが290mmであることや、一般的なデスクの高さが700mmであることは、測ればわかりますが、理想の空間を思い描くときに、こうした数字をその都度測るのも面倒です。
その点、ヴィータスパネルであれば、既製品としてすでに棚の高さが規格化されているので、自分で寸法を測ったり、設計したりする必要がありません。汎用性も高く、書斎づくりにも適しています。大掛かりなリフォームも必要としないので、手軽にワークスペースをつくりたい方にとっては、選択肢の一つになるでしょうね」
奥行きが深い押入れは、実は多くの人が使いづらいと思っている空間です。
「実家の押入れが魔窟になっていて、何が入っているかはわからない」
「奥のほうに何かを入れているけれど、取り出すのが面倒で使っていない」
という方も多いでしょう。
物置状態になった押入れを持て余しているという方におすすめしたいのが、ヴィータスパネルを活用して書斎にリフォームするという方法です。これなら、奥行きが広い空間にワークスペースを設けつつ、物をすっきりと収納することができます。
その理由は「L字使い」の棚板にあります。
奥行きのある収納スペースが使いづらいのは、物を手前に置くと、奥に入っている物が取り出しにくくなってしまうからです。だからといって、取り出しやすいように手前だけに収納すると、今度は奥の部分がデッドスペースになってしまいます。
これらの問題を解決してくれるのがL字型の棚です。棚をL字型に配置することで、物が取り出しやすくなるだけでなく、どこに何が置いてあるかがひと目でわかるようになります。使い勝手のよいスキマ書斎に必要不可欠な収納スペースを、十二分に確保できるというわけです。
「収納した物は、よほどマメな人ではないかぎり、一動作増えるだけで使わなくなってしまうものです。たとえば、手前の物をどかす必要があったり、脚立を使わないと手が届かない場所に物をしまったりしたら、めったに取り出さなくなるでしょう。だからこそ、一動作をいかに減らせるかが使いやすい収納スペースづくりのカギとなります。
このL字型収納のアイデアを使えば、手を伸ばせばすぐに取り出せる、“棚のゴールデンゾーン”を増やすことができます。ヴィータスパネルを使って書斎をつくる場合でも、物が収納しやすい作業スペースをつくることができるというわけです」(津野さん)
物置状態になった押入れを持て余しているという方は、ぜひヴィータスパネルを使って「スキマ書斎」として、有効活用してみてはいかがでしょうか。
(第3回に続く)
一級建築士事務所 津野建築設計室主宰。一級建築士。1973年神奈川県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。東京大学工学系研究科修士課程修了。大学での研究テーマが「環境心理」だったことから、敷地条件や家族の関係性を踏まえながら、空間や暮らしに適切な寸法を与えることを得意とする。繊細な感性と緻密な計算により、くつろぎ、心地よさといった感覚を数字に置き換え、暮らしやすく、美しい空間を設計。どんな暮らし方をしたいか、理想のライフスタイル、好きな本、映画、好きな家事・苦手な家事など、漠然とした質問も含め、念入りな打ち合わせにより、言外の思いも汲み取り、設計に反映させることができるのも特徴。
文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎Shutterstock/PIXTA