「やりかけの物を置いておける」のが最大の魅力
いままで設計した住宅において、書斎コーナーは必ずといっていいほどつくってきたという津野さん。書斎のよさとは「やりかけの物を置いておけること」だといいます。
「ダイニングテーブルなど、家族共有の場所で子どものプリントに目を通したり、趣味の手作業をしたりしていると、食事のたびに片づけなくてはなりません。その点、書斎なら、作業途中の物や書類をそのまま置いておくことができるので、家が散らかりにくいというメリットがあります。また、やりかけの作業をすぐに再開できるため、時間の有効活用にもつながります」
書斎がほしくても、「十分なスペースがない」とお悩みの方もいるでしょう。けれども、「書斎は少しのスキマ空間があればつくることが可能」と、津野さんは言います。
「幅は、一般的な住宅の廊下幅である75~90cmあれば十分です。奥行きは、45cmあれば、ノートパソコンと紙を置いて作業ができます。もう少し余裕をもって作業したいのなら、奥行き50~60cmがおすすめ。70cmもあれば、オフィスデスクのようなしっかりとした構えになります」
場所は「いつ、誰が使うのか」で決める
自分専用のスペースで集中した時間がもてることも、書斎ならではの魅力です。だからこそ、かつて書斎といえば、独立した部屋として設計するのが一般的でした。
しかし、用途が多様化しているいま、書斎は必ずしも個室である必要はなくなってきました。
津野さんは、「書斎の最適な場所は、いつ、誰が使うのかによって変わってきます」と話します。
「主婦など、家にひとりでいる時間が長い方は、リビングの一角といったオープンな書斎でも、同居者を気にせず作業に集中できます。むしろ、家事動線・生活動線を考えると、オープンな書斎のほうが使い勝手がいいでしょう。
一方、会社勤務の方の場合は、夜遅くに帰ってきたときに自分ひとりで集中できる個室型、もしくはセミ個室タイプの書斎のほうが合っています。
また、最近はコロナ禍によるリモートワークの普及で、ご自宅で仕事をする方も増えました。ワークスペースとして使いたいなら、こちらも個室型の書斎を設けることをおすすめします」
使い勝手は“収納スペース”で決まる
書斎スペースを設けても、使い勝手が悪いと結局使わなかったり、単なる「書類置き場」になってしまったりという失敗が起こりがちです。このような失敗を避けるためにも、「何をどれだけ置くのかをあらかじめ考えておくことが大事」だと津野さんは話します。
「先ほど、書斎はダイニングテーブルと違って、やりかけのものをずっと置いておけると言いましたが、それは置いたままでも作業スペースを確保できることが条件です。作業するたびに毎回片付ける必要があるなら、専用コーナーをつくる意味も薄れてしまいます。
まずは書斎で何をしたいのかを明確にし、そこで使う書類や道具などの大きさを把握しましょう。そして、あらかじめその分の収納スペースを確保しておきます。物が適切にしまわれているだけでも、書斎の使い勝手は大きく変わります」
この時、今後増えていく可能性のある物については、その分を見越して収納スペースを設けておいたほうがいいそうです。
「たとえば、増えていく書類を収納したいなら、引き出し上のトレーに貯めていけば済むのか、あるいはもっと広いスペースが必要なのか。こういったことをあらかじめ考えておくことをおすすめします」
とはいえ、事前に何を置きたいのかを把握して寸法を図り、収納スペースや棚板間隔を自分で決めるのは難しいと感じる方もいるでしょう。そんな方におすすめしたいのが、LIXILの収納システム「ヴィータスパネル」を活用した書斎づくりです。
具体的な方法については、次回以降ご紹介します。
(第2回に続く)
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