「魔法のリノベ」作者・星崎真紀さんに聞く、リノベーションで変わる「人生」[第3回]

我が家のリノベは人生のリノベです

空間
リビング・寝室・居室
関心
リフォーム

リノベを計画するときに
覚えておきたいキーワード

case3『夫婦の寝室』 「寝室は別にしたい」と小梅たちにこっそり告げる妻。話を聞いてみると夫は夫で、やはりそろそろ別の寝室がいいと思っていた。しかし、ある事情でそのことを切り出せず……。

――「魔法のリノベ」には、リノベやリフォームのポイントになるさまざまなキーワードが出てきます。例えば「回遊動線」。二人とも密かに寝室を別にしたいと考えていた夫婦のために、緩やかに繋がりながら、けれどお互いのプライベートも確保できるという提案です。

夫を亡くし、息子もリストラに遭い、風水にこだわる施主。もとは外観をきれいにするはずだったリノベ進行中に「風水を取り入れたリノベをしたい」と工事中止。しかし、それは動線も悪く、改悪とも言えるオファーだった……。

「業者さんを取材しても、実際のお客様のエピソードは全く出てこなかったんです。プライバシーの問題もあるでしょうし。実際には、そこまでプライベートな事情を業者に話す施主さんもあまりいないでしょう。けれど、そこをリンクさせるのが物語です。このお話は、リフォーム本で読んだ「回遊動線」という言葉が面白かったので、これを使ったアフターの図面と施主側の事情を同時に考えながら作りました」

――また、case5『鬼門の家』のように、なかなかビジョンもプランも決まらない、決められない、という家庭も多いと思います。このお話の場合、風水ですね。やはり気にする方も多いと思います。

限られた予算の中で、施主の気持ちを思いやって、前に一歩踏み出せるプランを提案する小梅たち。

「風水は、とても気にされるかたもいるので、これを否定してしまってはその施主にとっての良い家にはならないのではないかと思いますね。ただ鬼門と水回りに関することをすべて風水に従うと住みづらい家になってしまうこともあるので、設計サイドから、向きを変えるなど小さな工夫で鬼門外しをする提案をしていただけたら良いと思います」

――このエピソードでは、当初のプランからいくつか工夫をしてコストを抑えつつ、施主さんの心を勇気づけるような素晴らしいプランになっていると思います。

「実は、我が家も最初の設計図で二階のトイレが真北だったんです。設計士さんに相談したら、ほんの僅かな角度だけど便器を真北からずらした図面が上がってきました。風水的にそれで大丈夫なのかはわかりませんが、よしとしちゃいました(笑)」

いい担当者を見つけることが大切です

case1「思い出が宿る場所」 施主の家に初めて行ったときに、夫にしか名刺を渡さなかった玄之介。その夫が実は家にいて家事をし、妻が外で働いていることを家や夫妻を観察することで見抜いた小梅は、家を辞した後に玄之介を叱る。

――ご自分の経験も加味されてのお話だったのですね。そういう話を聞くと、ますます、どんな業者さん、営業担当さんと出逢うかがとても重要になってくるような気がします。

「そうですね。この『魔法のリノベ』を描き始めたのは2015年でした。当時から、中高年のご夫婦の役割分担も少しずつ変わり始めて来たんじゃないかという実感がありました。けれど、まだ営業さんは、ご主人さま(主)と奥様(従)という先入観を持っているなあと感じることがありました。名刺を奥様側に渡さなかったというエピソードは、担当編集者さん(女性)が不動産を購入なさったときの実話です。いまだに同じようなことをよく耳にしますね。担当してくれる方の意識、本当に大切だと思います」

セルフリフォームもしている星崎さん

庭に出ると木登りをするクーちゃん。SNSでも話題になりました。

――星崎さんはSNSなどでも発信されていますが、うさぎの「ぴょんた」ちゃんと長年暮らし、天に召された後、最近は黒猫の「クー」ちゃんを新しい家族に迎えられたそうですね。お庭やおうちの中をいろいろ家族のためにリフォームなさっているようですが……。

「ぴょんたと暮らしているときは室内ケージ飼いで、その周りに動きやすいようにコルクマットを敷いたりしているくらいでした。庭に出す時間もあったので、門の下に逃走防止用の柵を取り付けました。クーがやってきて、同居相手が猫さまに変わってからは、猫が乗りそうな場所には板を渡したり、クッションを置いたりして居場所をあちこちに作りました。case13『ペットシェアハウス』で描いたようなキャットウォークまでは作らなかったんですが。庭が見られる出窓やピアノの上は、予想通りお気に入りの場所になっています。観葉植物に登ったりも。『登る』のが好きな子だなと思ったので、キャットタワーではなくバスケット付きの登り棒を設置したら案の定すごい勢いで駆け上がってます。庭に出ても木に登るので、やはり登るのが好きな子なんです(笑)」

――最後に、リノベをしたいと思っている方々、あれこれと悩んでいる方々の背中を押すひとことをお願いします。

「新型コロナの影響で家での過ごし方が変わったり、家へ求めるものが変わってきているかと思います。『ここにひとつ可動式間仕切りがあれば』『もっと家事が楽になる動線にしたい』など、夢もいろいろあろうかと思います。上のリノベは人生のリノベ、あなたの生き方をデザインするためのものでもあります。今お住まいのお家を、これを機会にカスタマイズしてみませんか? と小梅が囁いているようです」

お話を伺った方

星崎真紀さん

『黄昏シティグラフィティ』『Dr.クージョ危機一髪!!』『ひみつな奥さん(2006年・2007年・2008年藤原紀香主演でテレビドラマ化)』『新ひみつな奥さん』『ステージママの分際で!』『虎蛇とブー子』など、数々のヒット作品を描く。作品はAmazon Kindleをはじめ、各電子書籍サイトで読むことが出来ます。

協力◎双葉社『ジュール』
文◎坂井淳一

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)