自宅のリフォームを考えたことが
作品を描くきっかけに
case7「減築の家」にも、子育てが終わって二人になった夫婦が減築リノベをするエピソードが描かれています。
――星崎さんは、1980年、早稲田大学在学中に白泉社の『LaLa』でデビューして以来、ずっと作品を描き続けていらっしゃいました。その間に、結婚、出産を経たことも、作品創りのヒントになってきたと思います。『魔法のリノベ』を描くことになったのも、やはりご自身のリノベ体験が元になっているのでしょうか?
「もともと、リフォームやリノベーションへの関心が高かったんです。というのも、自宅兼仕事場である一戸建ての家が築20年を経ていたこともあリ、これまでも何度かリフォームは経験してきましたし、家を建てたときにああすれば良かった、こうすれば良かったという想いもありました
――実際に、どんなリフォームをなさったのですか?
「家を建てて20年の間に仕事場拡張リノベとお風呂リフォームの経験がありました。この作品を描く前の年には、そろそろ漫画家も引退かなと思っていて、庭にテラスでも作ろうかなと思ったんです。そこで何軒かの業者さんに見積もりを出していただいたら、業者さんによって営業トークや持ってくる図面にけっこう違いがあるのが面白くて、これはマンガになるのではないかと作品を描き始めたんです」
主人公の二人。福山玄之介は家族経営の「まるふく工務店」のリフォーム部の営業担当。そこにテコ入れのために迎えられたのが、大手のグローバルL社から転職をしてきたやり手の営業・真行寺小梅だった。
――連載を始める前に、かなり取材をなさったということですが。
「まず今どんなリフォームやリノベーションが求められているのかを雑誌や本で調べました。最初はリノベする施主側に向けた本を片っ端から読み、次は受注する業者側が読む本を読みました。最新の設備を知るためにメーカーのショールームへも行きました。LIXILさんのショールームにもお邪魔しました」
――LIXILのショールームではどんなヒントが得られましたか?
「以前のものと比べて水回りが掃除しやすくなっていたり、切り替え操作不要のタッチレス水栓など、便利になった最新の設備機器をショールームで見ることで、今の顧客のニーズなども実感できました。また LIXIL さんのショールームにはリビングの延長としてガーデンルーム『暖蘭物語』が実際に設置してあり、お風呂やトイレの交換でショールームを見に行ったときに、これまで考えてなかったようなリフォーム例を目にすることが出来るようになっているのが良いなあと思いました」
――マンガ家さんのヒントになるだけではなく、やはりリフォームやリノベをしたいと思う方は、実際にショールームに足を運ばれて、どんな製品があるのか、プランで選択したものはどんな製品でどう使えるのか、ということを確認するのは大切そうですね。
「はい、やはり実際にものを見ることでイメージはどんどん膨らんでいきますから」
――主人公の二人は小さい工務店の営業という設定ですが、実際に大手のリフォーム会社、小さい工務店などのお話を聞かれたのでしょうか。
「庭のリフォームをするときに最終的に決めた業者さんが小さい工務店で、男女ペアの営業担当者だったんです。このお二人にはのちに取材させていただきました。家を建てたのは大手のハウスメーカーで、そこの営業さんとは何度か家の部分リフォームをしてきたので、その時の打ち合わせの記憶や記録が大手側を描く資料になりました」
取材を通して感じた
「イメージすること」の大切さ
『魔法のリノベ』case2『壊せない壁とつぶせない庭』。家を買った経緯が、夫の母の勧めだと言うことが分かり、夫婦関係も険悪に。子育てのための要望を聞き「この家に住み続けることになったら、奥様が主導権を取りましょう。ダンナ様には貸しがある」と妻を味方に付ける小梅。リノベ案を提出し「――どうぞイメージなさってください。この家でのご家族を」と語りかける玄之介。
――作品の中で、主人公の小梅や玄之介が、プランを提示した時に繰り返し「イメージしてみてください」と言います。
「どうぞイメージなさってください、というセリフは、このcase2のシーンの絵コンテを描いている時に自然に出てきました。プレゼンシーンの絵コンテを描くときには、私はマンガ家ではなく営業マンモードに入ります(笑)。他のエピソードでもたびたび出てくるんですけど、リノベーションをして、どういう生活にしたいのかをはっきりとイメージすることは、リノベ後に後悔しないために大切なことだと思います」
――たしかに、リノベーションやリフォームをするときには、何かを変えたいという気持ちはあっても、その設備などが家に組み込まれたり、間取りが変わったりしたときにどうなるかという具体的なイメージをすることは少ないかもしれません。
「家をリノベやリフォームするときには、ここを変えたい、あそこを変えたい、というところから始まることが多いと思います。最新の設備にしたい、オシャレにしたい、使い勝手を良くしたい。けれど、これはすべてこれからの生活や人生をより自分の理想にフィットさせていくということです。そこをイメージすることから始めると、リノベは成功すると思います」
*
次回は、リノベの計画中に明らかになる家族の問題点や確執をどう乗り越えていくのか、について伺っていきます。
会員登録 が必要です