
「リノベした家でどういう生活を送るのかが大切」と話す、リノベマンガ『魔法のリノベ』の作者・星崎真紀さん。作品の中では、何組もの家族が幸せになって、読んでいてこちらもハッピーな気持ちになります。けれど、その「ハッピー」を手にするまでには、家族の中で言わずにいる「隠れた問題」が浮き彫りになってきます。作品で描かれた家族の問題は、私たちの中にも存在しているのかもしれません。


コミックスの巻末には、各話で登場したリノベプランの図面が掲載されています。これを見ながらエピソードを読み返す楽しみもあります。
――作品の中で、いくつもリノベ・リフォームのプランが出てきますが、それはどなたか専門家の方の提案があったのでしょうか。
「基本的に私がプランを考えて図面も自分で引いています。ただ、建築基準法や耐震法などの法律的なことまではわからないので、考えたリノベプランが本当に実現可能か業者さんに相談に乗っていただいたり、建築士のかたに図面をチェックしてもらうようにしていました。現実に不可能なプランではリアリティがなくなってしまいますから。実際に、これは難しいと言われ、作り直したプランもあります。『話には関係ないけどこの家には冬物布団を収納できる場所がない』と建築士さんに指摘されて加えたこともあります。話には関係なくてもどんどん住みやすそうな家になって行き、実際に家を作っているようで楽しかったです」
――作品の中では、小梅が在籍していた大手のグローバルL社と、現在働いているまるふく工務店という対照的な会社がライバル関係になっていますが、取材したり、実際にリノベをしたご経験から、大手と中小の会社で差はありましたか?
「金額的な違いはもちろんありますけど、商品知識や提案例の幅は大手も工務店も関係ないなと思いました。色んなメーカーの設備や建材を勉強している営業さんはもってくるカタログも多く、こちらの希望に沿うものを一緒に探してくれます」
――会社と言うより、どういう営業さんに担当してもらうか、というような「人」の要素の方が強そうですね。

case6「女ばかりの家」築34年の一軒家。子ども部屋を増築したい依頼主とその娘、キッチンのリフォームもしたい依頼主の母と妹という女性だけの4人暮らし。予算が見合わず、「キッチンリフォームを諦めれば他は全部出来るわね」という依頼主。家族の間ひっそりとあった確執のにおいを嗅ぎ取る小梅……。
――作品の中で多く描かれるのは、リノベの主導権を持っている人がどんどん自分の希望を盛り込んでいって、他の家族の思いとずれてしまう構図です。実際にも、プランニング中に揉めてしまうことは多いようですが、回避する方法はあるのでしょうか。

case4「片付かないキッチン」妻は「家族が共同作業をする場」にしたいという夢を見る……。
「あらかじめ揉め事を回避することは難しいかもしれませんね。リノベやリフォームをきっかけに家族が話し合い、お互いの考えを理解するきっかけになればいいのではないでしょうか。どちらかが妥協することもあるでしょうけど、納得のうえでの妥協なら良いですよね。家をリノベするのは人生の大きな転機なわけですから、そこで家族が腹を割って話し合うことこそが大事なのではないでしょうか?
――case4「片付かないキッチン」では、整理が出来ないオープンキッチンに悩む夫婦が描かれています。夫は「妻の城なのだから」と隠れたキッチンを要望します。けれど、奥さんは「家族が共同作業をする場にしたい」という気持ちを隠し続けていました。
「このコロナ禍の下でも、共働きで、二人ともステイホームでリモートワークという家庭も多いでしょう。それでも一日三回の食事から掃除、洗濯と、主に女性が家事をこなさなければならいないのなら大変な負担です」
――そうした問題を話し合うきっかけになるのがリノベ、という事ですね。
「共働きでも家事は奥さんがメインという状況は、主に男性側の意識が変わらないと変えるのが難しいところです。ハードルのひとつは『めんどくさい』でしょうか。この『めんどくさい』を少しでも省ければハードルが下がるかもしれません。リフォームやリノベがそれに若干でも手助けになればいいなと思います」
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次回は、家族みんなが幸せになれるリノベの秘訣について伺います。
『黄昏シティグラフィティ』『Dr.クージョ危機一髪!!』『ひみつな奥さん(2006年・2007年・2008年藤原紀香主演でテレビドラマ化)』『新ひみつな奥さん』『ステージママの分際で!』『虎蛇とブー子』など、数々のヒット作品を描く。作品はAmazon Kindleをはじめ、各電子書籍サイトで読むことが出来ます。
協力◎双葉社『ジュール』
文◎坂井淳一